治安維持の問題
VRMMOモノの難しさ書いたので、よくあるダンジョンモノを含めた現代ファンタジーの難しさも。
本雑記の『異世界モノの難しさ』でもちょっと触れた、治安の問題が関係してきます。
今回対象とするのは、ダンジョンモノをはじめとした現代または現代に近い時代が舞台で、かつ武器(特に銃器)が登場する作品です。
言うまでもなく、現代で武器を日常的に持ち歩く人はほぼいません。紛争地くらいでしょう。
ただ、ダンジョンが出現したとかその他の理由で、武器の所持が解禁されてる作品もあるでしょう。その場合、その扱いについては特に注意しないと、作品の世界観が陳腐なものになってしまう恐れがあります。特に日本を舞台にしている場合。
日本は世界でも有数の治安の良さを誇りますが、その最大の理由の一つは、銃砲刀剣類所持等取締法、通称銃刀法の存在です。
これにより、特に銃器の扱いは極めて厳格に制限され、一般人が持つことはほぼ不可能になっています。
実際、銃器の危険度というのは言うまでもないと思いますが、あれの何が危険かといえば、簡単に人を殺傷できる点です。
引き金を引く、という単純行為で、亜音速の弾丸が射出され、当たり所によっては即死します。
銃器の登場により、人を殺傷するための『訓練』の難易度は劇的に落ちました。
もちろんよく言われるように、銃身の短い拳銃で長距離から人を狙撃するのは至難です。訓練を全く受けていない人であれば、十メートル程度の距離でも、人に命中させるのは難しいでしょう。
ただ、訓練を受けていれば、言い換えれば練習さえしていれば、その限りではない。現状日本ではそんな訓練を受けているのは、警察官とか自衛官くらいです。あとは稀にいる猟銃許可証持ちや射撃競技の人くらいでしょうか。
なので問題にならないわけですが……。
銃を一般人でも所持できるアメリカなどでは、普通に街に射撃場があって、日常的に訓練もできます。なので、日本の警察官並の技量を持つ一般市民が普通にいる。
観光で行った人が体験したりするケースもよくあるそうですよ。
ただ、そのアメリカでも、拳銃を日常で持ち歩くわけではありません。
というかそんなことをすれば、即座に警官に囲まれます(バッグの中とかに入れておくならともかく)
これは結構前に見たのですが、拳銃をただ見せびらかしてある場所に佇んでいた男性がいて、危険だと判断され警察数人が銃を突き付けて囲んだ映像がありました。
その男性はおそらく銃を捨てろと言われてたのでしょうが、捨てることなく歩き出そうとした瞬間に警官で銃に撃たれてました。
銃を(地域によっては免許が必要だが)自由に所持できるアメリカでも『所持』と『携行』は全く違うんです。
アメリカの銃は、あくまで『自衛』のためにありますから。
じゃあ実際そんなこと、つまり『誰もが武器を携行するのが当たり前』な状態になすればどうなるかと言えば……まあほぼ確実に世紀末救世主伝説の世界にご案内かと。
なんせ誰がいつ銃をぶっ放すか分からない状態が日常になります。
異世界モノで、誰もが攻撃魔法をいつでも簡単に使える環境と同じです。
先日も、秋葉原で女性がナイフを振り回して男性数人を負傷させた事件が起きましたが、あれが銃器で、場合によっては拳銃ですらなく、もっと強力な銃で行われるんです。
数人負傷どころか、下手すると数十人死傷コースです。
お互い銃を持っていれば抑止できるというなら甘い。
目の前で撃たれて、即座に反撃できる人間なんてほとんどいません。
というかそういう人ばかりの世界なら、やはりそれは北〇の拳の世界です。
実際アメリカでは、稀にこのレベルの事件起きますよね。
日本でこれが起きないのは、銃器はもちろん、殺傷能力の高い大型の刃物すら所持が制限されているからにほかなりません。
もちろん、ほとんどの日本人はそんなことはしません。
というか、日本人に限らず、ほとんどの人々はそうでしょう。
ですが、百万人に一人、そういう人がいるだけで、社会の安全性は大幅に失われます。というか、治安が壮絶に悪化します。社会がとてもギスギスしたものになるでしょう。
特に日本の場合は、ほとんどの人がそんなことをしないという安心感と、そんなことをしても警察がそれらに対して、拳銃所持という絶対的なアドバンテージを持っている抑止力としての信頼感があるから、安心していられるわけです。
アメリカでも、『携行』は基本警察にマークされるわけですが、もしそれが平然と持ち歩ける状態ってのは、要するに西部劇の世界です。ならず者がいつ襲ってくるか分からない不安な世界。
