第23話 嫉妬の炎がメラメラです

 それからコンビニバイトは順調に進んだ。

 すぐに美恵も出勤してきてーー。


「えっ? 慎太君、なんで先にバイトしてるの? 私たちと慎太君のラブラブバイトが始まるんじゃなかったっけ?」


 そんなさくらと同じことを口にしながら、登場した美恵を加えて4人で昼ピークという魔境に挑んでいく。


 これは無謀な戦だ。僕は昼ピークの3分の1の戦力の朝ピークで死にかけたんだ。それなのに素人を2人を連れてこのまま昼ピークに突撃することになるとはな。


 うちの上官は鬼畜だ……そして、その結果――。


「2人とも優秀ですね……」


 昼ピークも終わり、店内がすきかけたころ、僕の隣にいた南戸がそんなことを呟いた。


 まあ、結論から言うとわりかしどうにかなった。それはさくらと美恵の力が大きい。

 

「いらっしゃいませー。こちら温めですか? 少々お待ちください。さくらちゃん、お願いしていい?」


「うん! カレードリアでお待ちの人お待たせです~~~」


 2人はバイトを始めて数時間にも関わらず、テキパキと仕事をこなしていく……その動きには無駄が少なく、効率がいい。とてもじゃないが僕と同じ新人とは思えない。

 さらには2人とも明るく、可愛いので、客受けもいい。


「そうだな……けっ、一気に先輩との威厳がなくなった」


「高円寺、いじけないでくださいよ……」


「うるさい。クズにはクズなりのプライドがあるんだ。人間プライドを捨てたら猿と同じだからな。あ、でも勘違いするな。僕はプライドだけに特化してる人間とは違う。余計なプライドは持たない主義だ」


 僕は自慢げに自己防衛を並べる。完全に言い訳だが、それこそ自分の精神を守るためなので大目に見てほしい。


「はぁ、まったく高円寺は……ふっ」


 そんな僕の単純な思考回路を呼んだのか南戸が苦笑いをする。


「本当に面倒な性格ですよね。なんであの2人が高円寺に惚れているのか謎です。二股なんかすぐにでも辞めればいいんです」


「うるさい。そんなの僕にもわからない……何でだろう? 何でだ? なんでですか?」


「はぁ、私に聞かないでください。まあ、綺麗ごとばかり並べて自分を出さないよりも、高円寺みたいに自分を出している馬鹿の方が人間らしいんじゃないですか? 馬鹿みたいで」


「なんだ? お前僕のこと馬鹿にしてる……訳ではないな。お前が本気で人を馬鹿にする時ってもっと死にたくなること言うし」


 ソースは僕。

 実体験に基づく調査のたまものだ。


「ふふっわかってるじゃないですか」


「いい加減付き合いも長くなってきたしな……」


 こいつとも結構話すようになってるしな……まあ、教室ではこいつ以外話す相手がいないとも言うけどな……。


「………じぃ」


「…………じぃ。むぅぅぅぅぅ!」


 その時、突き刺さるような視線を背中に身に感じる……な、なんだ? このジトっとした感じの視線は……。


 恐る恐る振り向くとそこには僕のことをじぃーっと見ている彼女たち。


 美恵はわくわくしていて興味深そうだ……というか、お前めっちゃ楽しそうだな……そんな僕と南戸が話してるのが面白いか?


「くすっ、ねぇねぇ、南戸さんと慎太君って最近仲がいいよねぇ。へぇーふふっ」


 そして、さくらはブチギレ10秒前と言った感じだ。「彼女を放置して何他の女と楽しそうにしてるの!?」という思考がすけて見える。


 いつものさくらなら叫んで抗議してくるが、一応レジで騒ぐのはいけないとわかっているからなのか、押し黙ってにらみつけているだけだ


「…………じぃぃぃぃぃ」


(逆に怖いよ……)


「ふふっ、高円寺、二股のお試し期間なんて馬鹿なことしてるからこういうことになるんですよ?」


 そして、南戸は楽しそうにくすくす笑ってるし……助けてくれよ正義マン……いや、正義マンだから助けてくれないのか……僕悪だし……。

 とにかく、こういう時は仕事に逃げよう……後が怖いけどな。

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