嫁コン分析 後編
というわけで、中間選考の落選作品いくつかと、通過作品いくつかをざーっと読ませていただきました。
勝手に参考にさせていただいた方もいますので、中間選考を突破できなかった作品については、タイトルは伏せて、とりあえず私なりに考えた当落の条件を考えてみました。
多少応援マークつけたりもしましたが……感想はこれ見て『もしかして自分の作品読んでた?』とか気付いた方は連絡いただければ詳細な感想もお届けします(気付く人いないと思うけど)
落選したというフィルタが前提にある読み方をしたのは否めませんが、中間選考突破作品と比べると、少なくともこの『嫁コン』においては落選してしまうに足る理由があるのかな、と思う要素が少し見えた気はしました。
逆に言えば『嫁コン』という限定要素故に中間選考で選外になっていても、作品としての面白さは全く別だと思わされました。
以下、いくつか(合計20本近く)読んでみての私なりに分析して思ったことです。
●提示されたテーマに達していない作品
本コンテストは、明確に一定のエピソードを求められています。
少なくとも、コンテスト側の仕様で求められた話である『嫁入りからのセカンドライフ』『周囲に認められていく、あるいは溺愛される主人公の人生』が、確実に始まると分かるところまでは書かなければ話になりません。
それが出来てない作品は、相当に出来が良くても中間で弾かれていると思います。
最低限、指定された要素がある、または終了後に確実に期待できるものでなければ、問答無用で落選となっていたのではないでしょうか。
中編とはいえ、最大六万文字です。
ただ、この点に関しては実は『これから始まる』ことが明確に見えてきそうであれば突破している作品もありました。どう考えてもまだ途中だと思われる作品とか。
ただそれでも、この先幸せな日常があるんだというのは(ほぼ明確に)期待できる作品だったので、そのあたりで評価されたのだと思います。
ただ、これに関しては実はそこまで達してなくても中間選考を突破した作品というのはありましたので、中間選考に限るならそこまで重視されてないかもしれません。
●結婚前後でのキャラクターの立ち位置の条件
前述したものに近いのですが、おそらくこのコンテストで求められた前提条件に、『結婚までは不遇だった』ということが挙げられる可能性が高いです。
中間選考をパスした作品は、いずれも結婚前はそれほど注目されていない、あるいは自分の家でさほど重視されてない等、扱いが軽い(かつそれを本人もそれほど不満に思っていなかったか受け入れていた)、または家ではともかく社会的には不遇または悪し様にされていた、という作品が多かったです。
逆に、落選作品のいくつかは、結婚前の状況でも、客観的に見て不遇とは言えず、結婚先で重宝される展開になってはいますが『結婚していなくてもそれなりに報われる/楽しく生活できる日常が続いただろう』と思える話が多かったです。
いわば、『結婚』によって自分の状況を変える必要性がないというか。
このテーマ自体は提示された応募要綱からは推測は可能でも明示されていないものではありますが、エンターテインメント作品として考えた場合、結婚前後での違いを際立たせることによって、読者に爽快感を与えることを目的としている『嫁入りからのセカンドライフ』だとすれば、『結婚しなくてもよかったんじゃないか?』的な作品は選外にされた可能性はあります。
もしかしたら、最重要ポイントはここだったのではないかと思いました。
●ストーリーの整合性
私が読んだ範囲ですが、六万文字というのは短いようでそれなりに長いです。
つまり、それなりに伏線やらを張り巡らせることは可能です。
しかし一方で、長編(十万文字超)の作品のように壮大な話は作りづらい。
その中でどういうものを話の『主軸』として用意するかが課題になります。
突破した作品はいずれもこれが、序盤に提示された情報が終盤で紐解かれたり伏線として回収されたりしていることが多い印象でした。
また、それらの提示も不自然ではなく、ちゃんと読者が『何かありそうだな』と印象を持ち続けるような進み方をしています(完結してない作品などは得に)
そういうストーリーの整合性というか、つながりがある作品が、突破しているのではないでしょうか。
●参考にした作品(中間選考突破作品のみ)
参考にした中間選考突破作品は以下になります。作者名は敬称略とさせていただいております。ご了承ください。
ちなみに魔女工房の後の二つは、中間発表前に読んでいて、私も面白かったなー、と思った作品でした。
参考にさせていただいた、中間選考で残れなかった作品については、いったん伏せさせていただいています。
私がこっそり足跡とか残したりしてますが。
もし本記事を元にした寸評などが欲しい場合は言っていただければそちらに書き込みに行かせていただきますが、文字通り『落選理由』も書くことになりますので、そのつもりでいてください。
〇聖良の魔女工房運営記(自分のですが)
(和泉将樹/現代ファンタジー)
https://kakuyomu.jp/works/16817330661627349172
〇聖女と公爵様の晩酌〜愛する必要はないので、飲み友達にはなりましょう〜
(夢生明/恋愛)
https://kakuyomu.jp/works/16817330660264218458
〇皇帝陛下の幼妻ーお前は皇妃という名の人質だと言われましたが、お飾りなんかイヤなんですっ!ー
(豆渓ありさ/恋愛)
https://kakuyomu.jp/works/16817330663472288754
〇恋の魔法は使えないけれど、枯れた遺跡を復活させる魔法は任せてください!
