第6話 破棄だ、破棄!!

 ——応募結果

『当選、おめでとう』

 当然の結果だな。超絶運の良い男なんだから。

 さてさてー、お楽しみのぼくのカップル相手、つゆちゃんはー……

 ぼくのカップル相手の名前を見て、顔が引きつる。

『桃香&ザーサイ』

 嘘だろーーー!

 この桃香ってまさか……

 相手のプロフィール内容を確認した。

 こいつぼくの嫌いな副生徒会長じゃねーか‼

 学園で一番可愛いとかお姫様とか言われていても、どうでもいい。

 あんな奴とカップルになりたくねー‼

 こんなカップリングは破棄だ、破棄‼

 しかし、脳裏に浮かぶのは契約内容だ。

『カップルが成立した後、当学校を卒業するまで付き合わなければならない』

 破棄したら退学になってしまう……破棄できないじゃん。

 ぼくは失望するのであった。

 なんてこった……これから先、どうやって生きればいいというのだ……

「あ、そうだ、つゆちゃん。つゆちゃんの当選結果はどうなったんだろう?」

 どうか、つゆちゃんが落選して誰ともカップリングしていませんように、と願いながら再びカップルあみだサイトを見る。

『つゆちゃん&焼き団子』

 マジかー……つゆちゃん、当選をしてしまったのかー。

 この結果にすでに泣きそうなんだけど、泣いていい?

 くー、悔しいよー。

「てか、誰だよ! 焼き団子って‼ どんな奴か調べてやる!」

 だけど、プロフィールには何も書いていなかった。

 


 ……もうだめだー。

 ぼくは教室ドアの鍵を閉めて、赤く寂しく照らされている放課後の寂しい廊下をトボトボと歩く。

 すると、廊下の先の方で一〇人以上超える男子生徒が何やら盛り上がっていた。

『イッエーイ‼』

『ヤッホー‼』

 あー、なんか盛り上がってるー。

 どうせ、もらえたチョコレートの数とかでテンション上がっているんだろうな。

 と、彼らの横を通り過ぎようとした時、とても良い知らせが聞こえてきた。

『俺のカップルあみだの相手を交換しようぜ』

『いいぜー』

『俺も、俺も! カップルを交換したい』

 カップルあみだ相手のトレードが行われていた。

 え? カップルの相手って交換できるの?

 カップルあみだの説明文ではダメだって書いてあったけど。

 気になったぼくは一番外側にいる赤髪の男子生徒に声をかけた。

「ちょっとすみません」

「なんでしょう?」

 ぼくと身長が変わりない赤髪の男子はくるりと回り、こちらを見た。

「カップルあみだの話で盛り上がっていたようですが、カップル相手って交換することができるんですか?」

「えっと……君は?」

 優しい表情を変えて、怪訝そうにこちらを見てきた。

 え、なんでそんな顔をするんだろう……?

 自己紹介をすればいいのかな?

 回答に困っていると、赤髪に問われた。

「どうして、交換できるのかを聞いてるの?」

 あー、もしかして、サイトの運営側の人間と疑っているのだろうか?

 確かに、サイトの運営者なら取り締まりをするから、さっきの発言はかなりやばい。

 確実に罰金または退学だろうな。

 赤髪の子は運営側の人間なのか気になっているのだろう。

「えーっと、ぼくもカップルあみだをしたんですが、交換をしたくてー」

「そうでしたか。いいですよー」

 明るい表情に赤髪はなった。

 この顔を見るに、運営者だと疑われていたのは当たっていたんだと思う。

「ありがとうございます。それで、カップル相手の交換は禁止されているんですよね?」

「禁止されてるよ、本来はね」

「やっぱり、そうなんですねー」 

「ところで、あなたの付き合いたい人物は誰ですか?」

「え?」

 あー、そういえば、付き合いたい相手は考えていなかったなー。

 今の副生徒会長と交換できればなんでもいいと思っていたからなー。

 特には……いや、一人だけ交換してもらいたい相手を思い出す。

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