AIの発達による小説への影響

 AI関連の話が本雑記の記事にもありますが、それの創作小説を含めた創作および出版全般に対する予想です。

 が、多分予想や予言ではなく、ただの類推可能な未来図だと思うものです。

 つまり、時期は分かりませんが、確実に訪れる未来じゃないかと私が考えているものになります。


 まず一つ。

 おそらく、10年、下手すると5年以内に、おそらくコンテストの審査においてAIが全面的に導入され始めると思います。

 いわゆる『下読み』というか、いわゆる一次審査は、全部AIがやるようになるんじゃないかと。

 コンテストにおける運の話で、下読みの相性次第で当落がある程度左右される、と言いました。これは間違いなく事実でしょう。

 下読みやってる人だって人間。編集部コンテストから傾向の指示はされているでしょうが、好みなどはどうしても反映されるし、体調のいい悪いでも下手すると結果は変わるでしょう。そもそもあの作業はとても大変です。

 何しろ、カクヨムコンとかの場合、軽く1000を超える作品が審査対象です(読者投票を抜けた作品だけとする)

 ですが、人間の読むスピードは、速い人でも10万文字を1時間……早くても30分が限界でしょう。なので正直、ほぼ間違いなく全作品、全部なんて読んでない。

 というか、冒頭数話で選外と判定される作品なんてざらでしょう。

 カクヨムコンの選考プロセスは私はよく知りませんが、おそらく下読みの人が一定以上の評価をした本当にごく一部の作品だけが、まともに読まれてるのは間違いありません。

 そもそもコンテストは参加は無料です。

 ですが、実際には下読みの人や審査員への報酬、さらにコンテスト賞金とお金が結構かかります。

 下読みの人が何人いるか分かりませんが、無償ってことはないでしょうから(社員の場合はその社員の時間給を逆算すると)おそらく時給1500円以上。というか人に拠っては3000円とかあるでしょう。あるいは一作いくら、とかかも。

 カクヨムコン9の中間突破作品数が2000弱。参加してる出版社の数が相当なものになりますが、それでも相当な時間がかかってるのは間違いなく、正直コンテスト自体は赤字しか出ません。

 受賞作品が十万部とか売れれば……初めて黒転じゃないですかね。

 つまり、コンテストにかかるコストってのはホントにシャレにならない。

 そこで登場すると思われるのが、AIです。


 現時点でもAIで小説に点数を付ける能力があるように、編集が望むパラメータを付与されたAIが小説の一次選考を行うようになる未来は、おそらく遠からず来ると思います。

 AIであれば、判断に好みが入ることはありませんし、体調のいい悪いもない。

 文字通りデジタルに、設定したパラメータに従って合否を判定してくれる。

 そして何より、スピードが桁違いです。人件費もかかりません。

 サービス利用料は発生するでしょうが、どう考えても人を動かすより安いです。


 まあ、これには投稿者側にも多少メリットはあります。

 AIであれば、寸評を全員に配ることも可能でしょう。

 まあ、AIが書いた寸評が人を傷つけるようなものになっていないか、といったチェックを別のAIがやるとかあるかもですが、とにかく書評をもらえると、次への課題が分かるようになるので、それは意味があるでしょう。


 ただ、そのやり方が広まれば、何が起きるかといえば、確実に『コンテストの攻略法』が登場するでしょう。

 AIでいい点を取るための方法が、ほぼ確実に出回る。

 こうなると、いわゆるいたちごっこが起きる可能性も。

 もっとも、AIが用いられるのはあくまで一次審査で、二次審査以降は従来通り人間がやるのであれば、あまり意味はありませんし、AIの審査基準パラメータは非公開でしょうから、完全な攻略法はないでしょうけど。


 そして二つ目。

 おそらく上記変化と同時期に出てくるであろうものが、AIが作った小説。

 というより、今のAIイラストエンジンの、小説版。

 もちろん今も近いものはあるでしょうが。

 AIにプロットだけ渡して文章を作らせれば、AIが高い点を出す小説が完成するという事態すらあるでしょう。それも、人間が書いた小説なんて、ほとんど太刀打ちできないようなものが(一部の天才は除く)


