第48話:蘇るむさいやつ
「オ……オレは一体……?」
「気がついたようだなサンダー。今度は話してくれような?」
「ッ!? 信長……様。はい、実は――」
ここからのサンダーの話しは実に興味深かった。
まず太陽への翼だが、こやつらは実力的にシルバーかそれ以下だという。
なぜゴールドまでになったかと問えば、ギルドマスターであるドニミクという男の意向との話しだ。
途中から合流した
「ドミニク? 誰やそいつは」
「冒険者ギルドのギルマスでアリマス。普段は姿を表さず、業務をサブマスのセルフィさんに丸投げしている謎の男……? なのです」
「なんや気になる言い方やなぁ。そんでそのドミニクがどうしてお前ら、太陽への翼を優遇してたんや?」
「はい、それなんですが――」
サンダーの話しは続く。どうやらドミニクと言う存在は、例の〝あの御方〟とやらと繋がっているらしい。
その人物が所属する団体。それこそが――
「――西方教会というわけか。なるほど見えてきたぞ。すると獣人と異世界人の排除は、西方教会の司教が指示し、その手駒としてドミニクがいるというわけだな?」
「はいその通りです。オレらは〝あの御方〟呼ばれる西方教会の司教の指示通りに従い、その代弁者たるドミニクからの命令で動いていました」
「うっき~。大殿これはまだまだ終わりそうにありませんな」
「うむ……西方教会か。どの世界でも、坊主どもが幅を利かせおるのは面白くない」
「ほんまやでぇ。せやけど大殿、ミリーの敵討ちも終わりましたよって、次はどうしはります?」
「決まっておろう。余は坊主共が大嫌いじゃ」
「うっきゃ~! また盛大にやりますかいな!?」
「それは奴らの出方次第よ。まずはレグザムへと戻り、ドミニクとやらと会おうではないか。あないせよミリー」
「はいです! それと……」
ミリーは背後を見ると、後ろには太陽への翼に殺された人物達が整列していた。
「そうだったな。そちらの遺族に何か伝える事があれば申せ。余が責任を持って伝えておく」
そう言うとアンデッド達は涙を流しながら、一人ずつ遺族への思いを伝える。
そして遺品も預かる事で、それがクエストを完了するという意味でもあった。
「そのほうらの無念しかと胸に刻んだ。それでどうする、このまま天へと還してやる事も出来るが?」
アンデッド達は迷いなく応え、余のために働きたいと申す。
その中にはあの太陽への翼もおり、その事が少し意外だった。
「そちらは余に殺されたも同然だが、それでも付いてくるのか?」
「はい、信長様のその……」
「申せ、今さら何もせぬ」
「はい。その、なんと言うか、強大と言ってはおこがましい程の、
恐ろしいナニカ、か……。日ノ本に居た頃はよく言われたものだが、異世界に来てまで言われるとはな。
「ふっ、今更の事よな」
「ほんまでっせ。大殿様は大昔から、おっかねぇでありゃぁすから」
「……ナニカ言ったか
「うっきゃあああ!? ミリーお助けえええ!!」
「ちょ、お猿さん! 胸に飛び込まないでほしいでアリマスよぅ!?」
「ったく助平め。本当にどうしようもないサルよな。まぁよい。そちらの思いしかと受け取った。ではまた喚び出すまで地の底で待つがよい」
そう言うとアンデッド達は「御意!!」と言い残し、地中へと沈む。うむ、いつ見ても不思議な光景よな。
「さて、と。遺品を届けに戻るか。だがその前に……」
ジョニーの荷台に安置されている遺体を見る。
そこにはミリーのために死した英雄、熊の獣人であるレオナルドが横たわる。
その表情は安らかそのものであり、クマ助がなんの未練も無く旅立ったのだとわかる。
「レオナルドさん……」
「そう寂しそうにするなミリーよ。やつは満足して逝ったのだからな」
「せやでミリー。戦士の覚悟を哀れんではあかん。あいつは笑って逝きおったんやからな」
涙をにじませミリーは頷く。実に素直で良い娘だ。
「ではクマ助の願いどおり、遺体を使わせてもらおうか。さて家臣か……この巨体で野性味ある男となれば……おお! あ奴を思い出したぞ!!」
ふと脇を見ると
それを見た余の心はさらに確信へと変わり、「そのまさかだ」と微笑んで見せた。
「い、いけませんぞ大殿様! あやつだけは、あやつだけは絶ぇぇぇえ対になりませんぞおおお!!」
「すまぬ
ギャーと
そこが勢いよくスパーン! と開くと、中からくせっ毛でヒゲモジャの男が「な、なんじゃあああ!?」と声を張り上げながら、回転しつつクマ助の中へと吸い込まれてしまう。
「お猿さんの時と同じでアリマスな……」
「うむ……さてどうなることやら」
「どうもこうもないですやん! あのむさ苦しい顔。それにあのくせっ毛……どう見ても――」
がばりと立ち上がるクマ助。そして
「ほらぁ、やっぱり勝家ですやん!」
「やっぱり田舎猿か!? おいの嫁はお市の方だぞ!! はっはっは!」
「ムッキー! やかましゃあ! それが何の関係があるんや!!」
はぁ、異世界でもこのやり取りを見られて嬉しいやら、嘆かわしいやら。
そんな複雑な思いを知ってか知らずか、二人は余をほっておきながら罵り合う。
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