嫁コン分析 前編

 さて。

 先日中間選考が発表され、私の『聖良の魔女工房運営記』も運良く……というと不快に思う方もいるかもですが、個人的には運良くという感覚で中間選考は突破しました。

 いや、ホントに規定レギュレーション違反の可能性、低くないと思っていたんですよ。異世界じゃないし。ほぼ現代社会そのままだし。不思議世界に行かないし。

 まあ中間選考抜けたのなら、そこは大丈夫だったということでしょう。


 今回の『「嫁入りからのセカンドライフ」中編コンテスト』の応募要項は以下。

 https://kakuyomu.jp/contests/kadokawabooks_suddenmarriage/detail


 まあ文字数とかの規定はともかく、このコンテストでは内容が極めて細かく指定されているのが特徴です。

 たとえば、ほぼ平行で実施されていた『MFブックス10周年記念小説コンテスト』では、究極的には内容の制限はほぼありません。『長編ファンタジー小説(異世界ファンタジー)を募集』とだけ書いてあります。

 まあ実は、エントリーするにはカクヨム上のジャンル設定が『異世界ファンタジー』じゃないとできなかったんですが。ただ、エントリー後にジャンルを変更することはできたようです。

 まああれは文字数の規定すら曖昧でしたが。


 が。

 この『「嫁入りからのセカンドライフ」中編コンテスト』(以下嫁コン)では、内容が非常に細かく指定されています。

 それぞれ、条件を読み解いてみます。


◎カドカワBOOKS読者ターゲットの30代~40代女性が楽しめる作品

 何気にかなり大きな制限。つまり若い人(大学生以下)は対象としてません。

 言い方を変えると、結婚したばかり、または子育ての真っ最中の女性、またはバリバリ働いている女性がターゲットです。

 またこれが、制限の一つとおそらく密接に関係しています。


◎主人公・視点キャラクターが女性の作品

 これ実は、主人公が女性なら視点キャラ男性はありなのかどうか。

 それによっても結構違いますね。

 まあ普通に考えたら、女性主人公で女性視点の話にするでしょうが。


◎嫁入りしてからの主人公の行動・活躍を楽しめる作品

 とっかかりがまず『嫁入りする』というストーリーであることが前提。

 そして嫁入りして終わりではないということ。

 文字数の制限から、恋愛の過程を書いていたら、ほぼ規程文字をオーバーします。

 ⇒ とにかくまず『結婚する』というイベントありき

 ⇒ 主人公が『らしく』活躍するのが必須

 もう一つが、『嫁入りして』という点。

 つまり結婚前後で大きく主人公の行動・活躍の度合いが変わることが前提なんです。元々実家でも活躍してたけど、結婚してそれを活かしてさらに……とか、実家で頑張っててそれなりに幸せだったけど……みたいのは多分この条件を満たさないことになります。


