第7話 春告花
森に入り、
父に急かされ、燃える里を背に飛び出してから里には戻っていない。
あれから里がどうなっているのか、知る由もなかった。
(全部が……
前に見た
イルのことは皆気にしないけれど、それでもいい。今度は、自分から話しかけに行くから。
わずかな望みをかけて、イルは
「……こりゃ、ひでぇな……」
イルの
「………」
過去に建物だったものは
幸いにも、住民の
「……見事に焼き
ガヴィが
焼け
「……住民同士の
……里の者にも一切気づかれず、
イルは居た
胸が苦しい、大声で泣きたい。
……この
里の奥にある少し開けた所にある野原まで来て、一人
ここまでは火の手が届かなかったのか、イルが里を飛び出す前と同じ光景が広がっていた。
下を向いたイルの目の前に、白い花が何の苦も無い様子で風に
その様子に
が、次の
(お
目の前に広がる、
『イル、この花は
兄は、何といっていた?
『この花は
――“白い
ノールフォールの森にはよく
外に遊びに出るようになった里の子どもが真っ先に教えられること。
子どもたちは
国王
「こら、お前一人でどこでも行くなよ」
急にガヴィに声をかけられてビクッとする。
「おお、こりゃすげぇな……」
ガヴィは野原に
イルはガヴィに花のことを告げようと思った。
(でも、どうやって? どうしよう、早く教えないと、また王子たちが
「……ん? どうし――」
「おや? そこにおられるのは……レイ
ガサリと音を立ててそこに
「
ガヴィは少々バツが悪そうな顔をしたが、すぐに
「先の
フォルクス
素直に
フォルクス
「お気になさらずに。レイ
イルが足元で小さく
ガヴィの意識が、フォルクス
「して、なにか進展はありましたかな?」
「いや、これといっては。
ただ……内紛の線はないと思う。どう考えても里を
「……なるほど」
ガヴィの見解に
「……
「いや、今日は個人的に調査に来ただけだ。
これからアヴェローグ公に報告する」
「――
フォルクス
(――ダメ! ガヴィ!!)
イルは
もし、ここにいたのが国一番の剣士、ガヴィ・レイでなければ、
イルが
「ぐ……うっ……!!」
転がったガヴィにとどめを
その時、フォルクス
「ぐぁっ……! ……この!
ポロリとフォルクス
イルが飛び付いた
「……っ! アカツキ! 来い!」
イルはフォルクス
二人は風のようにその場から走り去った。
ガヴィとイルが去ったあと、フォルクス
「……
レイ
***** *****
前を走るガヴィの
早く止血をしなければならない。
しかしガヴィの歩みは止まらず、
(ガヴィ……ガヴィ! 止まって!
……手当てしないと死んじゃうよ!!)
イルが語りかけてもガヴィには通じない。
自分の
しかしガヴィの
前方を見ると、
ガヴィは周りを確認すると素早くその小屋に身を
(――くそ……っ! ……しくったぜ!)
小屋に入るとガヴィはイルも入れ、戸を閉めた。
小屋は
ガヴィは切られた部分の服をやぶき、すぐさま
ガタガタと
こういう小屋には、
しかし
ガヴィは舌打ちすると持っていた小刀を
「ちっ……!! ぅ……ぐっ!」
(ガヴィ?!)
開いた
オロオロしているイルを
そのままドカリと座り込む。
(――
走ったせいで
だが、あそこにいても切られて終わりだ。
「……おい!」
ガヴィはイルを
「い、……いいか。
……
……でも、お前はまだ動けるな?」
ガヴィは
「ゼファーにこれを
ガヴィの物入れもイルの体に
ガヴィを置いていく。それはすなわちガヴィとの永遠の別れを意味している。
「――はやく、いけっ!」
肩で息をしながら急かすガヴィに、イルの身体がビクッと
その時――
「!」
ザクッ……ザクッと人の足音が近づいてくる。
もしかしてフォルクス
この小屋には
足音は
(このままじゃ、見つかっちゃう――!)
ガヴィは
ハタと、イルはこの
(でも、でも――!!)
父との約束より、大事なもの。
イルは、ガヴィの青白い顔を見て覚悟を決めた。
「……いいか、
イルはガヴィが支えにしている
そして、
「……は……。お、おま……」
目の前で起こった光景に、ガヴィは息の苦しさも
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