第9話 お出かけ、お買い物!

 家に散らかったモノは全て収納、あるいはゴミにまとめ終わった。


 バリバリの短冊になっていた壁紙は全て剥がし終わった。


 落ちたシャンデリアは片付け、割れた窓や床はテープで補修済み。


 あちこちでの壊れっぷりが酷い事になっている。

 しかしそれは家だけの話だ。


 ケルには家に来た時から気になっていた事があった。


(家にモノが無さすぎねぇか!?)


「ケルちゃんどうしたの?」

「……グルゥ(……セレンさんや)」


(キッチンには包丁一本、まな板一枚、鍋ひとつだ。後はシリアルとパン、ピーナッツバターと冷蔵庫に牛乳……セレン、これ以外食い尽くしたか?)


(リビングに棚がひとつ、百科事典や雑誌、料理本や娯楽小説が並んでいた。後は花瓶……この辺はセレンの物じゃねぇな?)


(寝室にはベッドとぬいぐるみ、後は宿題やらスクールに必要なモノ……セレンの私物これだけか??)


 テレビも無い。

 ソファも無い。

 机と椅子も無い。


 服もろくに無い。

 食料だって少なすぎる。


 家の部屋はまだあるにも関わらず、全て空室だった。


「お片付け終わったから、次はお買い物だよ!」

「ウォン!(おう!)」

「まずはケルちゃんのベッドだね!」

「ウォ、ウォン!?(いや先に買うモンあるだろ!?)」


 そうしてセレンとケルは買い物をするために家の外へと出る。


「ケルちゃん、待ってー!」

「ウォン! ウォン!(急げ! 必要なモンは多い!)」


(俺ァ、シティを走り回って店は把握してんだ……!)


「ケルちゃーん!」


 セレンはケルの後ろを追いかけていったのだった。








 ケルとセレンは食料品や生活必需品を販売している店に来た。


「ケルちゃんはドッグフードで好きなものある?」

「ウォン(適当で良い)」

「あんまり興味無いの? じゃあ……安全で栄養バランスの良いものかな……?」


 セレンは少し目線を彷徨わせた後、まっすぐひとつの商品を選びとる。


(……うん?)


「じゃあ今度はおもちゃとおやつを買おう!」

「ウォ、ウォン(いや、それよりセレンの食料だろ)」


(何だ……? さっきの違和感は)


「このおもちゃ可愛いね!」

「あ、ケルちゃん! これで一緒に遊ぼう!」

「このジャーキー美味しそうだね!」


 ケルが首を捻っている間にセレンはポイポイとおもちゃ等を入れていっていた。


「このくらいかな? あ、私のゴハンも買ってくるね! シリアルと牛乳!」

「グル……ルゥ!?(おぅ……って、それだけか!?)」


 セレンは足取り軽く会計を済ませる。

 セレンの食料よりも圧倒的にケル用の物が多くあった。


(セレンは食いモンの好き嫌いが激しいのか……?)


 ケルはセレンの食生活を観察すると心に決めたのだった。





 ケルとセレンは寝具を販売している店に来ていた。


(初日、一緒にくるまった毛布は破れていたからな)


 ケルは後から気づいたのだが、ケル用だと言っていたあの破れた毛布は元々セレンが使っていた物だったのだ。


「ケルちゃんは一緒にベッドで寝たかったんだね!」

「グ、グルゥ……(ち、違ぇ……)」

「ちょっとだけお外で待っててね!」

「グ……ル……(まぁ……いいか……)」


(破れた毛布で寝て風邪引かれるよりマシだ)


 ケルは店の外からセレンが可愛らしい毛布を買うのを眺めていた。


「今日はこのくらいにしておこっか! もう持てないからね!」

「ウォン(おう)」


(本当に必要最低限は買えたか……俺のおもちゃは完全に要らねぇが)


 ケルはチラリと満面の笑みを浮かべるセレンを見る。


(……楽しそうなら良いか)


 そしてケルとセレンは帰路についたのだった。

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