第4話 入院生活

 入院生活でも私は他の患者に責め続けられた。

 何故かは分からない。タバコ臭いからなのかただ気に入らないからなのか。


 精神病棟というのは私の入院したところは集団での生活をしている。私には理由が理解できなかった。誰とも話したくない。


 そこの主のような人のご機嫌を伺わないといけなかった。うんざりだった。

 そんな時だった。


「あんなやつ放っておいて連絡返してくれればいいのにぃ」


 その声は看護師だった。私の妻とやり取りをしているような声が聞こえてきたのだ。私は監視されていて姿を見ながら嘲笑っていたのだろう。


 妻が来た時に問い詰めた。


「◯◯さんの浮気してるの? もう離婚するんでしょ?」


「そんな訳ないでしょ? 離婚しないよ?」


 私は妻さえ信用できなくなった。そして、もう誰も信用できなくなりこの病院から出たい。それしか考えることができなかった。


 そんな時にまた声が聞こえたのだ。


「私が悪いの……」


「大丈夫ですか!? お母さん!?」


 母の声がしたかと思ったら倒れた音と共に救急車の音が聞こえた。自分の母が亡くなったと思い、泣きながらご飯を食べた。


 その日の夕方母が姿を現し、今度は生きていて良かったと涙を流した。この時も自分に聞こえてくる声に疑問は抱いていなかった。


 しばらくしてからだろうか。あの時の上司の声が聞こえて謝れと言っている。監視カメラで見ながらそんなことを言っているんだろうなと思った。


 またあの時のようにベッドの上で土下座して謝った。「すみませんでした」と。


「あいつ何謝ってるの?」


 と声が聞こえた。私は何が本当の声なのかが分からなくなっていく。


 病室の前に一人の人がたっていた。二つ隣の部屋の人だ。疑問に思いながらも私は急いで自分の部屋に入り「えっ? なんだろう? ちょっと気持ち悪い」と怯えていた。


 次の週位だろうか。その人が亡くなったと言う声が聞こえた。また私のせいだと思った。そう言っている声が聞こえたからだ。


 その日から先生の回診があると毎回その人の親にあって謝りたいと話した。取り合ってもらえない。


「退院したんだよ?」


 それも信用できなかった。看護師にもその話は毎日のようにしたのだ。


 誰も信用できない中少し心を寄せていた人に相談したが、この人は別に謝りたいと思っていない。体の向きがどうのこうのと言い始めた。私が悪いと思っていないと。


 頭がおかしくなりそうだった。


 リハビリとして料理を作ったりするのに誘われて参加するとある人には「死ね」と言われ。「参加するなよ」と言われたのだ。これは幻聴ではないと分かっていた。耳元で言われたからだ。


 遊びに誘われると参加したが、何故だか文句を言われてしまった。一体何なのだ。私の何がそんなに気に入らないのだ。


 しまいには呼んでも看護師に無視された。目の前で「無視しようぜ」と言っていたのだ。絶望した私は妻へと電話した。


「違う病院に行きたい」


 それは何故かすんなりと受け入れられた。そして、親戚の知っている病院へ行くこととなった。


 私は地獄から生還したのである。


 今だにあそこは地獄だったと思っている。

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