第18話 同棲している女?
勉強会開始から、さらに数時間過ぎ、夜も遅くなってきた。
烏丸は俺と約束をしてから、異様な集中力を見せていて、僕も加賀も感心しながら勉強を教えていた。
しかし、僕と加賀のテンションは勉強会が進むにつれて段々と目に見えて下がってきていた。その理由は……。
「美恵先輩やればできるじゃん!」
「まったくだ……本当に勉強嫌いなだけだったんだな」
「あはは……な、なんでかなぁ。勉強ができるようになれば……なるほど、2人の対応が冷たくなっていくような……」
そりゃな。教えた傍から完璧に記憶して理解されると、「こいつ今までどれだけやる気なかったんだよ」としか思わない……。
「でもこれで先輩はさくらって……えへへ、さくらって呼んでくれる」
「くすっ、私も美恵って呼んでくれるんだよね。ふふっ楽しみだなぁ」
本当にこちらが若干引くぐらい喜んでるな……はぁ、南戸になんて言われるだろうか……絶対暴言を浴びせさせられるよな……
もういっそあいつのことも名前で呼んでやろうか……うん、やめておこう。普通に半殺しにされそうだ。
『ピピピピピピ』
その時僕のスマホが鳴った。
反射的に画面を見るとそこには『正美』と表示されている。今僕がお世話になっている家主様からのメールだ。まあ、従妹なんだけどな。
「ああああああああ!!!」
えっ? 何事!?
俺のスマホ画面が見えたのか加賀が急に絶叫を上げる。
「ど、どうした?」
「せ、先輩のスマホに女からメールが……!」
「いや、そのぐらいじゃ。浮気にはならないと思うよ? 物証を押さえて言い逃れができないように飼い殺しにしないと」
その満面の笑みをやめい、普通に怖い。
「あっ……わ、わたし重い女にはならないって決めてるのに。で、でも気になるものは気になるわけで……先輩その女は誰……?」
「いや、家主だけど。僕、今実家を離れて従妹の家でお世話になってるんだ」
僕は両親と仲が良くない……まあ、今はその話はどうでもいいのでスルーするとして……そんな状況を見かねた正美さんが居候させてくれている。
だから別にやましいことなんてない。
しかし、加賀はそうは思ってくれていないのか、あからさまに動揺しながら詰め寄ってくる。
「先輩その人とふたりで住んでるの!? その人何歳なの!? その人独身なの!?」
「えっ? えっ、まあ、そうだな。あの人ワーカーホリックで殆ど家にいないけど。歳はいくつだっけ……20代中盤? あと独身だな」
恋愛関係はかなりのダメ人間なのでしょっちゅう男に振られてるらしい。
そんな状況なので僕も応援してあげたいのだが……。
「へ、へぇ、先輩って彼女(仮)が2人もいるのに女と同棲してるんだね!」
若干やけくそ気味の笑顔である……。
「待て。言い方が悪い。親戚だぞ?」
「先輩!! 従妹って結婚できるんだよ!!!」
そう言うとそうなんだけど……はぁ、今度会わせてみるか……。正美さんっていろんな意味で変人だからな……加賀も安心するだろう……。
「それで、高円寺君。正美さんだっけ? 何の用だったの?」
一方烏丸の方は騒ぎ立てることもないが、僕の暮らしに興味があるようだ。
「ああ、帰りにビールとシャンパンとワインを買ってきてくれだって……未成年が買えるわけねぇだろ……」
あの人また振られたな……本当に仕事以外はだらしがないな……。
はぁ、ともかく、帰ってもひと仕事ありそうだな……。
「むぅ……先輩と同棲……」
「ねぇねぇ私一度会ってみたいなぁ~~」
「加賀、まだ言ってんのか……今度会わせてやるから」
そう言うと途端に笑顔になる2人。本当にわかりやすいなぁ……。
「えっ……そ、それって先輩の家に行くってことだよね……えへへ、先輩の部屋。えへへ」
「高円寺君の家かぁ……家探ししたいなぁ……エッチなものってあればあるほど面白いからなぁ」
なんかふたりとも納得してくれたみたいでよかった……なんか不穏なことを口にされた気もするけど。
片付けはしっかりしよう……。
そうして……今回の勉強会は解散となった。
僕が2人の名前を呼ぶのは別の問題として……烏丸は留年しないといいけどな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます