第18話:信長は軽蔑する
「ははッ! それはいいな! お陰でおいも助かったし、胸がすっとしたぞ」
「喜んでくれて何よりだ。で、クマ助よ。そちはなぜミリーの
「く、クマ助ぇ? まぁいい。実は――」
クマ助はこれまでの経緯を話す。ミリーを追い出した太陽への翼は、いかに亜人が劣悪な種族かと冒険者たちに吹聴したらしい。
この街で亜人と言えば大多数が獣人であり、エルフや他の種族はほぼ居ないそうだ。
「――そこで奴らは亜人の中で、特に
ダークエルフと言う言葉でミリーは、ビクリと震えて余へ視線を向けてからそらす。
それを見たクマ助は、しまったという顔になるが、ミリーが「隠していてごめんなさい」と消え入りそうに話す。
「隠す? なんのことだ?」
「その……ミリーがダークエルフだって事なのです」
「あぁその事か。隠すもなにもないわ。その事は知っておったぞ? さっき門番も言っていたしな」
「そういえば門番も言ってたっけ……でも最初はいつ知ったでアリマスか?」
「先日の村で酒宴を開いた時か。さり際にそちに感謝を言っていた者たちがいたろう? そいつらから小耳に挟んだからな」
その言葉でさらに下を向いてしまうミリー。
「軽蔑……したですよね。ダークエルフは魔王の手先だったのでアリマスから」
「ああした。大いに軽蔑したとも」
ミリーは泣きそうな声で「ですよね……短い間だったけどありが――」と震える言葉に被せて話す。
「それは軽蔑するだろう。この世界で余の初の家臣になったミリーを泣かす馬鹿共にな」
「え……それって」
「だから言ったであろう? 余はそちの主で仲間だとな。ミリーがたとえ今も魔王の部下であろうとも、余の心は変わらぬわ。それにあの村人たち全員、そちに心底感謝していたぞ」
じゃらじゃらと金貨の中から、顔だけ這い出てきた
そんな様子を見てクマ助も「よかったなミリー」と肩を叩くと、泣き笑いの表情で「ありがとうなのです」とミリーは何度も頷く。
「そんな訳だから、これからの
無様に気絶し、運ばれていく男を見つつそう言うと、ミリーは「うん!」と元気に頷く。やはりこの娘には笑顔が似合う。
「それでクマ助よ、続きを聞かせてくれぬか?」
頷くクマ助から続きを聞く。それは胸糞が悪くなる話しに満ちていた。
最初は嫌われ者のミリーを仲間にいれる寛容さをみせ、パーティーではお荷物だが、何とか使えるまでに教育しようとした……。
が、ミリーはいかに教育を施そうが、無能だというレッテルを貼ったらしい。うむ、レッテルか。また一つ言葉を覚えた。
結果、我慢にガマンを重ねてはみたが、自分たちが冒険者ランクのシルバーを卒業して、ゴールドになるからミリーは付いてこれないだろうと、
それでミリーを追い出した後、亜人の中で特に役立たずとレッテル貼りされたミリーを例に上げて利用し、亜人はいかに役立たずでダメな存在かと冒険者たちに広めて回ったらしい。
「そうだったでアリマスか……それでなぜレオナルドさんは、あのハヤテと決闘を? しかもあんなに武器がボロボロだったなんて、シルバー冒険者としてはありえないのです」
「それがな、ミリーを追い出した計画は一つの事に繋がっていたんだよ。それは――」
どうやらクマ助もシルバーランクの冒険者のようだが、その冒険者の命ともいえる武器がボロボロだったのにはワケがあった。
それはミリー。つまり亜人は冒険者としてふさわしくない。だから亜人をパーティーから追い出そう。
そういう風に〝太陽への翼〟の連中を中心に、あっという間に冒険者に広がったという。
はじめは我慢をしていた獣人だったが、パーティーを組むにも支障が出はじめた。
ある日、一人の獣人の娘がパーティーを追い出されてしまい、そこが敵地のど真ん中だったらしい。
その娘の帰りが遅いことに気がついたクマ助は、娘とパーティーを組んでいた輩を探し問いただす。
「おい、一緒に行った娘はどうした?」
「あぁアイツな。西の森で別れたよ。だって使えねぇんだもん」
「クッ、貴様ら!!」
怒声一撃。リーダー格の男を殴り飛ばし、クマ助は西の森へと走るが時すでに遅し。
その娘はすでに魔物に殺されていたという。
さらに街に帰ってみると、娘を助けるためにボロボロになった大斧を修理してくれていた鍛冶屋も修理を拒否したという。
それで堪忍袋の緒が切れ、クマ助は元凶である太陽への翼へと決闘を申し込んだ……と、ここまでが一連の流れだ。
「そ、そんな……ミリーが追い出されたばかりに、そんな事になっていたなんて」
「いやミリーのせいじゃない。考えてもみてくれ、ミリーが追い出されてからまだ十日もたっていない。にも関わらず、この亜人排除の動きは普通じゃない」
なるほど、確かにそうだろう。クマ助の言う通り、太陽への翼だけじゃ一気に広がるのは難しい。
いや、実質不可能だろう。これまで獣人との関わりのある人間も多いだろうに、いきなりその流れになるのは解せん。
「確かにクマ助のいう通りよ。これは裏になにかありそうだが……今は出来る事から始めようか。なぁ
そう言いながら
「まったく抜けた男よな。ほれ
ビクリと跳ね起きた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます