第2話 赤毛の剣士
イルの生まれ育った里はアルカーナ王国の中でもかなり北に位置しており、広大な森の中の奥まった場所に位置していたため生まれてこの方、森の外に出たことがなかった。
たまにくる行商の人間や、国境を
一族の直系で族長の娘といえど、生活はほぼその辺りの村娘と変わりなく、
だが、成り行きで旅の道連れとなった赤毛の剣士、ガヴィが
(――
いくら武人とはいえ、
「王子、ワリーけど
……
え? ……軽すぎない?
上下の関係などまるで感じないようにポンポンと交わされる会話。
気さくに話す様は好感が持てるが、それはあくまで
別に自分は
「全然だいじょうぶだよ! ぼく、がんばれる!」
しかし王子の方もなんの
「アカツキ! がんばろうねっ」
アカツキことイルに向かってニコッと
イルは
「おぉ、すっかり
ガヴィがわざと肩を
「なかよしだねぇ〜」
王子がニコニコと笑うので不本意だがぐっとこらえる。
この
だがしかし、
ガヴィは口は悪いが旅の道連れとしてはとても
なんせこの一行は世間知らずのおんな子ども(
ガヴィは
そして何よりも明るい。
加えて、王子と一匹の数歩先を行くガヴィの
初めて会った時、おひさまみたいだと思ったけれど、夜の
「
「……母上、しんぱいしてるよね」
しょんもりと王子が
ガヴィはポンポンと安心させるように王子の頭を
「大丈夫さ。
心配はしてるだろうけどな、
「……
「おぅよ。王子を追っかける
本来の
王子は無事、と。
「他にもまだ
「そっかあ〜! じゃあ安心だね!」
ね〜! とイルの顔を見てにっこりする。
「……まあ、王子の
「ん?」
ポリポリと
***** *****
「どーーして?! ヤダヤダヤダ!」
結果、
までは良かったのだが……。
「だからな? 王子。
ガヴィは王子の予想通りの反応に苦笑いだ。
「なんで?!
なんでアカツキを連れて行っちゃだめなの?!」
イルはオロオロとガヴィと王子の顔を見比べた。
「だからよ、
森で
「拾ったんじゃないよ! 友だちになったんだもん!」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……」
王子はもう半べそだ。
ガヴィはやれやれと王子の前にしゃがみ込んで目線をあわせた。
「…あんな? 王子とアカツキが友だちになったのは
アカツキはこの通りどっからどう見ても普通の
人の言葉が
「……でも……
イルは自分の事で
ガヴィは王子の顔を
「……ずっとダメだとは言ってねえよ。
まずは王子もアカツキも
んで、アカツキが王子と
王子がパッと顔をあげる。
「俺んとこでコイツしばらく
……ちゃんと王子の側にいても大丈夫だって、
……だからちょっとだけ、
目線でそう問われて、王子は何度もうんうんと首を
かくして、イルことアカツキは赤毛の剣士、ガヴィ・レイの一時預かりとなった。
***** *****
「だぁーかーらー!
さて、王子としばし別れ、ガヴィの所に身を寄せる事になったイルだが、
……ここで
本来ならば
が、
……森の中では
まずは
すっかり
たまったものではないのはイルである。
いや、正直言えばイルだって
なんと言ったって中身は人間の女の子なのだ、身体が
けれど、
(バカバカ〜!! 男の人に洗ってもらえるわけないじゃない! 私、
イルは全力で
いくら子どもとはいえ、もう父とも兄とも
ガヴィは中身は人間だと知らないから
お
ガヴィの
不毛な追いかけっこに一人と一匹はゼーゼー
「――いーかげんにしやがれ!
ちゃんと
この勝負、イルの負けである。
イルはトボトボと、本当にトボトボと
「ったくよ! 初めからそうしてりゃいいんだよ!」
ブツブツと文句を言いながら
(――
「お前、どっか
ガバとイルの身体を
(ひええぇえぇ……!!)
イルは内心目を白黒させたが、ガヴィは
(……
チャリ……と首の
イルはビクリと身体を
「……お前、他にご主人様がいるのかね?
……王子泣かせんなよ」
イルも
***** *****
すったもんだの後、
やっとアルカーナ王国の
……ガヴィの
作りは良いが大変小ざっぱりしている。
とても
とはいえ、門をくぐりイルが
しかし
森から出たことのない村娘同然、しかも今は
もう一つ、
(……この人、本当に
チラリとガヴィの顔を
ガヴィはイルの
「お前さんが何考えてるか当ててやろうか?
『こいつほんとに
思っていたことを丸々言葉にされてイルは面食らった。
「……俺はよ、
なので
客人が来た時などは通いでメイド等を
「ガヴィ様、お茶が入りました」
テラスのついたリビングに行くと
「おぉ、ありがとな」
ガヴィの
「ところでガヴィ
「あぁ? 部屋? いや、
改めてイルを見る。
(……
一部屋やるのは
「シュトラエル王子
とにっこり
「……お前、どうするよ?」
イルは突然話を
部屋は正直
一人で羽根を
けれどガヴィの言うように
イルは
それを見てレンは笑みを深くすると、
「アカツキ様用にクッションをお持ちしますね」
と下がっていった。
「……さてと、
お前適当にくつろいどけな」
***** *****
一人取り残されたイルは、やることもないのでガヴィの言葉に甘え
リビングからテラスへ
テラスにも座り心地の良さそうなベンチが置いてあり、そこから庭を
庭はそんなに広くはなく、木々と生け垣に囲まれて
テラスから庭に出ると左の奥に小さな池があり、生け垣の足元には前庭と同じように色とりどりの草花が咲いている。
決して
庭の右には小さなアーチをくぐると細い小道があり、ガヴィとイルが追いかけっこをした前庭に
前庭に出ると、
レンはすぐさまイルに気がつくと、作業の手を止めイルに
「これはアカツキ
イルに
イルは
(私、こんな
この
ガヴィにせよレンにせよ、人の
それに、レンは
勝手なイメージだが、こんなお
レンはどう見ても三十手前に見えるし、どういう
イルが
イルは
……そう言えば里を出てから何も食べていない。
レンはクスクスと笑うと、
イルは
「お口に合うものを探してお出ししましょうね」
優しく
どこか兄の
その日の夜は、
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