本の悪魔と旅人

七洸軍

本の悪魔と旅人

少女と、旅人の邂逅

#1 継ぎ接ぎの手記

(※読み飛ばし推奨)


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 むかしむかし昔々、大地が未だ星の海を漂っていた頃、月が産声を上げてまだ間も無い頃。

 森の入り口の小さな小屋に少女が一人住んでいました。大きな大きな木のお家に彼女のお父さんとお母さんがいて、両親はもう死んでいたのかも知れませんし、あるいはモシカシタラそうでなくとも、子供達を捨てようとしていたのかも知れません。でも少女には大好きなお兄さんが居たのでちっとも寂しくはありませんでした。少女はずっと独りぼっちで、二人はいつも一緒でした。

 やがてサンドラセバスにも友達ができました。ネリの幼馴染みで、孤児院にいた頃からずっと一緒だった赤い髪のおしゃまさんと、人形とかかしと心が空っぽなブリキの子犬、それから英雄になったロビンのキツネと、高飛車で傲慢な優しい魔女のお客様、悪戯好きの憎めない邪悪な悪い神様のような綺麗な酷い奴、あとは足を喰われた鶴とか鯨に食われたお爺さんとお婆さんは死んで、それからソレカラちょっと怖い船長さんとまだ若い兵隊が競い合う大きな大きな劇場でした。その名前をなんと言ったのか、今では誰も知りません。忘れられてしまったのです。クロンはそうして去って行きます。全ては大事な友達の為でした。

 やがて彼女を不幸がおそいます。次々つぎツギハギと、縫い合わせたような、理不尽で汚い、出来の悪い本でした。まず最初に一番の親友が落ち込んでいました。ぐしゃりと音がしたのです。悲しくて悲しくて、もう会えないのです。それでみんなバラバラ。王女様も子犬も、あの頭のおかしな学者ですらも誰もいません。会えないのですから当然そうなります。思えば一番悲しんだのは、強欲な商人だったのかも知れません。誰も彼を省みず、狂王の言葉を疑わず、しかし誰もフィオランゼを止められませんでした。

 ついに冬が訪れます。巨人達には意志がないのかもしれません。ただじっと見ているだけ。心を痛めたヒヨイが世を去ると天使は帰らぬ人となり、ただ家に帰るだけなのに、冒険も何もあったものではありません。それに賭けていたのですから。誰も何も得ることはありませんでした。

 ルオキンスが王子様を討ち果たし、魔法使いは禁忌を残しました。それを破ればいよいよリリお嬢様は独りになっていましました。血の繋がっていない義理の妹などなんの役に立ちましょうか。エイン王子はそれでもめげず、ツグミは悪い子では無かったのだけど、いささか気遣いに欠けていて、それこそがリーテの罪であり、少女はまたもや喪ってしまうのです。

 ユイカは死にました。エコーはもういません。もう書くこともありません。ネリの去った後、継母もみずから命を絶ち、巨人は倒れ、裁きの神が天より降り、その哀れな少女の何もかもを奪って行きました。

 少女はいよいよ独りぼっち。悪魔と二人、この本の何処かで、いつまでもいつまでも幸せな夢を見るのだといいます。これは実際にあったお話、だったのです。


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