フルダイブと時間加速
最初に言っておきますが、これは別にVRMMO系の創作をどうこう非難するつもりは全くありません。
ただ。
あれによく出てくる技術が本当はすごい、ある意味では夢の技術だということを書いておきたいだけです。
VRMMOネタの大半は、いわゆるフルダイブ式、つまり全身の感覚のほとんどをゲーム内の感覚に入れ替えてプレイするゲームを描いているかと思います。
昔からこの手のは定番でしたが、ラノベ業界で最も有名な作品は、ほぼ間違いなく『ソードアートオンライン』でしょう。
この全身の感覚を電子的にとらえて機械的に再現する技術というのは、現在も研究は行われています。
ただ、人間の脳はまだまだ未知の領域。
それに、例えば同じ『手を上げる』という動作でも、人に拠って脳で発生させる電気信号に違いがある可能性もあり、脳だけで制御は難しいという話もあり。
神経の伝達まで全て捕捉してしまえばあるいは、ですが皮膚の下に流れるかすかな電気信号を確実に捉えるのは難しく、まだまだ夢の技術でしょう。
(訂正)すでに存在するパワードスーツは、神経伝達信号をキャッチしているとのこと。つまり、四肢の動作信号をキャッチすることは、すでに実現できているようです。
それはともかく、この研究がなんで進んでいるかと言えば、大抵の人はご存じでしょうが、もちろんゲームの為ではありません。
主な目的な医療です。
この手の話が出る前からありますが、腕や足を事故で失った人に対して、機械仕掛けの義手や義足をつけて、さらに神経から来る信号を受信して思い通りに動かせるようにする。少し前だと『サイボーグ』と呼ばれた技術です。体の一部、機能不全になった部分を機械化して代替する技術ですね。
あるいは、例えば全身の筋肉がやがて動かなくなる難病、
また、それ以外にも、人間の神経伝達の信号を機械的にキャッチできれば、例えば『どこが痛い』という情報を、患者の口からではなく機械的に表示することもできるようになるので、より正確な診療ができるに違いありません。
なので、よくあるフルダイブ技術が実現した暁には、医療は劇的に進歩することになるでしょう。
また、体が動かない病気といったものになって文字通り一歩も動けなくても、世界の広さを『脳の中で』体感することができるようになります。
病気を患って入院しているしかないとしても、仮想空間で友人と会うことも遊ぶこともできるようになる。
まさに夢の技術です。
実際、ソードアートオンラインでは、ある病気の末期状態でもう出歩くことすら不可能な少女が、フルダイブ式のゲームで遊んでいるという話がありました。
フルダイブ式の実現というのは、そういう意味で体の欠損、あるいは麻痺などのハンデすら乗り越えられる社会の実現を可能にするものです。
ただ、こちらは医療分野や治療において画期的になるだけで、社会構造が大幅に変わるかと言えば、使い方次第でしょう。
まあコロナ禍みたいなことがもう一度起きたら、もう仮想空間だけで、という話も出るかもですが、
ただ、もう一つの方が影響が大きい。
フルダイブ型のVRMMOゲームの話で、ゲーム内の時間を実際の何倍にもしてしまう技術があることがあります。
アニメ化されたので私が知ってるのだと、『ソードアートオンライン』ではアリシゼーション編で実現され、同作者の『アクセル・ワールド』、あとは『痛いのは嫌なので防御力極振りしました』などでも再現されてます。
まあ実際、ゲームネタをやる場合に、ゲーム内で場合によっては何日もかかる様なイベントをやろうものなら、現実と同じ時間が過ぎてしまえば、まあ確実に身体に変調をきたします。
実際、ソードアートオンラインの最初のアインクラッド編では、実際彼らは生命維持のために病院に収容されていました。
生命維持に問題はないようなポッドがあったとしても、現実時間で三日間、ゲームだけして過ごすというのは、普通に考えて問題があるでしょう。
これを解消するための方法として、この技術があることになってます……が。
アクセル・ワールドでは、これはあの話の根幹にある『ブレイン・バースト』というゲームをインストールしているごくわずかな人間だけに与えられた特権でした。
まああれはソードアートオンラインと時間が繋がってるという説もあるので、アリシゼーション編で作られた技術が流用されているのかもしれないというのはありますが……逆にいえば、当該技術はほとんど開示されていないということになります。
実はこの『ゲーム内の時間を現実よりはるかに早くする』技術は、文字通りの意味で世界を一変させる技術です。
まあちょっと考えればわかるわけですが、例えば『アクセル・ワールド』のように、思考時間を一千倍に加速できるとしましょう。
ゲーム内の時間が現実より早くなるというのは、思考時間が超加速されるのと意味は同じですからね。
そして、その状態でも、コンピューターを扱うことはできるわけです。
つまり、パソコンを使ってやれる作業は全て行える。
言い換えれば、物理的な仕事以外の全てを、今までの一千倍こなすことができる、ということになります。
つまり、この技術を使える人とそうではない人の、あらゆる作業時間の効率が、どうやっても一千倍開くということになります。
カクヨムの書き手、というかほとんどの電子媒体での創作者にとっては、夢の技術ですよ。
なんせ、現実の十分が一万分≒百六十六時間半≒七日です。
脳はそれだけ連続で稼働してられないから、仮に眠らなければならないとしても、体の代謝は十分しか経たないとすれば、七日間全て、食事その他を一切気にせず作業に割り当てることができます。
しかも現実で経過する時間はたった十分。
どんな遅筆の作家でも、超スピードの作家に早変わりですね。
ネットを利用しての調べ物もやり放題でしょう。
まあ当然これに留まらず。
この技術が当たり前になってしまうと、人間の『働ける時間』が激増します。
まあプログラムとかそのあたりはAIに取って代わられている可能性が高いですが、だとしてもAIにどういうのを作らせるかを考えるのは人間がやるでしょう。
そしてその「考える」行為ですら、一千倍の時間でやれば、一分でも十六時間以上。たった一分でアイデアがたくさん出て、そのアイデアの資料を作って、ということが可能になります。
ぶっちゃけ言えば、『時間』というものに対する概念が変わってしまうでしょう。
普通は丸一日かかる様な仕事を『一分で終わらせろ』というのが冗談にならなくなる。労働の在り方すら変わる。
それが、『思考時間加速』の世界です。
ゲーム内でしかできないなんて技術のはずはなく、正直、どういう社会になってるか、私も想像できません。
以前、現代ファンタジーで多いのがVRMMOネタだとは言いましたが、フルダイブが実現してるだけで医療現場の在り方や、社会における人間の在り方が大幅に変わるのは間違いありません。
そして、思考時間加速がある場合、正直今と同じ社会である可能性は、絶対にないと断言できます。
それこそ、『アクセル・ワールド』のようにごく限られた、しかも大人ではない子供たちの専有物でない限りは(だからあの世界観は本当に上手くデザインされてるとは思います)
まあそんなリアリティ求めても、という説はありますけど。
でもせっかく想像だけで色々書けるなら、やはりある程度は『本当っぽい』話にした方が面白くはなると思ってます。
この辺りについては、まだ『ダンジョンモノ』の方が幾分扱いやすいでしょう。
まああっちはあっちで、色々見ると気になるところはあるのですが。
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