第20話 本物の剣はどちらか
「ご、ご立派なお宅ですね。」
無駄に装飾品や見るからに高級そうな家具が多いライアンの城へ、謙遜と皮肉を含めて言ってみたがライアンにはそのままの意味で伝わったらしい
「そうでしょう。ここには各地から絢爛たる美品を調達し保管、鑑賞しているんだよ。リィナもその価値が分かるとは、さすがわたしが心に決めた人。やっぱりあの時感じた運命は本物だったんだね。」
「あ・・・はぁ。」
階段や長い廊下を右や左にと曲がり、これはどこどこから仕入れたなんとかだの、これは誰誰からいただいたなんとかだのと、部屋に案内されているのか、城の美品紹介に連れまわされているのかよくわからなくなってきてしまった
リィナは引きつった笑顔でライアンの説明を受け流しつつ、「魔王城も部屋を覚えるのに苦労したけど、ここもずいぶんとかかりそうだな。」とぼんやり考えながら赤い絨毯が続く廊下をライアンに手をひかれながらついていく
「そしてこれが、わたしを勇者足らしめている。退魔の剣。」
一段高いところでショーケースに入れ地に突きさす形で保存されている一本の剣の前でライアンは足を止めた
「え・・・・?」
「普通の剣では完全に命を断つことができない魔王の命を奪うことができる唯一の剣だよ。これを扱えるのはこの世界でわたしひとり。わたし以外の誰もこの剣を扱うことができない。」
黄金で彩られた男の背くらいありそうな長い剣は幅も大きく、重厚さと物々しさを感じる
柄から刃にかけて黄金一色で統一された剣はダイヤモンドにも似たまばゆい光を自ら発しほのかに白く光りを纏う
「どうして、あなたしか?」
「俺にしか剣が応えないんだよ。これに触れるとね、『魔王の血が欲しい』と剣が騒ぐのさ。それと同時、わたしにはなみなみと力が宿り、どんな屈強な兵士も、大きな岩だって、たとえ山だって海だって切り開くことができる。山と海はまだやったことがないけどね。」
闘志を漲らせた眼差しで剣を見つめるライアンは剣士という覚悟のある表情で、リィナの前でみせる少しおどけたものとは一転、引き締まった横顔だ
『退魔の剣』その言葉を聞いた瞬間リィナの心は凍った
飾られている剣の形も、剣を持った時に聞こえる声も、全て
似ている
けれど、それは2つとないもので。私の中に宿っているものが本物
だったらこれは?
偽物だと言える?この剣が必ずロビンお兄様の脅威に成り得ないと断言できる?
「・・・・ナ?リィナ?顔が青いけど、大丈夫?」
「え・・・ええ。魔王、と聞いて少し恐ろしくなってしまって。」
私の中に宿しているもの。それは、お兄様の命を断つことの出来る『退魔の剣』
だって、あれを私が抜いたときからお兄様は自由になれたじゃない。魔王を屋敷に磔にしていた退魔の剣の呪いを解いたのは私
だからきっとこっちが本当の
じゃあこれは、なんだろう。どうしてこんなにも似ているんだろう。そして、聞こえる声も同じなのだろう
押し黙ってよろめくリィナにライアンは
「城の案内はここまでにして、そろそろ部屋に送ろうか。」
やっぱり無駄に案内してたのか。やけに入り口から自室までが長すぎると思った
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