異世界モノの難しさ
※近況ノートの転記です。
異世界ファンタジー。
私も書いていますが、異世界ファンタジーの難しさは『世界が違う』の一点に尽きると思います。
つまり、地球の常識は『存在しない』または『通用しない』ということを考えないと、本来は成立しません。
実際、真面目に異世界を考えると、本当に大変です。
以下、考えるべき項目を並べてみましょう。
●世界全体の姿
そもそも惑星なのか、平面なのか。
平面であれば果てはどうなっているのか。
太陽は一つなのか、月は一つなのか。
そもそも『天体(太陽や月含む)の動きは東から昇って西に沈む』のかどうか。
この現象は地球が惑星だから起きる現象ですからね。
そもそも重力は1G程度なのか。
ちなみにドラゴンボールとかで重力が地球の十倍という惑星があるわけですが、実際にそんな星があった場合、その世界の人間はとんでもなく太いか、あるいは地球の常識ではありえないほどの密度の肉体を持ちます。
じゃないと自重を支えられないので。
なんせすべての重さが十倍です。
人間がそんな場所に行ったら、足に行った血液を心臓まで戻せなくて、あっさり死ぬでしょうね。血液がひたすら足にたまってしまう。
生き延びたければ横になっているしかないでしょう。
重力系魔法とか、マジでやばいんですよ(w
一瞬でブラックアウト(脳に血液が少ない状態)を作っちゃいますからね(ちなみに6Gでヤバイ)
まあ重力を1G以外にする異世界ファンタジーは多分一つもないと思いますが(SFではあるでしょうが)
●知的生命体
住民は人間種としても、他の亜人種がいるのか、とかその程度の違いはもちろん、知的生命体がどの程度いるのか、その寿命は、等。
人間が地球で最も繁栄している最大の理由は唯一の知的生命体だからですが、もし他にいて、それでも人間(またはそれに類する生命体)が最も繁栄しているとしたら、どういう理由なのか、等。
まあこの手の説明で一番多いのは『繁殖力が最も強かった』というやつですが。数は力ですね。
ただ、数だけ多くても、支配層は寿命が長い強力な少数種族というパターンもありますが。
いずれにせよ、寿命の違う知的生命体がいる世界の場合、その世界の支配構造は地球と同じには『なりえません』から、ちゃんと考えないとリアリティを失うでしょう。
このあたりで説得力ありまくってすごいなぁ、と思わされるのは小野不由美の『十二国記』ですね。
基本人間しかいませんが、為政者側が不老不死。
でも粛清装置(といえると思う)があるので、それでも永遠の国は存在しないという。
●度量衡
度量衡は一番手を付けやすいところなので、これに関してはオリジナルの設定がある作品も結構あるかとは思います。
私もTRPGとかでもオリジナルの設定使ってました。
ゲームルール上は当然メートル法ですが(w
田中芳樹の『アルスラーン戦記』とかも、度量衡は独自でしたね。
これに関しては転生・転移ありの話の方が縛りが厳しいです。
作中で例えば『五メートル先』と表現した瞬間に(それが転生転移者の主観でない限りは)個人的には異世界感吹っ飛びますからねぇ。
転生・転移がなければ(つまり地球の知識がをもつ人がいないなら)『偶然』度量衡が同じだった、ということで通せなくもないでしょう。
転移転生でやったら、私としては『なんで違う世界で同じなんだよ』と思っちゃいますね。今でも、国によって違うくらいなのに。
●暦法時制
これもオリジナルで設定してる人は多いと思います。
特に暦はまあ令和とか平成とか西暦使う人はいないし(笑)
気にしてない人は欠片も気にしてないんでしょうが。
ただ、一日とか時分秒そのままは大半でしょうね。
そもそも1年が365日、あるいは1日が24時間。
これは『今の』地球の話ですからね。
さらに言うと、暦というのは基本天体の動きに依存してるのが普通なので、上述した太陽や月がどうなっているのかにもよります。
●季節
意外に落とし穴だと思います。
東西南北の方角の概念はあるとしても、季節はどうなのか。
季節があるのは、地球の場合は地軸が傾いているから起きるわけで。
何が季節をもたらしているか、というのは世界観そのものに依存します。
