魔法を科学的に説明する

 特にファンタジー系の場合、物理法則を越える力として、魔法またはそれに類する神秘的な力がよく出てきます。私の作品でも、たくさんありますね。

 このうち、いわゆる第六感的な、物理現象を伴わない力は一旦置いておくとして。


 ある種の花形である派手な攻撃魔法やなんやらについて、物理的な説明をどこまでしているか、あるいはするか。

 この辺りって、結構作者によって違うんですよね。

 こだわる方は徹底的にこだわるし、こだわらない人は全く気にしないし。


 ちなみに別の雑記でも書きましたが、現状人間が把握できている宇宙に存在する物質は、わずか4.9%しかなく、残りは観測出来てない。なので、魔法的な力が実は存在していたとしても、不思議はないと思ってます。

 なので、いったん魔法の存在の是非は置いておきましょう。


 ちなみに、魔法または異能力の類は、とりあえず確実に現代の物理法則の絶対原則の一つを、ほぼ確実に破綻させてます。

 言うまでもなく、エネルギー保存法則です。

 何しろ、人間が魔力とやらを使うだけで大爆発を起こしたりするのです。

 既存の物理学では、どう考えても破綻してる。


 ただしこれも、実は全くないとは言い切れないんですよね。

 分かりやすい例としては、核反応です。

 竜殺しでもやりましたが、1グラム程度を核融合反応させると、その威力はタンクローリー満載のガソリンの爆発力に匹敵します。

 これは、質量エネルギー変換が、通常の燃焼などの化学反応とは比較にならないほど強力なエネルギーを生み出すことが理由です。ちなみにこの質量が失われることを『質量欠損』と言います。

 核融合、あるいは核分裂が凄まじいエネルギーを生むのは、質量がエネルギーに変換されているためなのですが、この反応によって発生するエネルギーは、化学反応とは比較になりません。

 ちなみに広島に落とされた原爆は核分裂爆弾ですが、当然質量欠損が起きたことによって、あの爆発力を生んでいます。が、あれで失われた質量は、わずか0.7グラム程度だそうです。

 核反応の凄まじさが分かろうというものですね。


 魔力というのがなんであるかを明確に(科学的に)定義してる作品は、おそらく皆無だと思いますが、現在観測されていない、暗黒物質ダークマターあるいはダークエネルギーと一括りにされた中に、魔力と呼ばれうるものがある可能性は誰にも否定できません。

 そして、存在する以上、そこには質量あるいはエネルギーが存在します。

 原子で構成されるものではないでしょうから、核反応を起こすことはあり得ませんが、何かしらの作用を起こしうる存在である可能性は十分にあり、つまり魔法めいたことを起こすのかもしれません。


 ただ、それらは少なくとも現時点では観測されてない物質なので、言い換えれば例えば人に害を与えることはできません。少なくとも通常存在する程度の濃度では。

 よって、取り出したエネルギーを、さらに変換して例えば炎の嵐を起こしたり、衝撃波に変えたりとして攻撃魔法になったりするわけです。

 取り出されたエネルギーを変換するためのエネルギーも含めて発生させられるとほどのエネルギーを抽出できればいいわけです。


 これは言い換えれば、魔法というのは物理現象で説明ができる。

 もっというなら、魔法で物理法則を越えることは本来は難しいということを意味します。

 もっとも、あくまで現在判明している物理法則の話ではありますがね。

 とはいえ、大半の魔法は現存する物理現象で起こせることしかないでしょうし、つまり現在観測されていないエネルギー(魔力)を使って物理現象を起こしてるのが魔法ということになります。


 おそらくこれは、大半の魔法に適用できます。

 現状の物理法則でほとんど説明が不可能なのは、転移系くらいでしょうか。

 あれだけは、正直に言えば説明は完全には出来ません。

 まあ、ある地点からある地点に移動するとして、それをどこでもドアの様に空間を繋いだとかしか説明できず、空間を繋ぐってなんぞや、というのは確かかなり高次元まで踏み込んだ数学では説明可能とも聞いたことがあるので(うろ覚え)まあそのあたりで何とかなってるとしましょう、うん。


 なお、この理屈さえあれば、一応ステータスが存在する世界とか、レベルアップが存在する世界も説明は出来ます。

 もちろんそれを管理する『システム』が存在することは前提ですが。

 そのシステムを管理する存在が、そういう風に『世界を定義』してしまえばいいわけで。

 つまり、特定の行動(魔獣討伐等)を行うと、経験値が一定量溜まる。それによってレベルアップが行われたと判断したら、システムが本人の肉体に作用し、それこそ原子レベルで肉体を改造、能力を上昇させる、という具合です。


 能力の上昇というのは、言い換えるなら肉体の変化、つまり純粋な物理現象なわけですから、原子レベルで作用可能な力があれば、それを実現するのは不可能ではないわけですし。

 無論これは魔法にも同じことが言えて、例えば身体強化で一時的に人間の十倍の筋力を発揮するとして。

 普通に考えれば、そんな力を発揮すれば、人間の筋肉は確実にボロボロになりますが、筋肉を構成する物質の強度それ自体を変える(あるいは構成する物質自体を変換する)ことで強度を引き上げ、それを可能にすることだってできます。

 反動で苦しむケースもよくありますが。

 正直に言えばダメージそれ自体も物理現象なので、それらも解消してあげようよ、と思わなくないです(笑)


 ただ、これは前にどっかで話したかもしれませんが、そういう『システム』が存在するなら、そのシステムを統括する存在には絶対に逆らえないという事でもあるので、その時点でその世界はありとあらゆる意味で『箱庭』になるわけですが。

 これをテーマにしているのは多分、小野不由美先生の十二国記でしょうね。

 あれはホントに最後がどうなるのかすごく気になる。


 話戻して。

 そんなわけで、ファンタジー的な要素は、突き詰めると大抵は科学的に説明は可能な事象に落としこめるんですよ。

 なんせ魔法の言葉『現在観測されてないもので起きてる現象』といえばそれで終わる。魔力が認識されてる世界というのは、要するに現在地球で認識されてない『何か』が認識された世界であるというだけという説明ができるわけですね。

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