第5話 カップルあみだ

『——一年二組の書記ちゃんが応募してるなー』

 え? 嘘?

 つゆちゃんがカップルあみだに応募を⁉

『書記ちゃんも可愛いよなー』

『こんなにかわいい子たちが応募しているんだから。応募しようぜ』

『だな、これは応募しないと損だ』

 廊下にいる男子生徒の二人の声が遠ざかっていく。

 ……つゆちゃん。

 ぼくはポケットからスマホを取り出して、カップルあみだのサイトを開いて画面をスクロールする。

 そこの応募欄にはたくさんのニックネームと本名が書かれていた。

 ぼくの指がピタリと止る。

 四〇〇人以上の応募の中に、短い名前が書かれていた。

『つゆ』

 見つけた……でも、もしかしたら他人がニックネームで書いているのかも。

 不安に思いながら、つゆちゃんのプロフィール欄を読む。

『一年二組の、つゆです。生徒会役員で書記をしています。私は——』

 真面目で正直な自己紹介を書いているプロフィールを見ると、大好きなつゆちゃんで間違いないようだ。

 顔の頬が緩むのを感じる。

 つゆちゃんが応募していることを知ったぼくはあることを決意する。

「よし、ぼくもカップルあみだに応募しよう」

 さっきはカップルあみだに全面的に反対するとは言ったけど、つゆちゃんが参加しているのなら話は別だ。

 つゆちゃんが他の男子と付き合ってる姿なんか見たくはない。それに、ぼくが参加したらつゆちゃんとカップルになるのはほぼ間違いない。いや、『ほぼ』ではなく間違いない。

 だってぼくは超絶に運が良いから‼

 つゆちゃんとカップルになる確率が宝くじ当選よりも高いんだったら、つゆちゃんとカップルに絶対になれるでしょ!

 ということで、ワクワクしてきたので鼻歌をしながらカップルあみだのサイトを開く。

「なになに~、カップルあみだの説明文だって~?」


 カップルあみだの説明


 一.応募者の中からあみだくじをして、二〇〇組のカップルが誕生。

 二.カップルが成立した後、当学校を卒業するまで付き合わなければならない。

 三.カップルは途中で変えることは認めない。

 四.当カップルの邪魔をしてはならない。

 五.月額制の五〇〇円

 六.初回登録者の男性は五〇〇〇円、女性は一〇〇〇円、一年おきに更新一〇〇〇円

 七.反則をしたらイエローカード一枚で五枚集まると退学


 などなど、注意事項もたくさん書かれていた。

 最後に注意書きがされていた。

『以上の事項を破ると罰金または即刻退学です』

 だいぶ厳しめな罰則だなー。まぁ、ぼくには関係ないけどね。

 だって、つゆちゃんと付き合うんだから破るわけないじゃん。ただ、お金がかかるのか……つゆちゃんのためだと思ったら安いな。

 それよりも応募の締め切り時間は何時だ?

 サイトの締め切り時間を見る。

『応募は午後五時半までにして下さい』

 スマホの時間を見ると、すでに五時二五分を回っていた。

 やっば、早く応募をしないと!

 メールアドレスを登録してー、名前を書いてー、と。

『さとし』

 ちょっとまてよ。本名を使うのは、なんか恥ずかしいなー。

 ニックネームで書こうっと。

 何があるだろうか、時間がないから思いついたもので。

『ザーサイ』

 頭の中にバッチーン、と降ってきた。

 特に意味はないんだけど、これでいいよね?

 時間もないわけだし。

『退学届のサインと署名を書いてください』

 オンライン上で退学届けの署名を書けるようになっていた。

 時間がないのでさっさとサインを済ます。

『男性の場合は五五〇〇円の入金をお願いします』

 インターネットバンクを通して入金をする。

 で、無事にぼくは応募を完了させ、しばらくすると、応募の結果がやってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る