第3話 銀の髪の公爵
目を覚ますと、そこは
(……え?)
キョロキョロと辺りを見回す。
人間の手だ。
鏡の前に立つと、短い
(……今までの事は……
コンコン、と音がして
「にいさ……」
「やっと起きたのか。
……仕方ないなぁ、イルは」
イルは熱いものが
「? ……どうした? 何かあったのか?」
兄が心配して近づいてくる。
イルは目をゴシゴシと
「うううん! 何でもない!
目にゴミが入っただけだよ!」
えいっと兄の
父は何を考えているのかイマイチ
ぎゅうっと
「……ちょっと
そう言って兄の顔を見上げると、兄の
「へえ? どんな
「……どんなって……
……ガヴィ、なんでここにいるの?」
口にして、全てを
――ああ、ゆめ、かぁ……――
目を開けると、テラスから差し込んだ光が
目の前には、黒い毛並みの
ゆっくり顔を上げると、ダイニングのテーブルでお茶を飲んでいるガヴィと目が合った。
「お。起きたかよ。よく
朝の光がガヴィの赤毛に当たって
兄とガヴィは全然
兄はガヴィみたいに人を食ったような笑い方はしないし、
でも、どうしてだろう。
おひさまみたいな、あったかい笑顔は
イルは下を向いた。
目から熱いなにかがこぼれそうだったから。
「なんだ?
いつもふざけているのに、思いのほか心配そうに
「ってぇ! ……お前なあ……」
人が
「……ところでよ、今日
ガヴィの言葉に耳がピンとなる。
イルはガヴィに向き直ってじっと彼の顔を見つめた。
「もちろん、そのままじゃいけねえぞ。
とりあえずはコレを付けてもらう」
取り出したのは
「野生よろしくそのまま
ガヴィはいつも
素直にウンというのも
ガヴィにはそれで
そんなやり取りをしている間に、レンがティーカップを片付けにやってきて(ガヴィは朝食を食べていたらしい)イルが目が覚めたことに気づくとおはようございますと
レンはガヴィが用意した
「ところでガヴィ様、
「あ?」
なんでだよ? とレンを見る。
「いえ、特に深い意味はないのですが……」
モゴモゴと珍しく歯切れ悪くレンが答える。
「だってコイツ真っ黒だし、
ガヴィははっきりと答えた。
(――え?! なんで?!)
「そ、そうなのですか?
どうしてそんなことがおわかりに?」
イルもレンもびっくりしているのを
ガヴィは事も無げに答えた。
「あん?
だってコイツ、洗った時にタマついてなかっ――」
イルはガヴィの足に思い切り
***** *****
アルカーナの
森から出たことのないイルは、人々の
「……キョロキョロしてんじゃねえ。
真っすぐ歩けよ、大人しくしてねえと
ブツブツ文句を言いながらイルの
イルはフンっと鼻を
(ガヴィって本当にデリカシーがないんだから!)
こんな調子で王様に仕えているとか
しかもレンを見ても思ったが、ガヴィに関してはどう見ても二十代そこそこだ。
この若さでどんな手柄を立てれば
「いいか?
石像の横を通り
「ごくろーさん。通るぞ」
ガヴィが
「お待ち下さい! レイ
しかし
「あん?」
「お、お
レイ
「ああ、コイツ? 犬だよイヌ!」
――そんなわけあるか。
もう少しマシな言い
「なんだよ、その目は。
……ちげぇよ、コイツはシュトラエル王子
王子の犬も同然だろ?」
***** *****
「ガヴィ!」
しばらく待つと、
「……まったく君は!
(う……、わぁ!!
こんな顔の人……いるんだ……!)
見事な
「
王子待たせんのも悪いし、お前呼んだ方がはえーもん」
……
だとしたら彼はガヴィよりも格上であるし、王家の血筋を持っていることになる。失礼にも程がある。
「……君な……」
しかし青年はそんなガヴィの
「……こちらの
「おう。シュトラエル王子が名付けた。
――アカツキだ」
ガヴィに紹介されて、
「初にお目にかかります。アカツキ
私はゼファー・ティグリス・アヴェローグと申します。以後お見知りおきを」
「おまえ……
ガヴィがイルを見て
「……君の接し方の問題じゃないのか?」
やれやれ、と
***** *****
アルカーナの
しかし、光もきちんと
落ち着いたレリーフの入口を抜け、
ガヴィとゼファーはある部屋の前に立つと
そこは
ガヴィは
どうやらここはゼファー・アヴェローグ
イルはガヴィに習い、ソファの
イルが落ち着かない気持ちでいると、
ゼファーはお茶を受け取ると何やら
部屋には二人と
「……さて、アカツキ
だが……王子
まあ……君と、私のお
一週間ほどガヴィと行動を共にし、
「来週辺りに王子が庭園に出ている時にでもさり気なく引き合わせよう」
王子からもお
「……ところで、」
ゼファーは
「今回の王子
……だが、気になる事はある」
「……
(――!!)
ゼファーの口から思いがけず自分と関係する言葉が
「村?」
「……ああ、小さな村だ。
ガヴィが顔をしかめる。
イルは
「……
……しかし、むごい
だが――
「同日に王子の
……
それに加え、……その村と言うのが『
カツンとカップが皿にあたり、ガヴィが持っていた
「私は二つの
「……確かにな」
「王子
だが引き続き
……
ゼファーから
「……
いつもとは
(――この人達といれば、
父に言われた通り、あの場から
知り合いも、
父が
王子の側で彼の笑顔を守れたらと思っていた。
けど、
(
イルは
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