第29話:レベル?いえ、段デス
「ほほぅ。ここがゾンビが出る墓地か?」
「うぅ、そうでアリマスよぅ……ひぃ!? 変な声が聞こえて怖いのです。ほ、本当にここであっているですかお猿さん?」
「そ、そのはずなんやけど」
なにやら突如として、
「どうしたサルよ。ここまで連れてきたのは、そちの野生の勘とやらじゃぞ?」
「へぇ、そうなんでっけど……なんと言うか、この墓地に入ったとたんに悪臭が邪魔しおりましてな。薬草の香りがせえへんのですわ」
悪臭。その原因はすぐにわかった。それは歩く死体、ゾンビとやらのせいだと。
流石の余も歩く死体とは始めて会うが、異世界効果なのか。自然とその存在を受けれてしまう。
「ミリーよ。あれが原因のようだが、何か解決策はあるか?」
「無いでアリマスよ。そもそもこんな場所に上級薬草が生えているはずがないのです」
「ムキキ! 俺様の言う事を信じないとは不届きな乳め!!」
そう言うと
痛くは無いらしいが、「ひゃぁくすぐったいでアリマスぅ」とミリーはヤツを抱きしめる。何をしておるのだホント。
「はぁ~まぁよい。そちらが頼りにならんのは分かったから、余が何とかせねばなるまい」
そう言いながら墓地へと侵入した瞬間、ゾンビ共が殺到してくる。
「そ、そんな無防備に入ったら危ないでアリマスよ! ここはアイアンランクの冒険者パーティーでも苦労するでありますのに!?」
ミリーの言う通り、わらわらと死体共がむらがってくる。
その目は生者を食いたいという食欲に満ちており、見ていて気持ちのいいものではない。
とはいえ、余としては毛ほどの恐怖すら持たぬし、逆に可愛らしくすらある。なぜなら――
「――ただの屍より黄泉還がえり、この信長の手足となるがよい。ネクロマンス!!」
数十は居たゾンビが紫の炎に似たものに包まれると、「ぎゃあああ……あれ?」とマヌケな声を上げて止まる。
見れば顔色が青い不健康な男女が呆然と立っており、大抵の者は自分が何かすら分からず立ち尽くしているようだった。
「ふぇえぇぇ!? ま、まさか全員黄泉還がえらせたでアリマスか!!」
「うきき。やはり大殿は格が違いますなぁ」
二人はそういうが、思ったものと違い魂が抜けた感じで復活してしまう。
直後、例の謎の声が頭の中で響き【術者の力が足りず、一部の成功にとどまりました】と聞こえる。なるほど、余の力不足というわけか。
そんなふうに思っていると、復活した中から一人の太った男が歩いてくる。
見た目はなんと言うか、変態的だった。
この世界で見たタンクトップと言う上着に、膝までのパンツを履き、穴が空いた靴をはく。
そんな何かが、頭をかきながらこちらへと来る。
「あれ……俺は死んだはずだが……それにここはどこだ?」
「ほぉ。自我があるのか。余が誰だか分かるか?」
「誰だと――ッ!? こ、これは我が主よ! って主? どうなっている俺の頭と体は!?」
そう言いながら、体は片膝立ちになり頭を下げながら、口では驚きを隠せない様子だ。
これも力不足から来ている不完全さなのだろうか。
「で、でも分かります。俺は主……いや、信長様に復活させてもらったのだと」
「ほぅ、余の名まで分かるか? うむ、余が復活させたのだ。そこで頼みがある」
そう言いながら薬草を見せて、ここへ来たわけを説明した。
するとどうだろう。この男は驚きながら「まさかまた薬学を披露できるとは」と驚きながら、さらに頭を下げて震えている。どうしたのだ?
「実は俺、薬学王と生前言われていたのです。そこである仮説を実証するために……あぁ思い出しました」
「何を思い出したのだ?」
「そうです、死人のエキスを吸った薬草に特殊な薬液を散布する事で、上級薬草に変化するのだと。それを実証しようとして、ゾンビに喰われてしまい死んだんでした……」
男の話しは続く。どうやら
「なるほど話しは理解した。なればその上級薬草を集めてまいれ」
「はい! よしお前ら手伝ってくれ、主に最高の状態でお納めするぞ!!」
男はそう言うと、抜け殻になった黄泉還がえり達を率いて上級薬草を摘む。
その見事な手並みは、とても先程までゾンビだとは思えぬほどだ。
ほどなくして墓場中から最高の状態の上級薬草が集められ、それがジョニーの荷台へと大量に積み上がる。
「うむ見事なり薬学王よ。して、そちらは今後どうする? 望めば二度と彷徨わぬように土に還してやるが?」
「そう……ですね。できればこのままこの世に留めおきくださり、信長様のお役にたちたいと思います」
「そうか。なれば人を襲うでないぞ?」
「はい、討伐されてはかなわないので。今後は研究に没頭し、少しでも高品質の薬剤を提供いたします」
そう言うと、黄泉還がえり達は土の中へと消える。もぐらみたいな奴らよ。
そんな事を思っていると、また頭の中に謎の声が響く。
【
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