第33話:猪突猛進

「ミリイイイイ! 会いたかったぞおおおッ!!」

「ひぃ?! ド、ドッヂさん」

「様をつけろよデカ乳野郎!」

「ほぅ、あやつも魔力を言葉に乗せて圧を放つか。が、この程度戦国の世にはごまんとおったわ」


 そう言いながらひっくり返りそうなっている、ミリーの背中に手を添えて彼女を支え持つ。


「す、すみませんドッヂさ――」

「――よい。あのようなゴミに様を付ける必要は、な?」


 ミリーの言葉を遮りながら、そう言うと藤吉郎サルが続ける。


「せやでミリー。おまえが様をつけて呼びはるんは、大殿〝様〟だけやさかいな!」


 震えながら余と藤吉郎サルを見ると、強く頷きながら「うん!」と返事をするミリー。


「なんだってええ!? オイ、オマエラ……このボクを怒らせたんだからな?!」

「キサマ如き阿呆を怒らせたとて、だからどうしたのだ?」

「うきき、ぶっさいくな肉だるまの分際で生意気やん。なぁミリー?」

「は、はい! ぶっさいくでアリマス! 顔がゾンビより腐っているのです!!」

「そこまでは言ってへんよ?」「うむ。さすがにゾンビよりというのは、な」

「華麗なる裏切りぃぃぃ!?」


 わなわなと震えながら、暑苦しい筋肉を震わすドッヂは、「ウガアアア死んだぞテメェ等!!」と突っ込んで来た。

 その様子、まるで大猪そのものであり、何も考えなしに真っ直ぐに突っ込んでくる。

 

「猪突猛進の猪武者を思い出すな藤吉郎サルよ」

「さようでんなぁ。なれば大殿、猪狩りの一番槍はサルめにお任せあれ」

「うむ。では左七歩で待つ」


 藤吉郎サルは「委細承知でっせ~」と言うと、ミリーの頭の上より飛び上がると、近くの木に飛び移る。

 そんな事など知った事かと、ドッヂはさらに突っ込んで来ること残り五メートル。

 静かに鬼切丸を抜刀し、奴へと向けて話す。


「猪と言うのは馬鹿でな。真っ直ぐに突っ込んで来るものよ」


 ドッヂは「なんだと!? ボクが猪だとでもいうのか!!」とわめくので、「いや、ソレ以下だな」と返答する。

 ますます顔を赤く染め上げ、目を血走らせながら右拳から繰り出す、大ぶりの突きを余へと放つ――が。


「ウキキッ! ほなさいなら~」

「なッ、目がああああ!?」


 藤吉郎サルが好機を見計らい、木の上からドッヂの顔へと被さる。

 すると視界が消えてパニックになったドッヂは、右拳の威力に引っ張られながら前に転びそうになる。そこへ――


「――ミリー今ぞ、ぷらんAじゃ!」

「は、はいでアリマス! 新緑の息吹よ今こそ芽吹け――蔦の縄網アラフィトス!!」


 ミリーが返事をしたと同時に余は七歩横へずれる。

 と同時に、その場から太いつたの植物が生えだして左右に広がった。

 そこへドッヂは勢いよく進むと、思い切り突っ込むと「あ痛だああああい!!」と絶叫する。

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