第16話:賊眼は見定める
「アン? おいおい、フザけた事をしやがったのはテメェか? 俺がシルバーランク。〝太陽への翼〟のリーダーの弟だと知っての事か?」
「知らぬし、どうでもいい事よ」
「テメッ! はッ、いいだろう。このクマ野郎の次はテンメェ~を斬りきざんでや……あん?」
どうやらハヤテはミリーに気がついたようで、にへらと笑いながら優しく話す。
「おいおいおい。あの役立たずなミリーさんじゃありませんかぁ? なんだぁ? もう野郎を
「そ、そんな事ないでアリマスもん! 信長とお猿さんはミリーの……その……あの……」
言葉に詰まるミリー。その頭に手をポンと載せ、「余の家臣じゃ」と宣言する。
「ぷっ。家臣? 役立たずが? ギャハハ! 笑わせてくれるぜ。そんな役立たずを抱え込むなんて、テメェもさぞや無能の主なんだろう」
瞬間、ミリーの胸に抱かれていた
それに周囲がビクリとして青ざめ、パニックになりかけていた。
どうやら余が馬鹿にされた事で、かなりお怒りのようだが「待て」と命ずることで怒りが霧散したようだ。
「な、なんだ今のは? ミリーからすげぇ魔力が出たきが……いや、そんなはずはねぇ」
「おい下郎。そろそろ対戦の時じゃないのか? 空中の数がなくなるぞ?」
そう指差す先にある、闘技台中央で減り続ける数字。
チっと吐き捨てて闘技台中央へと向かうハヤテだったが、「あとで覚えてやがれ」とクマ助の元へと向かう。
クマ助もミリーを見て驚いていたが、何も言わずに歩き出す。
「レオナルドさん! どうしてミリーなんかのためにこんな事を!?」
「誇りのためだ。ミリーの……ためじゃない」
ドスドスと歩き戦闘準備をするクマ助に、ミリーは「レオナルドさん……」と言葉をつまらせる。
「やつも戦士。おもう所があるのだろう。今は熱く応援してやろうぞ」
「そうやでミリー。俺様たちが応援しないで誰が応援するってんだ? それに痴女資金もかかってるしな」
「うん、うん。そうだよね! 今は信じて応援するでアリマス!」
「で、あるな。さて……そろそろ始まるぞ」
両者が睨み合い、いよいよ数字が消えたと同時に、ミリーが「って痴女資金ってなに!?」と叫んだと同時にクマ助が飛びかかった。
クマ助の武器は大きな斧一つ。それを大上段に掲げながらドスドスと突進。
ハヤテはあくびをしつつ、「おせぇ」と言いながら避けようともしない。
「ナメルなよハヤテ! せいやッ!!」
余から見ても大ぶりで隙がありすぎる攻撃。内心甘いと思った次の瞬間、クマ助の大斧は闘技台に突き刺さる。
鈍く石を無骨な刃がむさぼったと同時に、クマ助が「アースドラム!」と叫ぶ。
するとクモの巣状に亀裂が走り、その亀裂の石がハヤテへと向けて飛び出す。
ハヤテも予想外だったのか、「クソッ」と言いながら背後へと三度飛び退き岩を
「おお! あれも魔法か!?」
「いえ、あれは武術と術技の合せ技。〝
聞こうと思ったのに先にいうとは、なかなか余を理解してきたではないか。
それにしても面白い。魔力を使った技などあるのだな。
「つまり武術の技で闘技台を叩き割り、術技の力で石の破片を飛ばしたわけだな?」
ミリーは「でアリマス」と答えると同時に「あ!?」と驚く。
その原因はすぐに分かる。それはハヤテが無数の石を弾き、さらにその隙をつきクマ助へと斬りかかる。
「んなもんで俺がやられるかよッ、オラアアア!!」
いつの間にか抜いた刃渡り一メートルほどの剣で、クマ助へと斬りかかる。
それも一度斬った反動で、さらに早い速度でまた連続で斬りつけた。
「大殿、あれも武技ですかね?」
「だろうな。大斧に弾かれた剣が、速度をまして元の斬撃の場所へ戻るとは思えぬわ」
「ええ、お二人の言う通り、あれも武技〝連撃アーツ〟というものなのです。アーツとは武術の一つで体術を組み合わせたものに、剣に術技をまとわせて弾かれても狙った場所へマーキングして戻るでアリマス」
「ほぅ~それは面白いな。余も武技を使いこなせるか?」
「信長もお猿さんも、余裕で使いこなせると確信しているです」
頷く余と
「ああ!? レオナルドさんが押され始めたですぅ!」
「大殿様。ありゃぁ負けますぞ?」
「さもあろうな……あの武器、そろそろ限界だろう」
大斧と剣。打ち合えば当然、剣が疲弊して壊れるが、ハヤテの持っている剣よりクマ助の大斧は元々
「そ、そんなぁ!? このまま武器をかばい続けた攻撃なら、レオナルドさんが負けちゃうでアリマス!」
「大丈夫やから落ち着け痴女っこ。みてみぃ大殿様の顔を。わる~い顔してはりますやろ?」
「ほぇ? わる~い顔……ひぇッ?!」
余の顔を覗き見る二人。
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