第28話:ぞんびーにあいにいこう

「あのぅ。もう一度聞きますが、下手したら信長の命が危ないでアリマスよ? それでも本当にやるですか?」

「くどい。余が決めた事ぞ? だからこのままダンジョンへと潜り、奴らをおびき出す・・・・・・・・。だからもう一度その鳥頭に叩き込むがよい」


 そう言いながら道中で決めた、〝太陽への翼〟への報復手段を話す。

 手順はこうだ。まず奴らはミリーが来たらば確実にちょっかいを出してくるだろう。

 だがいかに奴らとはいえ、街中で堂々と襲ってはこないのは、ミリーを罠にハメた事からも分かる。


 ならどうするか? 簡単だ。奴らがミリーを襲いやすい環境に誘導すればよい。

 さらに早急に始末をしなければと思える状況を作る。

 そのためのお膳立てとして、エサもばらまく必要がある。つまり――


「――亜人の価値を高めてやればいい。ここまでは分かるな?」

「はいです。落ちた亜人の価値を高めるため、有能さを示す……これが信長の作戦でアリマス」

「うむ、そうと決まれば善は急げだ。今日中にもう一つの依頼も完了するぞ。藤吉郎サル頼めるか?」

「ウキキ、このサルめにお任せあれ。伊達にサルほんものになったワケやあらへんよって」


 そう言うとミリーの胸の間から出てきて、余の肩へと登る。まったく主を腰掛けにするとは、いい度胸になったものよ。


「ではゆくぞ。日が落ちる前に最上級の薬草とやらを採取しつくす!」


 なぜかジョニーが「ギョヒー」と返事をするが、相変わらずゾクリとする声だ。と言うか馬なのか?

 それに続き、ミリーと藤吉郎サルも返事をしつつ、馬車は東門を出てから疾走する。


「それでどこへ向かうのだ?」

「ん~そうですなぁ……ウキッ! あっちや、あっちからこの薬草と同じ香りがした気がするで!!」

「えぇ? そっちには無いでアリマスよ。だってアンデッドが徘徊する墓地だけなのです」


 藤吉郎サルが示す場所。そこは目的地は本来の採取地よりもズレた、ゾンビという死人が歩く場所だという。

 なぜそこがわかったのかと言うと、藤吉郎サルは精霊として。そして何より「野生の勘でっせ!」という、ケモノの勘が働いたという。本当かよ?

 

 途中何度か見本の薬草を噛んだり、かいだりしながら、ついにその場所へと藤吉郎サルはたどり着く。

 藤吉郎サルはぴょんと馬車より降りると、鼻を鳴らして「間違いあらへん、ここやで」と言う。


 ミリーの予想どおり、そこは荒れ果てた土地に雑草が生えた間から古い墓石がある。そんな荒廃した場所だった。

 

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