(日埜和なこ/恋愛)
https://kakuyomu.jp/works/16817330663666953898
〇銭湯のおかみさん~物の怪銭湯奮闘記~
(さいとう みさき/現代ファンタジー)
https://kakuyomu.jp/works/16817330659180410632
〇冷え切った夫婦のはずですが、未来からやってきた娘が「お父さまとお母さまはとってもラブラブです」と言っています
(八色 鈴/恋愛)
https://kakuyomu.jp/works/16817330651737806248
〇呪われ王のかりそめ妃
(八色 鈴/恋愛)
https://kakuyomu.jp/works/16817330663110658536
●結論
というわけで結論ですが。
少なくともストーリーの方向性を強く指示される中編コンテストの中間選考突破の条件は『指定されたストーリーにどれだけ近い話を書くことができるか』に尽きると思いました。
無論その先には、その上でさらに面白さ、オリジナリティ、魅力的なキャラクター、先を期待させられるストーリーを提供できるかというハードルがあるわけですが、おそらく中間選考時点で求められるのは『求めたストーリーに適合してるかどうか』の一点のみである可能性が高いです。
中間選考の突破率が25%という、他のコンテストに比べて異様に高いことも、根拠になります。
つまり、ほぼ『機械的に』条件を満たしているかどうか『だけ』が選考基準の可能性は高い。
言い換えるなら、条件を満たしている作品だけが、まともに中身を審査されるので、本当の審査はむしろこれからだと思います。
まあ、あまりに出来が悪い場合はその限りではありませんが、読ませていただいた中間選考の突破に至らなかった作品には、コンテストの主旨を考えずに一つの作品として見た場合、出来が悪いと言い切れるものは、一つもありませんでした。
ただ、特定条件『だけ』が突破条件だとした場合、選外とされる判定が可能だとは思えました。
私が読んだ範囲だと、結局以下の条件をクリアしてるかしてないか、というのが当落の判断基準になった可能性が高いと感じています。
① 結婚前の状況
結婚前に報われない立場、あるいは不遇な状況(家・社会どちらかあるいは両方)に主人公があること。
② 結婚後の状況
結婚後に、本人は大きく変わらない、あるいはいつも通りにしていても、周囲から自然に認められる、あるいは愛されていくようになる。
あるいはそれがあり得そうな未来として提示されている。
ちなみに完結してる必要はない感じでした。
実際、中間選考を突破した作品には、上記条件はクリアしつつ、完結してるとはいいがたいもの、あるいは明らかに途中だと言い切れる作品があったので。
ちなみにどちらかというと、重視された条件は①という気がします。
要するに結婚と前後して状況が変わるのを楽しめるのが、最重要だったのかと。
●追加分析~今後の中編コンテスト対策
こう言っては何ですが、プロ作家というのは望まぬ話を書かなければならないことも多いと言われます(本雑記の一本目『職業作家の難易度』の最後の辺り参照)。そしてこの中編コンテストは、それに近いことも求められている気がします。
言い換えれば、『このテーマは自分の作風に合わないな』と思ったら、応募は見送る方がいいのでしょう。無理矢理解釈して、作品を作り上げても、よほどずば抜けた出来栄えではない限りは(あるいはそうであっても)落選する可能性が高い気がします。
あとおそらくですが。
少なくともこのコンテストと、それからほぼ同時期に少しだけずれてやってた『世界を変える運命の恋』コンテスト。
多分、募集側が想定しているストーリーの
嫁コンは『わたしの幸せな結婚』(顎木あくみ著/富士見L文庫)、運命の恋コンは『贄姫と獣の王』(友藤結作/花とゆめ)じゃないかと。特に前者はほぼ確信できるレベル。
どちらも2023年にアニメが放送されているので、ご存じの方も多いでしょう。
おそらく、この作品に類似する新しい作品を求めていたのではないかと思いました。ぶっちゃけ、『わたしの幸せな結婚』がテーマが求めてる話の
それもあって、そういう『話』が、中間選考では重視されたのではないかと思います。
ただ、前述の二作品はいずれもかなりの長編。
さらにこのコンテストでは、それを中編規模にきれいにまとめられることも条件だったんでしょう。だから、求めるストーリーラインまで話が達してなければ、選外にされたのでしょうし。
●但し書き
この一連の記事はあくまで私の推測に過ぎません。
中間選考を突破した作品と落選されたのいくつかの作品を比較しての推測ですので、全く的外れである可能性は否定できません。
なので、前編にも書きましたが、これに従えば自分の作品は中間選考を抜けたはずだ! と言われてもそれにお答えすることはできませんので、ご了承ください。
ツッコミは程々にしていただけると幸いです(逃げ)
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