僕の闘い

ねこいかいち

第1話

 僕は光太。小学二年生だ。


 今、目の前の部屋の向こうには、このダンジョンとも呼べる場所のボスがいる。


 僕は勇者でも、選ばれた存在でもない。RPGで言うならば、勇者に助言をするような村人でも、イベントを発生させる村人でもない。


 いわば、何処にでもいるモブ。村人Dだ。



 そんな僕でも、立ち向かわなければいけない存在がいる。


 それが、このダンジョンのボスだ。




 痛む箇所を手で押さえる。


 先に入っていった勇士は、中で懸命にボスと闘っているのだろう。


 ドリルのような音を響かせながら、ボスの攻撃に耐えているはずだ。僕は心の中で、頑張れ、頑張れ、と応援した。


 部屋で闘っている人が出てくれば、次は僕の番だ。そう思うと、恐怖に体が震え上がる。


 怖い、でも、立ち向かわねば。


 ボスの攻撃の音が止み、しばらくすると、部屋の中から闘いを終えた勇士が戻ってきた。満身創痍の男の人は、震え上がる僕の姿を見て、こう言った。


「次は君か……頑張れよ」


 その言葉に背中を押された僕は、力強く「うん」と頷いた。そしていざ、ボスの元に向かう。



 負けないぞ。


 己を鼓舞しながら、ボスの待つ部屋へと入っていった。





 結論だが、僕はボスに勝った。


 当たり前だが、仕事をしている歯医者さんに攻撃なんて出来ない。だが、ドリルのような音を立てる器具に震えながら、僕は耐えた。僕は虫歯の治療をされ、目には涙が滲んだ。でも、泣かなかった。


 痛んだ箇所はもう痛くない。でも、まだ歯医者さんという名のボスとはしばらく闘いが続きそうだ。


 皆には、歯磨きはしっかり行うようにと言っておきたい。

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僕の闘い ねこいかいち @108_nekoika1

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