第14話 噂の原因を探せ!

『俺も記憶持ったまま今の俺で生き返りたっ、ア゛ヮー!?』

「グルルルル!(んな事あってたまるか!)」


(記憶を持ったまま? 同じ姿で生き返る??)


『お、おおお、俺は聞いただけっすッ、ツメェー!?』


(俺は、俺たちゃ、今の今まで亡霊を逃した事なんて無かった)


『又聞きの又聞きの又聞きくらいで……ガリガリしないでっ、ェー!?』


(俺も、ルベロもロスも冥府の中にいる亡霊は匂いを全て覚えてんだ)


『金髪の少女でっ、会えば分かるって、そこっ穴ありまセンンンーー!?』


(覚えた匂いが門を出入りしてりゃすぐ気づく)


『グハッ……!』


(ケーキで釣ろうったって、それが出来るのはルベロだけだ。俺とロスは見え見えの罠に釣られたりなんかしねぇ)


『おっ、おい……あのイヌやべぇよ』

『めちゃくちゃ牙剥いて唸ってるぞ』

『つぅかただのイヌが何で会話出来てんの?』

「ガルルル……?(何でだろうなァ……?)」

『『『……い、急いで逃げろ!』』』


 慌てて逃げ出す亡霊たちをケルは片っ端から捕まえ、飲み込む。


 ケルがあらかた亡霊を食い尽くした頃、丁度セレンが息を切らして家の玄関の戸を開けて帰宅する。


「ケルちゃん! どうしたの……?」

「ガルル。グル(何でもねぇ。寝るぞ)」

「ケルちゃん……?」


(噂は噂でしかねぇ。それに、ここには驚くくらい何もねぇんだ)


 スタスタと先に寝室へ向かうケル。

 セレンは心配そうにケルの後ろ姿を見守ったのだった。
















 豪邸のフェンス越しに二匹の黒いイヌが向かい合う。

 何やら会話をしているようだ。


「グル?(どう思う?)」

「わん〜(それは無いでしょ〜)」


 スクールに行ったセレンを見送ったケルは相談に来ていた。

 ケルと顔を突き合わせているのはロスだ。


「わんわ〜ん(死神さんたちに教えて貰った匂いだもん〜それを逃したりなんてしないよ〜)」

「グル(だよなぁ)」


 話の内容は昨日の亡霊が言っていた噂のことだ。

 "亡霊が現世に行けば生き返る方法が何かある"という噂について。


 ケルは後ろ足で首を掻きながら唸る。


「わんわんわん〜(亡霊が現世に戻って生き返る方法なんて本当にあるの〜?)」

「ウォン。ウォン(ねぇだろ。いや待て、もしかして俺たちみたいに突然変な事が起こったか?)」

「わん〜?(変な事〜?)」


 ロスは首を傾げる。


「ウォン?(俺たち三つに別れちまっただろ?)」

「わん〜(それ仕様だって〜)」

「ウォ? ン??(仕様って? うん??)」

「わん〜わんわん〜(僕ら冥府でも実体だよね〜でも、そのまんま現世に出ると混乱を招くから王がそうさせたんだってさ〜)」


 三つ首一つの体のケルベロスは現世には存在しない。

 だから冥府の王が俺たちをそうさせたのだと。

 ロスはそう言った。


「ウォン!?(んな事、誰に聞いたんだ!?)」

「わん〜(遊びに来た死神さん〜)」

「ウォン!?(はぁ!?)」

「わんわん〜(あ、短時間なら元のケルベロスに戻れるってさ〜)」

「ウォ、ウォン!?(ど、どうやったら出来んだよ!?)」

「わ〜ん、わん(むぎゅ〜って、くっつくんだって〜)」

「ウォン!?(それだけか!?)」

「わ〜んわん〜(それだけ〜でも絶対バレないようにって言われた〜)」

「ヴォン!?(そりゃそうだろうな!?)」

「わん、わん〜?(そ〜、だから生き返る方法ってのは怪しいよね〜何かと間違えてるんじゃないの〜?)」


「ヴォン……ウォンウォン(あぁ、セレンが亡霊になってまた生き返ったなんてのは無いだろ。なら……間違えられた原因を探して突きつけりゃ良い。そうすりゃ現世で暴れもしないだろうし、冥府に戻って大人しくするだろ)」

「わん〜わん〜?(間違えられた原因ねぇ〜心当たりあるの〜?)」

「……ウォ、ウォン(……あぁ、セレンの家にゃ驚くくらい何もねぇんだ)」


 ケルはヴァスの豪邸をじっと見つめた後、ロスにとある計画を持ちかけたのだった。

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