 そうなるといずれ訪れるかもしれないのが、そもそもの『小説』の消滅です。

 売られるのが、下手をすると『AIに取り込むプロット集』になるかもです。

 なんせそれだけで(つまり本文がなくても)AIがそれを読み込んで面白い小説を書いてくれるわけです。全文を記述する意味がなくなる。

 もちろん、好きな人は書き続けると思いますが、それに需要があるかどうかはまた別の話になって、職業作家の大半(特に小説を書く人)はそれでは食べていけなくなるという事態もあるかも知れません。

 むしろ、人気のあるプロットデータを作れる人が人気が出るようになっていく。

 それすらAIに取って代わられる可能性は否定できませんが。


 そして厄介なことに、文章における『著作権』はイラストよりさらに曖昧です。

 現状でも、イラスト生成のAIは色々な人の絵を読み込んで学習して絵を描きますが、やはり絵には一定の『癖』が存在します。

 極端な事例ですが、ゴッホの絵と、鳥山明先生の絵は、全く違うでしょう。それを間違える人はいません。

 ですが、文章は基本文字だけ。

 もちろん、言い回し等に特徴がある人はいたとしても、その特徴のわかりにくさは絵とは比較になりません。

 そして基本的に文章は、それなりに似たものになりがちです。

 絵とは異なり、読みやすさを追求するとある程度の『お手本』が存在しますからね。

 無論細かい書き方の癖などは在るでしょうが、かといって唯一無二のオリジナリティを文章で示すのは、至難です。


 参考までに。

 以下は竜殺しのとある一説です。

 片方は本文コピペ。片方は同じ内容を、あえて違う書き方をしてみたものです。

 そして三つ目は、一つ目をChatGPTに読ませて、『短くしろ』としたら出力された内容です。


=======================

 突然、耳が破裂したかとも思うほどの轟音が響いた。

 それが、目の前の竜が嘶いたと気付くまでは半瞬。

 大気そのものを圧するかのような重圧すら感じるほどだが、コウは耐えきった。耳鳴りこそすれ、平衡感覚を失うほどではない。

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 竜が巨大な咆哮を上げる。耳が潰れるかと思ったが、そんなことはなかった。大気すら歪んだように思えても、耐えられないほどではない。

=======================

 突然、耳をつんざく轟音が響いた。目の前の竜の咆哮だと気づくのに一瞬とかからなかった。大気を圧する重圧を感じながらも、コウは耐えた。耳鳴りはしたが、平衡感覚は保っていた。

=======================


 私が書く文章なので、雰囲気は似てるでしょう。

 ですが、見た目は見ての通り全然違う。

 これはどちらも私が書いたものに間違いありませんが、その特徴を抽出しろといわれてもおそらく無理でしょう。

 なんなら、本文を下段のものに差し替えても、おそらく誰も気づかないと思います。

 これはAIが書いた文章ではもちろんありませんが、多少言い回しが変わったところで、大抵の人は気付かれない。つまりAIが全部書いたとしてもまず気付かれませんし、著作権を確立するのは至難でしょう。

 そして、AIのそれは大分テイストが変わりましたね。というか、私は『~た』という表現をここまで連発することは基本しないので、そういう意味では、ChatGPTはまだ文章生成AIとしては人間には敵わない部分があるのかなとは思いました。


 しかしいずれは、いわゆる『小説ジェネレーター』みたいなAIが出てきたら、プロットさえあればいいとなる。

 さらに言えば、そもそも長い小説を読まなくなる可能性すらあります。

 現状でも、『映画の要約』や『ビジネス書の要約』なんてのが、実際にすでにサービスとしても提供されています。

 それは言い換えれば、製作者がその持てる表現技法などを駆使して作った作品を、全く見ないで『内容またはあらすじだけ』見れればいい、という風潮がすでにあるという事です。

 それはもう『読みやすい』とかそういう次元ですらなく、文字通り内容『だけ』を摂取する行為。これもいわゆる『タイパ』重視の結果なのでしょうが……もうそうなると、何の意味があるんだろう、という感じですね。


 多分本の衰退はこれらの事情が複雑に影響した結果だと思います。


 ちなみに近いことを、ドラマ仕立てで書いてる方がいて、それが以下です。


 タイトル:読め

 作者:1103教室最後尾左端 様

  https://kakuyomu.jp/works/16817330669579188489


 興味があったら是非お読みください。

 こんな未来はない、とは言い切れない凄まじい内容です。

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