第1話 森の中の出会い
前がぼやけて見えにくい。
しかし落ちてくる
何人かの
本当は、
今出来ることは、
イルは
今まで里の周りは自由に動き回っていたが、森の外には出たことは無い。
どこに向かって走ればいいのか
(
目立たぬ様に首にかけられた細身の
でも。
……でも。
私は
野生での生き方なんて知らない。
家があって、布団で眠って。
何にもまだ知らない、たった十四の女の子。
ポツポツと
強くなる雨音はイルの心そのものであった。
森の
(このまま飲み込まれて消えてしまえればいいのに)
さっきまで生きなければと思ったのに、真逆の思考が頭の中を支配する。
イルはか細くクルルと
「ヒッ……」
ゆっくりとした足取りで
男の子はこんな森の中に
明らかに
男の子は突然現れた
その姿に胸が
雨の中に二人きり。
取り残された子ども。
まるで自分を見ているようで、イルはゆっくりと近づいた。
「……こないで……!! 食べないで……!」
子どもの顔が
(……
ペロペロと
「……食べないの?」
(食べないよ)
返事の代わりに
「「………」」
二人とも無言だったけれど、雷鳴の
ぎゅっとお
まるで自分を
また、
***** *****
ガサリと草を
「……オーカミさん?」
イルの
(
イルは深く
「! オーカミさん! ダメッ!」
飛びかかる
イルはびっくりして男の子を振り返った。
「王子! 無事か?!」
赤毛の男はイルの背後に男の子を
(王子?!)
イルが
「ガヴィ!!」
王子と
「わりぃ……王子、
よく
「大丈夫、きっと来てくれるって信じてたから!」
それに……
と男の子はイルを
「オーカミさんが
そこで初めて剣士と目があった。
ガヴィと
それよりも目がいったのは、彼の
イルはポカンと口を開けたような気になった。
「……でね! オーカミさんがずっと側にいくれたんだよ!」
「ふーん……、
ただの
「……ありがとな。正直な所、助かったわ!」
(……おひさまみたいに笑うんだな……)
イルは赤毛の剣士――ガヴィをそう
***** *****
王子の名はシュトラエルと言った。
このアルカーナ王国の第一王位
そんな彼がなぜこんなところに居たのかと言うと、この森の南にある王家の
ガヴィ・レイと名のる赤毛の男は実は
本来ならば
とは言え、二人だろうが三人だろうがガヴィにはさして問題ではなく、あっという間に一人を切り倒し、実力の差は
負けを認めて
――が、
残りの一人が剣士ではなく、
ガヴィがハッとして
「くそったれが!」
追いつかれてから今に
しかし移動の
ただ移動しただけであればさして
なんの
ガヴィはすぐさま
***** *****
「いや、ま、ほんとにお前が
カラカラと笑って赤毛の剣士ガヴィはイルの頭をわしゃわしゃと
イルは
イルは鼻先でガヴィの手を
王子は
王子の手は子ども特有の体温のせいか、王子に特別な力があるのか、
「さて王子、
急ぎ
「うん!」
ガヴィに
「……オーカミさんはどうするの?」
「……どうするったってなあ……。
そいつはこの森の
なあ? と赤毛の剣士はイルを見た。
イルは
それはそうだ。
王子とこの剣士とはたまたま出会っただけで、なんの関係もない。
そもそもお付きの剣士の登場により、イルが王子の側にいる理由も何一つないのだ。
――でも、
イルはもうこのぬくもりを手放したくはなかった。
もう、一人は
「……さよならなの? オーカミさん。
……ぼくと
大きな
王子の
それだけで王子には気持ちが伝わったのか、パッと
「……
ガヴィがピュゥと口笛を
「
「友だちねぇ……。
それでも充分
ガヴィは大げさに
「えーと、ずっとオーカミさんっていうのも変だなあ……」
「……名前でもつけてやんのかよ?」
赤毛の剣士は面白そうに問う。
「う〜ん……」
「
だってオーカミさんの
夜明けの金色の光みたいでキレイなんだもの!」
満面の笑みでどう? と問う王子の笑顔が
「決まりだね! アカツキ!」
シュトラエル王子との出会いはイル=アカツキにとって特別なものとなった。
「アカツキ。ずっと、ずっと一緒にいようね」
(王子はきっと特別な子なんだ)
だってこんなにも胸が
あんなに悲しいことがあった後なのに。
この王子は知らぬ
イルの名が、一族に伝わる古い言葉で『夜明けの太陽』を指す言葉であることを。
同じ太陽を示す名をくれた事に、イルはそれこそ太陽を見つめるように、
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