第34話:おい・再び

「うっきゃ~痛そうやわぁ」


 罠にかかったドッヂから逃げ出した藤吉郎サルが、そう言うのも無理はない。

 ミリーが魔法で作り出した蔦は、トゲが無数に生えており、それがドッジへと時間と共に食い込む。

 しかもまだ成長しているらしく、太く、激しくうねりながら蔦は伸び、そこへ巻き込まれたドッヂはさらに「ミリイイイイイ!? 許さ……い痛だだだだッ!!」と叫ぶ。


「うむ、見事なり。ミリーよくやった。ドルイドの魔法やるではないか」

「は、はいなのです。これも信長が考えてくれた〝ぷらん〟のおかげでアリマス」


 ぷらん。それは異世界用語なのか、余はとても気に入り作戦をそう呼ぶ事とした。


「さて、まずはこのくらいで良いだろう。こんな雑魚にかまっている暇はない。森の中心部に向かう」

「それにしてもエグい攻撃やでぇ。見てみぃ、どんどん食い込むとか素敵やん。さ、行くでミリー」

「あ、待って~置いて行かないでほしいでアリマスよ~」


 森の奥へと進む我らを見たドッヂは、「ミリー! 絶対に殺してやるからなあああ!!」と叫ぶ声が森へと響く。

 

「まったく五月蝿き事よな」

「ききき、でもお陰で残りの二人も今頃は?」

「ど、どうなるでアリマスか?」

「「ミリーを殺そうと、さらに警戒してるはずだ」」


 涙目のミリーは「そんなぁあああ」と、藤吉郎サルをガクガクと上下に振って涙を流す頃――



 ――森の中央部付近で、信長達の予想外の事が起きていた。



「ハァハァ……あの声はドッジ? すると奴らミリーまでもこの森へと連れて来たのか? くそ、おいが何とか助けるしかない」


 キズだらけの体のそばに転がる蛇型の魔物数匹に腰掛け、熊の獣人の男――熊助こと獣人のレオナルドが、息を荒くドッジの声を聞いて悟る。この森にミリーが奴らに拉致されたのだと。


「おいだけじゃなく、ミリーまで殺そうとするつもりか……急がなきゃな」


 レオナルドは蛇に噛まれて負傷した足を庇いながら歩く。

 目的地は森の中心部にある、ボスが居るであろう場所だ。

 元々ここは初心者を卒業する程の力ある冒険者達が集まり、パーティーを組んでボスである大魔狼を討伐する事で、良質な魔石が手に入る人気スポットだった。


 しかし謎の失踪……いや、誰もがサンダー達が面白半分で初心者狩りをしていたのを知ってはいた。

 だから冒険者たちはその事をギルドへと訴えたが、冒険者ギルドのマスターが太陽への翼の関与を否定した事で、暗黙の秘密となってしまう。


 それ以降、ここを訪れる冒険者達は消え失せ、サンダーが気に入らない相手を処刑する場所となっていた。

 レオナルドはハヤテに勝利した事で、遅かれ早かれ奴らに制裁をされるならと、この人喰いの樹海に居ると情報を流し、全ての元凶である太陽への翼と決着をつける事にする。


 だがしかし、誰も来なくなった人喰いの樹海は魔物が増え、予想外に苦戦していた所に蛇の毒にやれてしまい、太陽への翼と対決するどころか隠れながら現在にいたる。

 そこに先程のドッジの声だ。これはまずいと迷路となった樹海を急いで進む。

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