◎ヒーローや周囲に認められたり、溺愛される作品

 まあこれは一つ前の条件満たせば大丈夫でしょう。


◎悲恋やバッドエンドではなく、優しく明るい気持ちで読める作品

 これもまあ、前二つの条件満たせばたいていは自動的に達成される条件かと。

 まあバッドエンド好きの人には大きな制約かもですが。


◎異世界での嫁入り(王族、人外、魔法使いなど)の物語

 現代であり得る設定は認めない、という規定です。

 ただし、異世界といっても不思議要素(魔法とか)が必須というわけではない。

 これのキモは、おそらく『現代の延長線上の話はNG』という意味かと。

 注意書きで『現代世界での婚姻もの(ヤクザ、サラリーマン、社長など)はNG』とあるので、どんなに荒唐無稽でも、現代であり得るような話はダメといわれてます。

 つまり、『絶対にありえないような話』が前提。

 これは言い換えれば、ターゲット層にとって、『あり得たかもしれない物語』ではなく、あくまで『幻想の世界のお話』を提供することが前提なんだと思いました。


◎長期連載が可能

 まあこの条件はその後の商用展開考えたら当然の条件でしょう。


 応募要項から読み取れる『条件』を集約すると、今回のコンテストで求めらていたのは、以下の様な話だったと推測されます。


1.女性が結婚を機に環境が変わって、自身の能力を開花させ活躍する

2.結婚前後で主人公の周囲からの扱いが良い方法に変化する

3.ハッピーエンド、または未来に希望が持てる話

4.現実では絶対に起こりえない話


 ここで注目なのは、実は『恋愛』は必須ではないという事実。

 一般的には『結婚=恋愛』ですが、よく見るとそこは必須ではありません。

 『認められたり、溺愛されたり』とあるから、片方だけでもいいのです。

 重視されてるのは、主人公の女性の生き生きとした活躍です。

 極論、例えば貴族に嫁入りしたけど旦那がヘタレ過ぎたから、主人公が頑張って領地を立て直して周囲に認められる話(かつ旦那は空気)は、要件を満たしています。

 まあそれが評価されるかはまた別ですが、斬新ではあるでしょう。


 要は求められているのは、環境の変化後に自身の力で認められている姿を見て、読者層が楽しめる作品といえるでしょうか。

 ターゲットになっている読者層は、既婚者も相当多いでしょう。

 そういう人たちに向けて、言い方は悪いですが『結婚してから成り上がる』姿を見せて楽しくなってもらいつつ、それが『現実では絶対にありえない』世界観であるため、完全に自分に投影することはない話が、今回のコンテストで求められている話ではないかと思いました。

 あれですね。女性向けのアドベンチャーゲームと同じです。

 アンジェリークシリーズとか、ややマイナーだと『天下統一 恋の乱』とか。


 以上が、私が『聖良の魔女工房運営記』を書く前に考えたことでした。

 正しくは応募要項見て『こういう話が欲しいんだろうなぁ』と考えました。

 ぶっちゃければ『現実であり得ない話』ならいいんだよね、と。

 で、これらを踏まえて思いついたのが、魔女工房でした。

 あれに関してはぽーんとなぜか思いついたのでサクッと書いたのが、正直なところです。ほぼ思いつき。

 まあ書き上げてから、ホントにこれで大丈夫かとかは悩んだのですが。

 (ほぼ現実社会の話なので)


 以上はあくまで私の推測です。


 で、中間選考が終わったわけですが……応募作品は453作品。

 ただし、下記ページによると、文字数で規定外だったものがあったようです。

https://kakuyomu.jp/works/16816927859223023567/episodes/16817330666449973965

 この手のコンテストで、文字数違反は(よほど桁違いに出来がいい作品でない限り)まず足切りされると考えていいでしょう。

 まあ実は通常のコンテストだと、多少のページ数オーバーよりは作品の出来の方が優先されると昔聞いたことがありますが。

 とりあえず規定外は無条件で切られたとすると、選考対象作品は404作品。

 中間選考突破作品が102作品。

 突破率は25.2%。

 他のコンテストと比べると、驚異的な高さです(二倍以上)

 これはおそらく、このコンテストの特殊性が理由だろうとは思います。そのあたりは後編で。


 ちなみに作品ジャンルは、上記ページによるとほぼほぼ『恋愛』『異世界ファンタジー』で半々でした。

 若干、『現代ファンタジー』『歴史』『ミステリー』が含まれていたようです。

 突破作品のジャンルも比率としてはほぼ同じ。

 拙作含めた『現代ファンタジー』は10作品エントリーで3作品ですから、平均より少しだけ突破率が良かった……とは言えないでしょうね。この数字なら誤差です。


 またこのコンテストはいわゆる『読者選考』がないので、★の数などは全くアテになりません。

 じゃないと私のは確実に落ちてます(締切時点では30個くらいだったはず)


 では、この『当落』がどうやって判断されたのか。

 もちろん私は選考者ではないので全く分かりません。

 ですが、落選作品と突破作品を比べればある程度見えて来るかもと思い、それほど数は多くないですが、中間選考で落選した作品いくつかと、突破した作品(自作含む)いくつかを読んでみて、比較してみることにしました。


 なんでこんなことをやろうかと考えたかといえば、一つには、あまりにも突破数が多いことが挙げられます。

 つまり、突破した作品と落選した作品には、ある程度明確と言える差があるのではないかと考えました。

 ぶっちゃければ、中間選考それ自体が、盛大な、言い方は悪いですが『ある程度機械的な判断による足切り』でもあったのではないかと。

 とはいえ、見た瞬間にわかるほどの出来不出来があるのは稀(ないとは言わない)なので、どこまで読み込んで当落を決めたのかは、推測しかできませんが、私は私の基準でそれらを読み解いていこうと思いました。


 当然ですが、あくまで私の主観による分析なので、これが正解である保証は全くありません。

 他の落選作品で、『私のはその分析なら受かってるはずだ!』といわれても困りますので。


 また、多種多様なお話がありますから、分析の観点はあくまで私の主観です。

 まあいくつか読めば少しは方向性も見えるかもですが。


 こんな感じで、中間選考突破作品と落選作品をいくつか読ませていただきました。

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