第29話 帰ってこない
(まだか……!?)
ケルは玄関でウロウロと歩き回る。
(セレンは今日でスクールは休みだと言っていた)
(長期休みなんだろ!? こんなに遅いなんて事があるのか!?)
(外は真っ暗だ。この時間まで帰って来ねぇってのは流石におかしい)
(チッ、探しに行くっきゃねぇ)
ケルは居ても立っても居られず、セレンを探しに外へと飛び出して行ったのだった。
夜中のシティは亡霊たちでいっぱいだ。
ありとあらゆる場所にふらふらと彷徨っている。
(クソッ! どこにいるんだよ!)
シティを一周した後は家に戻り、セレンと入れ違いになっていないか見に戻る。
セレンは家に帰っていない。
(どうなってやがる!?)
この時間帯まで人が出歩くのもほとんどない。
(スクールはどうだ!? 寝過ごしてるだけなら良いが……!)
ケルは急いでセレンの通うスクールへと向かう。
「ウォン(亡霊が少ない)」
たどり着いたスクールはしんと静まり返っている。
亡霊は一匹二匹程度で外からふらっとやって来た亡霊だった。
ケルはセレンの匂いを辿ってスクール内を歩き回る。
(どこだ……?)
セレンを探すのに夢中になっている時、頭上から子供のような声が聞こえて来た。
『わんチゃんだー』
パッとケルは顔を上げるとそこには人魂のような見た目の輪郭が完全にぼやけた亡霊が一匹浮いていた。
「ウォン。ウォン……(おいそこの亡霊。俺はちぃと人探ししてんだが……)」
『人探しー。じゃあ、噂の子の事?』
「ウォン?(お前はセレンを知ってんだな?)」
『あの子にちょっかい出すとわんちゃんに食べられちゃうーってみんな言ってるよ』
「ウォン?(セレンは何処に行った?)」
『いつもどーりだよー』
「ウォ……ン?(いつも通りって……帰ったのか?)」
『そーそー』
「ウォン!?(いつ帰った!?)」
『いつもどーりの時間帯だよー』
「ウォン!?(何処に行ったか知ってるか!?)」
『知らなーい』
「ウォン!?(何処行ったんだ!?)」
『家じゃないのー?』
「ウォン!?(普通に帰っていたのか!?)」
何処に行ってしまったのか。
(ロスは何か知ってるか……?)
ケルはロスのいる家へと駆け出した。
門を走って飛び越え、勝手に家の中に入ると、タイミングよく玄関からヴァスが出てくる。
「ケル? どうしたんだい?」
「ウォン(セレンを探したんだ。ロスは居るか?)」
「わ〜ん〜(眠いよ〜どしたの〜)」
ケルは事情を説明した。
セレンが家に帰っていないこと。
スクールはいつも通りに帰っていた事を。
「わん〜(友だちの家に泊まってるのかな〜)」
「ウォン!(そんな訳ねぇだろ!)」
「わ〜ん〜(ちょっと〜そんな怒らないでよ〜)」
「セレンちゃんはどうしたんだい? 今日ケルはひとり?」
「ウォン!(知らねぇなら他ぁ当たる!)」
(なんだ、友だちの家に泊まったからひとりだー……な訳ねぇだろ!?)
(ルベロのとこはどうだ!?)
(ケーキを買って寄り道してたりしてねぇか!?)
ケルはルベロの元へと駆け出した。
ゾイのケーキ屋の外からケルは吠える。
すると裏口がキィとゆっくり開いた。
ケルは裏口まで駆け寄る。
「……ケルか」
「ウォン!(ルベロは居るか!)」
「ルベロ、ケルが来ているぞー……悪い、腹一杯で寝てるみたいだ」
大きくドアを開いたその先を覗くとルベロが居た。
「床で寝ちまって動かないんだ」
「ウォ……(は……)」
ぐごご、といびきをかきながらヘソ天で寝るルベロ。腹にかけられたタオルはゾイがかけたのだろう。
ケルは裏口から飛び込んでルベロの腹をゲシゲシ突く。
「ウォン!(セレンは来てねぇか!)」
「ワ……ン……(満……腹……)」
「ウォン!?(クソッ、起きろよ!?)」
「ケルひとりでどうした? セレンちゃんは?」
ゾイが厳しい顔つきでケルに語りかける。
(……その様子じゃこっちにも来てねぇか)
(クソッ、今度こそ家に帰ってねぇか……!?)
ケルはまた家へと駆け出した。
セレンが家に帰宅している事を祈って。
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