第36話:わかりやすいわな
「ま、ミリーをいたぶる指示を出した事は公然の秘密だって、みんな知っているとは思うけれど。貴女はどう思う?」
リザは吊るされた女にそう聞くが、すでに口から泡を吹き絶命をしていた。
「あら、嫌ねぇ……もう死んじゃったの? せっかく
ため息一つ、くるりと振り向き「まぁいいわ」と言いながら、後ろに縛られている娘たちへと話す。
「まだエサはあるし♪」
そう言いながらリザは縛られている二人の娘のうち一人に近づくと、口に噛ませてあるロープを外す。
「たしか……そう、貴女は亜人でもないのに、ミリーにいつも優しくしてたわよね?」
「ひぃぃ!? ち、違うんです! ただミリーがその……可哀想で……」
「うんうん、優しいねぇ貴女は。でもね?」
そう言うと、もう一人縛られている女へ向けて、無詠唱で作った氷のナイフを投げて刺し殺す。
「無駄に優しくするとああなるのよ?」
「キャアア!? 許してください、もう二度とミリーに優しくしませんからぁぁぁ!!」
「そう? いい子ねぇ。人間が亜人共と共存なんて出来ないの。分かるわね?」
リザがそういうと、定食屋の娘は涙を流して何度も頷く。
それを見たリザは「分かってくれて嬉しいわ」と言うと、「じゃあ今からミリーが来たら――」とエサとしての役割を話す。
「わ、わかりました。私がその毒ナイフで襲えばいいんですね?」
「理解が早くて助かるわ。じゃあアタシはあの木の裏で見ているから、楽しませてよね?」
振り返らず歩くリザに「はい」と返事をしつつ、「ミリー……ごめんなさい」と呟き涙を落とす。
そして死んだ二人を見ながら、失敗したらこうなるのだと思うと、流す涙が凍りついたと思えるほど冷たかった。
――それから少し時が過ぎる。信長たちは迷路を進み広場へと到着した。
周囲はあいも変わらず不規則に生え揃った木々が生え揃い、どう見えも普通の森ではない。
この広場も人の手が入ってはいないが、どう見ても不自然な空間であった。
そんな場所に人の手が入った違和感のある、木の棒に縛られた女が苦しげにうなっている。
よく見ると壁になっている木からぶら下がる人影もあり、その根本にはもう一人が倒れていた。
「うむ。これは陳腐だが目的は明確よな」
「ききき。目的は……うきゃ!?」
「定食屋のお姉さん! 誰がこんな酷い事を!?」
その姿を見て「ハァ、これだから鳥頭と言われるのだ」と言いながら、ミリーの肩にいる
「ミリー……ちゃん。助けて……」
「いま行くでアリマス! 酷い怪我!? まずはロープを切って」
女は「うぅ」と言いながら、全身に出来た切り傷から血を流す。うむ、実に胡散臭い。
駆けつけたミリーは、すぐに女が縛られているロープを解こうとするが、中々うまくいかない。
だが女は早く抜け出したいという表情より、むしろ戸惑いがある表情だ。
さらにあの瞳は、ミリーが来たことによる安心感というより、むしろ――
「解けた! もう大丈夫でアリマ――って、何を!?」
「ミリーごめん、許してちょうだい!!」
縄が解けたと同時に、尻の下に隠していたナイフを取り出すと、ミリーへと攻撃する。
それを見た
女は「え、サ――」まで言うと、そのまま背後へと吹き飛ぶのを見た
困惑するミリーに「大丈夫か?」と言うと、「なんで……お姉さんが……」と放心状態だ。
「だから鳥頭というのだ。考えても見よ、ここはダンジョンで人が縛られているのはおかしかろう? そこに分かりやすく、そちの知り合いだと言う。なれば……」
斜め左奥にある、大木の裏へと向けて「出てこい下郎」と言うと、先が尖っている大きな黒い帽子をかぶった女が「やだ、見つかったの?」と言いながら出てきた。
「もぅ、こんな簡単な事すら出来ないなんて、やっぱり貴女。死んだほうがいいわ」
「す、すみませんリザさん。許してください!!」
「いいえ。アタシの我慢の限度はすでに、ぶっ壊れているの」
リザはそう言うと、氷のナイフを投げる。魔法とはあんな事も出来るのかと驚きつつ、
そのままナイフへと体が刺さるのを見て、「お猿さん!?」とミリーが叫ぶ。
思わず余も叫びたくなったが、次の瞬間「うっきゃ~!」と
「阿呆ぅ。俺様にそんなツララなんぞ通じるかいボケぇ」
「なッ!? ま、まさかモッファーエイプ?! なぜ高位精霊がこんな場所にいるの!?」
困惑するリザに、
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