ちなみに昔のソードワールドの世界であるフォーセリアは、確か夏は南の炎の精霊力が増して、冬は北の氷の精霊力が増すから、だったかな。
そんな感じの設定があると、ちょっと地球と違うな、と思えて異世界感が増すと思います。
●社会制度
地球と同じ物理法則が完全に適用できて、寿命の違う異種族とかがいないなら地球と似たようなもので問題はほぼありませんが(全くとは言わない)
しかし魔法があったり、寿命が著しく違うとか、特別な力がある異種族などが存在する場合、全く同じには、『なるはずがありません』。
まあ異種族については『支配欲が小さい』『縄張りから全く出てこない』『人類種と基本関わらない』とかすればいいとしても。
魔法の存在は無視できません。
それについては魔法の項で。
●言語
何気に落とし穴。
特に故事成語は使うとおかしなことになります。
四天王はもちろん、魔王とかも実は仏教用語。
さらに言えば『デーモン』『天使』もキリスト教。
まあやってたらキリがないでしょうが。
私の『竜殺し』はこのあたりは無理矢理『意思接続』という能力で説明しましたが、まあこういう『言語理解』的な能力がある作品が多いのは、このあたりの問題を解決するためでしょう。
実際、竜殺しではコウの話す言葉には結構気を付けてます。意思接続は会話には適用されてないので……。
●魔法(または異能力)
異世界ファンタジーの『華』ともいえる項目であると同時に、非常に扱いの難しいのが魔法(または異能力)の存在です。
魔法そのものの設定というより、その存在の社会的な位置づけが、です。
考えなければならない項目は以下あたり。
1.魔法の効果とその範囲
2.魔法を使える存在の稀少性
3.魔法を使うためのコスト
4.魔法の利用の度合い
一つ一つ考えてみますか。
1.魔法の効果とその範囲
何気に重要です。例えばドラクエの魔法で考えますか。
攻撃呪文。これが例えば簡単にぶっ放せるとしたら……どうでしょう。
メラゾーマなんて、確実に一般人は一撃でしょう。
そこまで行かなくても、メラですら一般人なら大怪我コース。
つまりそういう攻撃呪文を使える人は、現実世界でいえば拳銃を持ち歩いているに等しいわけです。
危険度わかりますね。
無論抑止力側(警察機構など)も持ってるとしても、アメリカですら常日頃から拳銃を持ち歩く人はそういません。
が、ドラクエの場合発動体が必要という設定がないので、魔法を使える人はほぼ無条件で突然ぶっ放せます。
そんな人が町中に何人もいたら……さて、どうでしょう。
怖くないですか。
というか普通に紛争地で行きかう人々が機関銃持ってるのと変わらないかと。
撃つつもりがあるわけではなくてもねぇ。
ただ、例えば
そうすればそこは安全です。こんな風に、抑止の仕方次第では何とかなります。
あるいは、呪文1つ使うのに『メラ』というだけじゃなくて、ある程度の時間の儀式が必要ならどうでしょう。詠唱とか。
それなら使う時に誰でもすぐわかりますし、取り押さえることも出来るでしょう。
とたんに脅威度が減ります。
または杖またはそういう発動体が必要となれば、それを持っていなければいいとなります。
また、魔法の射程によっても危険性は変わりますね。
2.魔法を使える存在の稀少性
魔法を使える人が極めて希少な場合と、普通にいる場合でも、社会的な位置づけは大きく変わります。
普通にいる場合は前述のように何か対策がないと、常に凶器を持ち歩かれている状態になりかねません。
ですが極めて希少である場合はどうなるかといえば、おそらく現実の世界のルールの大半はそのまま適用できるでしょう。
稀少ということは当然使える人を把握できる必要がありますが、その人にだけ特別ルールを適用するだけで済むからです。
3.魔法を使うためのコスト
何気に大事。
ドラクエみたいに一晩眠れば回復するMPだけ消費して『メラ!』といえば発動するなら、実質ノーコストでしょう。
ですが、例えば貴重な宝石を触媒に使うとか、発動のために時間コスト(例えば儀式)が必要とかになれば、また別です。それだけ魔法の使用にコスト(リスクでもある)が必要となると、気軽に使える力ではなくなります。
