第14話:えろす・おぶ・えんじょい

「ふぅ~助かったのです。いつもは少しイジワルされるけれど、今日は特に酷かったでアリマス」

「まったくトンデモナイ奴らだな。大殿様が出張らなければ、俺様の右拳が炸裂するところだ。キキキ」


「それにしても、門番からしてアレか。この街の腐敗っぷりがよく分かると言うものだな」

「まさにそれですわぁ~。末端があれでは、城主もクソで確定ですわ」

「ちょ、ちょっと二人とも声が大きいでアリマスって」


 ミリーは焦りながら周囲を見渡す。

 雑多な場所であるからか、誰もこちらを意識しては居ないようだが、この怯えようだと余の思った通りの人物がレグザムの支配者なのだろう。


「気にするな。もしも何かあれば藤吉郎サルがなんとかしようて」

「ええ~。また俺様に面倒事を押し付けるとは……懐かしいですな! キキキッ」

「だろう? それはそうとこれは凄い、な」


 中央通路を歩くこと数分。目の前に突如として現れたのは、とても変わった巨大な円形の広場だった。

 

「う~むぅ、異世界の市場とは変わっておるのぉ! らせん状に市が立ち並び、それが下へと向かっているのか!? 面白い、おもしろすぎるぞ異世界!!」

「しかも見てくだされよ大殿、中央には演台みたいのがあるやんけ!」


 よく見ればらせん状の道を下った先には、闘技場と思える作りの石舞台がある。

 そこには確かに戦った後とも思えるカケやヒビがあちこちに見受けられた。


「うむ、これは面白いな。ミリーよここはなんぞ?」

「ここは中央武闘場といって、冒険者同士が戦ったり、罪人を処刑したりする場所でアリマス。あ、ほら。いま冒険者同士が決闘するみたいなのです」


 闘技場には直接道は繋がっていないが、そこへ通じる別の門が開き、中から剣士と見られる男二人が出てくる。

 一人は白人の男であり、もう一人は――


「――ッ!? お、大殿様。あれは妖かしの者ですかいな?」


 藤吉郎サルの動揺も分かる。なにせその姿はどう見ても人とはかけ離れている。

 顔は人よりもクマっぽく、例えるならクマよりの人間と言ったところか。

 特徴としては、頭の上部に生えているのはクマの耳だし、腕もクマのそれだが手のひらは人だ。

 

 膝までのズボンの下から見える足も、クマ毛が生え揃っているが、姿は人と思えた。

 そんな二人が何やら叫んでいるようだが、ここからでは聞こえない。


「なんだあやつは? まるでクマが人になったようだな」 

「あれは獣人じゅうじんという種族でアリマス」

「獣人? とすると人なのか?」


「なのです。その……ミリーの種族と同じ亜人と言われて、人族から馬鹿にされているでアリマスね」

「ふむ……異世界ならではの問題か。まぁ異邦人を畏れる輩も日ノ本にもいたから、似たようなものか」


 すると闘技場の真上に透明で長方形のモノが現れる。

 思わず藤吉郎サルと「「なんぞ!?」」と驚くが、そこに映し出されたものを見てさらに驚く。

 青枠が白人の男で、赤枠がクマの男と分かれており、にらみ合っている二人が大きく表示され、まるで宙にういているようだ。


「ほぉ! まるでそこで見ている臨場感よの!!」

「これはすげぇですぜ大殿!!」

「あれは映像魔法と言って、空中に二人が映し出されていているのです。その下に数字が書いてあるでしょ? それが対戦オッズでアリマス」


 ミリーが指し示す場所。そこにあったのは両枠の下で絶え間なく変わる数字。

 見れば白人の男の数字が小さく、クマの数字は大きくなっていく。


「オッズとはなんぞ? それにあの変わる数字は一体?」

「数字は教えた通りですが、オッズは賭けの倍率なのです。つまり今、クマの獣人さんが人気がないのでアリマス……」


 ふむと頷き見ていると、枠がぐるりと市場中を回りだす。

 そこへ民衆が財布やカネを放り投げると、数字もまた変わりだす仕組みだ。


 しかも面白いのが放り込んだ瞬間、何かの札が戻ってきている。

 どうやら賭け札のようだが、よく出来た仕組みよな。


「キキっ大殿様。異世界は凄いですわぁ」


 藤吉郎サルは楽しげに見つめており、余も「うむ」と言いながら別のモノを見つめる。

 それはミリーの豊満な胸と鎧の間に釘付けであり、その視線を感じたミリーが顔を染めて何やら言い出す。


「ど、どこを見ているでアリマスか!? だめですよぅ、こんな所でそんな事を考えるだなんて、信長はエッチィでアリマス」


 迫る映像に視線を泳がせながら、ミリーが頬を染めて胸元を隠すが、無駄にでかい乳が余計に自己主張をして、ムチリとあふれだす。

 が、隠せば隠すほどに、余としては目が話せないほどに魅力的だ。


 特に右の胸の先端の膨らみに、思わず生唾を飲み込むほどに食入りながらチャンスを狙う。

 あの膨らみを思い切り掴む。そうすればミリーがいかに騒ごうが後の祭りよ。

 そんな事を思っていると、枠がついに余の前を通過した瞬間、藤吉郎サルが興奮してミリーへと抱きつく。


「おお!? 痴女みてみろよ! 俺様たちが映っているやん!」

「あひゃ!? な、なにするですか、お猿さ~ん……って、キャアア!?」

「好機到来じゃあああ!!」


 ミリーが藤吉郎サルめに視界を遮られた瞬間、電光石火の動きでミリーの胸元へと手を滑らせる。

 その勢いのままに右胸の鎧の隙間へと手を押し込み、硬い膨らみ・・・・・を思い切りつまむ。


「あふぅん!? な、何するですか信長!!」

「ククク、もう遅いのだミリーよ……せいやッ!!」


 何をされたのかが分からないミリーであったが、ウサギみたいな柄の財布が空中を飛ぶのを見て「あああミリーの全財産があああ!?」と叫ぶ。

 ほどなくして、白い賭け札が赤枠より出てきて、「ミリーの全財産が消えたでアリマスぅぅ」と泣き崩れた。

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