第40話:気絶
「ぐぅぅ……冷てぇ……」
「いいぞドッヂ。リザ!」
「分かってるわよ。火炎よ円陣を組め――ファイアサークル!!」
ドッジが冷気の息を防いだ後、リザが炎の壁で秀吉を囲む、が。
「くぅ、やっぱりだめ。アタシは火の魔法は苦手なのよ!」
その言葉が全てを物語っており、炎の中から秀吉が「焼け死ぬかと思ったやん」と怒りながら出てきた。
「この役立たず! が、少しは役にはたったぜぇ。死ねサルがああ!!」
炎から出て秀吉の頭上から、サンダーが武技を発動しながら落ちてくる。
「秘技・雷鳴剣!!」
サンダーの剣へと大気中の静電気が集まり、青く発光したと同時に秀吉へと真っ直ぐ振り下ろす。
その効果、剣速のアップと斬れ味の向上。さらに斬った相手が感電するというおまけ付きだ。
ちなみに剣に静電気が集まった時、雷鳴に似た音がする。
光る頭上に「誰がサルやと?! って、なんや!?」と驚く秀吉。
が、その勢いは止まらず、着斬したと同時に激しい落雷音が響く。
「やったか!? ハハハ、これこそが〝雷のサンダー〟と言われる俺の最高の一撃よ!!」
流石はゴールドランクといったところか。
その攻撃は周囲の地面を焦がし、木々の残骸が散乱する。
だがよく見れば、その木は周囲の木ではなくもっと違う植物の根。つまり――
「――ミリィィィてめぇかああああッ!!」
ケホリと咳をしつつ、ミリーが蔦の塊の中から秀吉を抱いて出てくる。
どうやら予想外の攻撃で、秀吉は頭を打って気絶したようだが、それがバレないように胸の谷間へと秀吉をしまう。
秀吉をぎゅっと抱きしめたながら、サンダーのあまりの剣幕に「ひぅ」とさらに息を詰まらせつつ、立ち上がり「なのです!」と一言。
「いい度胸じゃねぇか。俺らに逆らうとは、一体どういうつもりだぁ?」
「お前こそどういうつもりや? 熱苦しい顔は、
突如吐き出されるアイス・ミストに、サンダーは飛び退きドッヂの影へと逃れる。
しかしドッジはまだ先程のダメージが回復しておらず、さらに凍りつく事で悲鳴をあげた。
「ぐうう寒さが痛でえ! サンダーなんて事をしやがる?!」
「さっさと回復してねぇテメェが悪い。くそ、ミリーのやつあんなにドルイドの魔法を使えたのかよ」
「今更何を言ってるのさ。元々あのくらいは出来たじゃない。それを使わせないようにしてただけでしょ」
「チ、そうだったな。ったく、亜人は無能でいいのによぅ」
「あの御方の命令だから仕方ないわよ。それより……ちょっと耳を貸しなさい」
リザが何かに気がついたようで、サンダーへと耳打ちを素早くすませる。
すると「マジか? なら」と嫌らしく口角を上げると、ドッジへも素早く伝達。
「くそ、コレが最後だからな。ボクだって痛いんだぞ!」
「あぁ分かってるって。その前に……ミリーよぅ。テメェはどうやって大虎の森から生きて帰ってきた?」
「やっぱりミリーを殺そうとしてたのでアリマスか。どうしてミリーを……いえ、亜人をそこまで嫌うでアリマスか!?」
「質問を質問で返すな無能。いいか、亜人は存在そのものが悪なんだよ。ましてテメェはダークエルフ。居るだけで空気が汚染されるだろ? なら世のため人のため、キレイに浄化してやるのがゴールドランクの俺らの役目だろうが」
「そんな……だからって、レオナルドさんや食堂の娘たちまで手にかける事はないでアリマス!!」
「汚物を庇うのも同罪だ。ましてあの熊野郎は、弟を再起不能にまでしやがったんだからな。そうそれだ。その場所にテメェも居たろう?」
ミリーは黙って頷く。
「やっぱりな。大体あの熊野郎一人じゃ弟に勝てるはずもねぇ。ミリー……テメェが何かしやがったんだろ?」
「するわけが無いし、出来るわけが無いでアリマス」
「いぃ~やしたね。じゃあなきゃ弟があんな熊野郎に負けるはずがねぇ。この卑怯者が!!」
「卑怯者……確かにミリーは卑怯者でアリマス。あの時レオナルドさんが勝った時、こうなるかもしれないと思ったのに……」
ぐっと唇を噛み締め、自分の予想の甘さに胸が苦しくなりつつ続ける。
「サンダー達のクズっぷりを思えば、逆恨みをして襲うのは当然。でも考えないようにしていた自分が本当に卑怯で、馬鹿だったでアリマス」
「おい……口には気をつけろ。誰がクズだと!?」
右人差し指をサンダーへと向けながら「お前たちでアリマス!」と言い放つ。
「先程の答えを教えてやるのです。ミリーにはレオナルドさんを助けるなんて、あんな凄い事はできない……けれど私を救ってくれた異世界人。織田信長なら出来るでアリマス!!」
その言葉を聞いてサンダー達は驚く。
異世界人――それは亜人よりサンダー達が目の敵にしている存在であり、西方教会が目の敵にしている存在なのだから。
「テメェ……異世界人とつるんで何をしようとしている!?」
「ミリーは別に何も。ただあの人は一度決めた事は絶対にやり通す。そんな漢ですし、ミリーはそれを全力で応援するでアリマス!!」
「そうかよ。ならお前も、異世界人の存在を知っていてかばった罪も上乗せだ」
その言葉を聞いて、以前から疑問に思っていた事をミリーは聞く。
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