こうなってしまえば、現実の兵器とそう変わりません。
むしろ兵器の方が手軽でしょう。
4.魔法の利用の度合い
これも重要です。
拙作『竜殺し』では、法術という魔法能力が世界に存在しますが、これが非常に一般的で、社会インフラにおいて大変重要な位置にあります。
上下水道はもちろん、地球で言えば電化製品の代わりになるほどです。
一方で攻撃を使える人は徹底的に管理されていることになってます。
ここまで行かなくても、例えば治癒魔法の使い手がいたら、その存在がどのくらいいるかによって、医療の発達のありかたが大幅に変わります。
どの街にも神殿があって、いくらかの寄進で治癒魔法をかけてもらえる社会でれば、その魔法の効果次第では、外科医療の発達は大幅に抑制されるでしょう。
解毒魔法や施療(疾病回復)魔法があるなら、それの効果次第ですが医療が発達する『必要』がなくなります。
魔法による移動手段があれば、動力が発達する余地がなくなるでしょう。
錬金術が成立してるなら、金の価格が暴落してる可能性だってあります。
正直この項目については書いてたらキリがないくらい書けてしまいますが、魔法という便利存在がある場合に、科学技術の発達は地球と同じにはなりえないということは、考える必要があると思います。
これらの要素をどのように設定するかで、魔法の社会的な立場が変わってきます。
色々想像するしかないないですが。
ちなみに難しいと思った場合、『最悪の人格者が魔法使えたらどうなるか』を考えるといいんじゃないかと。その最悪のケースを防げる社会なり魔法の仕組みがあれば、まあある程度社会は成立すると思います。
あとよくあるのが、魔法を使えること自体が、支配階級の条件になってるケースですね。大抵の場合、主人公は被支配階級(または下層階級)で、下克上を楽しむケースですが。
まあこのケースも、『魔法を使える存在が稀少である』というパターンになるかと思います(貴族と平民では数があまりにも違う)
有名どころでは、『本好きの下克上』とかがこのパターンですね。
あとそもそも、魔法の強さにも問題があります。
例えばモノを掴むことができる魔法。
もしこれ、発動場所に制限がなければ、即死魔法に早変わりです。
相手の心臓を掴めばいい。
見えないところには作用しないなら、相手の目に負荷をかけたらどうなるでしょう。やはり目がつぶされて大変なことになります。
小さな力でも考え方ひとつで非常に強力になるのが魔法というか超常現象です。
そのあたりもちゃんと考えないとなんですよね。
とまあずらずら書きましたが。
正直これを全て設定してたら、本当に大変です。
そもそも、物理法則が同じではないことの方が多いかと思います。
なんせ魔法があるから。
つまりその時点で、生物の最小単位が細胞なのか、遺伝子という概念はあるのか、そもそも物質は原子分子で構成されているのか、等。
言い出したらキリがありません。
ちなみにこれは異世界ファンタジーに限らず、現代ファンタジーやSFでも同じこと(むしろ現代ファンタジーの場合は現代にファンタジー要素を持ち込むからもっと設定が大変)ですが(だからVRMMOモノやダンジョンモノが多いんだろうとは)
まあそのあたりだとさすがに物理法則まで手を出さなくていいでしょうが。
かといって、じゃあ設定頑張りまくって、それを小説に書いてたら……まあ読者はそういうのが好きな人以外まず読まないでしょう(私は好きですが)
ただやり過ぎると、例えば時制なんてわかりにくさの方が増加しますから、表現含めて考えないと大変です。
その匙加減は、作者の腕の見せ所でしょう。
まあゆえに、いわゆるテンプレートとされるもの(『ナーロッパ』などと揶揄されるそうですが)を用いるケースが多くなるわけですが、それもやむなしでしょう。
あとは、異世界モノに超級能力者が多いのは、ぶっちゃけ大抵の危険因子を強引に収めることができる(それによって社会が維持されてることの説得力を持たせることができる)というのもあるかとは思います。
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