第25話:へんなたま
「これは魔力と体力。その他の能力値を色で表す変な玉です」
それを聞いた同僚がため息を吐きながら、額に手を当てセルフィへと詰め寄る。
「セルフィ、何よ変な玉って。ちゃんと能力鑑定球と言わないとだめでしょ?」
セルフィは「あ、サブマスター!?」と驚くと、その女を見る。
年の頃はセルフィと同じ二十代前半ほどだが、やはり耳が長い金髪のエルフだった。
「たまたま通りかかったら……そっか、生きていてくれたんだね。無事でよかったよミリー」
「ありがとうございますサブマスター。なんとか生き残れたでアリマス」
どうやらこの二人はミリーに悪い感情は持っていないようだ。
それというもの、他の職員がこちらを見る視線は悪意に満ちているのは誰にでも分かろう。
「それでこのボクちゃんが新しい冒険者になるの?」
「うむ。余は織田信長と申す。いずれ天下人となる漢よ」
「天下人ぉ? ふふ、面白い事をいうボクちゃんね。気に入ったわ、ボクちゃんのプレートを貸しなさい」
何やら失礼な事を言われている気がするが、まぁ余は心が広い。
とりあえず黙ってみていると、サブマスターとやらが何やらプレートを指でなぞる。
すると鉄のプレートが光だし、なにやら文字が浮かび上がってきた。
「はい、ボクちゃんのためにアタシが特別に裏打ちしてあげたわ」
そう言うと、カウンター越しにプレートをこちらへと渡してくる。
それを受け取ると、見たことの無い文字が書いてあり、激しく発光した。
まぁこの世界の文字は不思議と理解できるのだが、なぜかこの文字は記号に見えるな。
ふむ……今更ながら異世界とやらに来て、なぜ言葉が分かるのだ? そこも不思議よ。
「これは何と書いてあるのだ?」
「特になにも? ただアタシの名前を書いただけ。何か困ったことがあったら見せるとご利益があ・る・か・も・ネ?」
そう言うと、ことさら胸を強調した姿で片目をつむる。
だが妙にペタリとした平な胸でそれをしても、いささか寂しい限りだと思ったのが伝わったのか、「……残念そうな顔をしないでよね?」と睨まれる。
「いや、その好意はありがたくもらっておこう」
「素直でよろしい。じゃあ測定はいいわ。またおいでなさい、未来の天下人のボクちゃん」
そう言うとサブマスターは踵を返して去っていく。
その後姿を全員で見守ると、セルフィが今更ながら「え゛!? いいの……?」と驚く。
「こんな事は始めてですが、サブマスターがそう言うのだから、このまま冒険者登録は完了としますね」
「うむ、手間をかけたな。では行くぞミリー」
「あ、待つでアリマスよ信長! じゃあセルフィまたね!」
立ち去る信長をセルフィは見つめながら「いいのかな?」と首を傾げる。
するといつまに戻ってきたのか、サブマスターが手に能力鑑定球を持っていた。
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