第47話:太陽への翼は焼け落ちる。

 ――サンダーは道順が隠されている事に気が付き、そこを破壊しながら進む。

 だが壊れかけた剣では思うように斬れず、苛つきながらも武技を使い何とか進んでいると、入り口付近にある特徴ある木を見つけて安堵した。


「ふぅ……何とか逃げ出せたな。マジで許せねぇ。大体無能ばかり仲間にした俺も悪いか……ん、ありゃぁ誰だ?」


 遠くに居る人影。それが手を振っていることに気が付き、駆け寄ると馴染みの顔に思わずニヤける。


「サンダーさん! ご無事でしたか!?」

「おお~そういうテメェは情報屋! 生きてたのか、さっきは悪かったなぁ。あの無能共が全て悪ぃんだ、許してくれよな?」

「知ってますよ、サンダーさんは被害者・・・だったんだとね」

「流石は情報屋、話が分かるじゃねぇか。それで出口はあっちでいいのか?」


 情報屋の男は言いにくそうに「……ええそうですが」と言うと、「でも入り口は上にあります」と天を指差す。


「あぁあん? どういう意味だそりゃ?」

「どうもこうもない……アンタは生きて出られないって意味だ。死ねサンダアアアアア!!」


 情報屋は持っていた短剣でサンダーを襲う。

 しかしサンダーは余裕でその攻撃をかわし、逆に情報屋の男を一閃。

 壊れた剣とはいえ、この程度の事はサンダーには余裕であった。


「ちッ、どいつもコイツも無能ばかり揃いやがって。だがコイツもアンデッドなのか?」


 まだ動く情報屋を見ながら、一体どれほどのアンデッドが居るのかと思うとゾっとする。

 ここまで来るのに出会ったのは、元の森にいた魔物だけ。

 だが、先程見た馴染みの顔ばかりのアンデッドや、情報屋の男を見ると背筋が凍る思いだ。


「くそ、あのガキ一体何体召喚出来るんだ……ネクロマンサーってだけでも異常な職種なのに、この力は尋常じゃねぇ。ギルマスへ早く報告しねぇと」


 焦るサンダーだったが、その足を強く掴まれて思わず転ぶ。

 

「くッ!? 情報屋テメェ生きていやがったか?!」


 油断してナイフが刺さる刹那、遠くから火の玉が飛んでくる。

 直後、巨漢が空から振ってきて情報屋を一撃の元地面へとめり込ませた。


「リザ!! それにドッヂ!? よく生きていてくれたな、助かったぜ!!」

「……ああ。ボクは元の体になって舞い戻った」

「……ええ、アタシも食いちぎられたりしたけど、元に戻ったわ」


 サンダーは「何を言って……」と言いながら途中で止める。

 よくみれば二人共衣服はボロボロであり、ドッヂにいたっては失った右腕までが元に戻っていたのだから。


「お、おまえら……その……元気そうだ、な?」

「元気よ? 生前よりずっと・・・・・・・ね……」

「ボクも生きている頃より調子がいい……」

「やめてくれよ……なんの冗談だ?」


 サンダーはずるずると尻もちを付きながら、背後へと逃げる。

 だがそれを虚ろな瞳で見つめる二人は、表情を全く動かすこと無くそれを見つめる。


「冗談? それは貴方でしょサンダー……」

「そうだ。信頼していたのに、ボクらを簡単に裏切りやがって……」

「ち、ちがうんだ! そ、そうだ! オレはお前らを救おうと思って、一刻も早く救助をだな!! 考えても見ろ、オレらがいくら頑張っても、ネクロマンサーには勝てねぇ、そうだろ!?」


 リザとドッヂは顔を見合わせて「「確かに」」と頷く。


「だろ!? だからな、あのクソネクロマンサーのガキから、お前らを一刻も早く救うためにだな――」


 ここまで言ったサンダーへと、ドッヂが勢いよく飛び乗り押しつぶす。


「ぐぎゃああ!? ド、ドッヂてめぇ何をしやがる!?」

「いいかサンダー? ボクたちが言った意味が分からないようだから教えてやる」

「そうよ。あの御方は正に至高の御方。それをクソガキ呼ばわりするとは許せないのよ」


 そう言うとリザは氷のやりでサンダーの四肢を貫く。


「ギャアアア?! リ、リザテメェまでなにをおおお!?」

「だから言っているじゃない。あの御方を愚弄する事は許さないと」

「あ、あの御方だと!? それは西方教会のあの人の事かよ!?」

「違うわ。もっと偉大にして、強大なお力を持つ御方おんかた――」


 そう言うと二人はサンダーの両脇で背後へとひざまずき、背後へと頭を下げる。

 首だけ動くサンダーをそれを見上げながら、その先から来る男をみて絶句。


「――そう。余が織田信長じゃ。太陽への翼か……余の世界で過ぎた力を持った愚か者が、太陽へと近づきすぎて焼け落ちた話がある。貴様ら太陽への翼も余という力を見誤ったな。してサンダーよ、そちが言う過ぎた力……あの御方・・・・とやらについて聞こうか?」


 瞬間サンダーは全てを理解し戦慄した。

 二人はすでに殺されており、やつ織田信長の手により復活して配下になったのだと。

 だがサンダーとてハイランクの冒険者。ましてや西方教会の先兵としてのプライドもある。だから――


「――知らねぇよ。オレはただ単に敬虔けいけんな信徒ってだけだからな」

「そうか……素直に吐くきはないと?」

「くどい。オレは何も知らねぇよ。それよりオレを開放しろ! オレは何も知らねぇんだからな!!」

「ふむ了解した。なれば……おい、サンダーを開放してやるがよい」


 まさか本当にそうなるとは思わず、サンダーは驚きながらも内心思う。後悔させてやる、と。


「ぐぅ痛え……テメェ等もいいように使われやがってバカどもが。じゃあな……」

「うむご苦労だった。あぁそうそう。良い忘れていたが余は何もせぬ。だが……コイツラはどうかな?」


 サンダーは「はぁ?」と言いながら信長の両脇を見る。

 するとリザとドッヂは「「ぶっ殺す!!」」と言い放ち、思い思いの攻撃を繰り出す。


「ちょ、ま!? 待てお前らオレギャアアアアア!!」

 

 あっという間にサンダーは潰され、氷の刃でズタボロにされ、首を落として余の足元へと転がってきた。

 その瞳は恐怖に満ちており、サンダーの最後の心情が焼きついていたといえよう。


「二人の恨みを買いすぎたな。哀れな男よ……さてサンダー。余は生前のキサマには何もする気がなかったが、死後は約束しておらん。では黄泉還がえり、余のために情報を教えよ。ネクロマンス!」


 時が巻き戻るようにサンダーの遺体が修復され、何が起きたのか分からないと言った表情でサンダーは起き上がる。

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