発音記号の体系

 これまでは発音を、実際どのように表現していたのかを、特にラテン文字について検討してきた。ここからは、音韻論に於いて分析に使われる発音記号について検討する。

 事実、これまでの全ての章に於いて、私は特定の発音を表記する際に[]に挟んで発音記号を用いてきた。これに手間取った読者も居るであろうが、発音を表す際はこれが最も効率的で精確な表現方法である。

 発音記号の大半はラテン文字を基にして作られている。現在一般に用いられるラテン文字26種全てが固有の発音記号となっている他に、たくさんの発音があるため、ラテン文字を変形したり、組み合わせたり、稀にギリシャ文字から引用することもある。

 発音記号には国際基準が存在する。現在我々が用いている発音記号体系は国際音声記号と呼ばれるものである。この体系の起源は、歴史的に見れば新しいものである。元々発音記号は、子供や非英語話者などの英語教育の為に導入されたものである。次第に他の言語でもこの体系を流用するようになり、世界中のありとあらゆる言語の発音を記号化するために、国際基準を設けることにした。

 1886年、フランスの言語学者、ポール・パッシーが国際音声学会を設立し、学会主導の下、国際音声記号が制作された。当初は発音法によって体系化がされておらず、英単語帳の附録にある一覧のような形で並べられていたが、度重なる改定により、発音の種類ごとにわかりやすく分類されている。

 国際音声記号では、子音、母音の他に、既存の子音や母音をベースに若干の変更を加えられている発音とを区別するための発音区別符号や、音の長短、高低、ストレスなどを示す記号も規定されている。

 現在、この体系化された発音記号に準じて音韻論は展開されている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る