あの時代、それでも社会が成立したのは、守るべき領域(街)が小さかったからというのはあると思います。街に住む人はほとんどが顔見知り。つまり信用できるから、安全だった。だから外から来た人に対しては警戒するわけですし、何かあった時に対抗するために、銃を携行するわけですが。
アメリカで銃器の所持がいまだに禁止されないのは、あの時代の『自分の身は自分で守る権利』を重視しているからというのが理由の一つですからね。
だから、家に置いてある分には咎められることはないわけですが、持ち歩く=使うつもりがあるという場合は別。
街中で使える状態で出すというのは、現在のアメリカでも許容されるわけではないんです。
ちなみに私は子供の頃四年弱ほどブラジルに住んでまして。
ブラジルも許可さえとれば、銃器の所持が認められる国でした。
ただ、アメリカより厳重に管理されていたようで、銃声を聞いたことは……まあ、二度ほどありましたが、大きな事件にはならなかったと聞きます。
基本、ほとんどの人が持ってない社会でしたからね。
ちなみにリオデジャネイロです。
ただ、時々貧民街で警察と住民の銃撃戦はあったらしいですが。
ただ、ブラジルに新婚旅行に行った時も、街中では基本的に最大限警戒してました。
ちなみに、腕時計とかは外しておくのは基本です。携帯電話も出しちゃダメ。高そうな指輪もダメ。盗られるから。
腕や指ごと持っていかれることすらあるそうです(さすがに滅多にないが)
あと、父が言ってたのですが、幹線道路(車しか通らない広い道路)で信号の一番前に停止するのは絶対に回避すべきだそうです。
いきなり銃を突きつけられて、降りろ、とされて車を奪われる事件は珍しくないそうですから。
なので、現代社会で『武器の所持・携行を解禁』し、かつ『持ち歩いているのが当たり前』などとなった瞬間に、その世界は北〇の拳の世界にほぼ直行便になってしまうと思います。
少なくとも、今の日本のように平和な感覚でいたら、命がいくつあっても足りません。マフィアがはびこる暗黒街くらいは覚悟すべきでしょう。
ただしこれも、もちろん抑制手段は色々あります。
一番簡単なのが、武器が使えるのは特定環境(ダンジョン等)に限定されている、という設定でしょう。この場合の限定は、任意ではなく強制でなければなりませんが。
つまり通常社会で武器を使おうとすると、武器がなまくらとなる、あるいは発射できないというようなギミックがあればいいわけです。
ちなみにこのギミックは、逆にストーリーのフックにも使えます。
つまり、一般社会で制限されているはずの武器が使われたケースが起きて、それが実は何かの陰謀を企んでいる人たちの仕業だ、といったややミステリー仕立ての話など。
あとは、武器の所持は出来ても、武器の管理が徹底されてて、利用可能な環境以外での武器の携行が認められていないパターン。例えばダンジョンに入る時だけ武器が渡されるなど。
これは上記よりやや弱い(武器が持ち出されてしまうこともある)ですが、まあ基本みんな持ってないはずだから、治安悪化は防げます。
魔法のことに言及した際も書きましたが、この手の話はうっかりすると本当にリアリティを失うので慎重にしてほしいところ。
それらが解禁されているということは、それらを使うための精神的なハードルがとても低くなっているという事実を、忘れてはなりません。
社会が成立するには、最悪の人間がいてもある程度抑止できることが条件だと思ってます。
そこが甘いと、私は結構興醒めしてしまいます。
ファンタジーがいくらご都合主義でも構わないのですが、現実の延長線上の整合性が適当だと、とたんに陳腐に見えてしまうので。
まあ私がこだわりすぎなのかもですが。
拙作の話にすると、『絆~』がこれに該当しますが、
横浜は実は銃器の所持はかなり制限されてて、出入りの際にチェックされるようになってましたし、一般には銃器の所持は認められていません(オートチェックの場面がありますが)
ただ、藤沢は名目上
ちなみに、魔法が抑制されてて、銃器がないのであればそこまでは問題にはならないとは思います。
通常武器だけれあれば、振り回すのにもそれなりの訓練が必要になってしまいますからね。銃器と違って、予備動作等、防ぐ手段は色々出てくるので、そこまでは。
例えば酒場などでは入口で武器を預かる、といった軽い対応をとるだけで、格段に安全度は増すでしょう。日本で言えば、廃刀令前の状態でしょうか。武士が刀を持ち歩いているからと言って、突然斬られることは……なくはなかったですが日常ではないですしね。
生身でも強い冒険者などが出入りする酒場だと、それ専用の用心棒などがいるのは普通でしょうし、そういう感じで物語にするのも悪くないかと。
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