第6話・六月十四日


発端はプロダクションにかかってきた俺を名指しする電話だった。

電話口のその男性、A氏は俺を生粋のオカルトライターと見込み自身の身に起きた体験を話したいと面会を希望した。

後からよく聞けば俺の記事など今まで読んだことはなく、ネットでオカルトライターを検索したところ俺の名が多くヒットし、名前が有名なら不足はないだろうといった程度でコンタクトを取ってきたに過ぎないことがわかったが。

俺の名がネットで上がっていたのは、大学の先輩だった尾川の編集プロダクションから発売する雑誌アヤカシにて、ネットの怪談を盗作したデタラメ記事を書いたことへの誹謗中傷に付随することで、ただの悪名だったのだが、A氏はそこまで詳しく調べられないほど切羽詰っていたらしい。

記事のネタになるのなら何だって構わない俺はA氏と会い、彼が一年前の夏に体験したという怨霊トンネルでの出来事を聞く。

怨霊トンネルは廃道と化してから霊の目撃情報が相次いでいた都内近郊において名の通る心霊スポットで、A氏とその連れは花火を目的にトンネルを訪れた。

トンネル付近の山中では過去に痴情のもつれから女性が焼き殺されたという残虐な事件があったといい、トンネル内で車内にいる人数分のクラクションを鳴らしてから車のエンジンを切るとラジオから殺された女が語りかけてくるという噂があった。

A氏らはついでに噂を試すも何事もなく、本来の目的である花火に興じる。

しかしその最中でA氏の友人である衛藤の高校時代の後輩アスミが異変をきたし、獣のように暴れ狂った。


アスミはその一件を境に不可解な挙動を見せるようになり、「牛鬼」という謎を残して姿を消してしまう。

「牛鬼」は未成年の少女が繁華街の店に火をつけた後屋上から飛び降りた現場でも耳にした言葉で、パニック状態を呈したという点においても少女とアスミの関連性がうかがえた。

調べる中で少女とアスミには北橋界隈という共通点もあった。

北橋界隈は山手線の終着駅にあたる北区の駅付近にて、主に未成年の少年少女がたむろする場所の通称であり、そこではパパ活とよばれる、売春も含まれるビジネスが横行しているという。

北橋界隈のパパ活はあるグループの統治下にあるといい、そのグループの一人「虎村」がアスミの行方についての重要参考人だという情報が、過去に北橋界隈でパパ活をし、アスミとは同じ大学に通っていた「四倉このみ」という女性から提供された。

一方で別件と思われていた鬼門と裏鬼門に位置する区内の「張り紙」を調査する中、「紅崎」率いる男達からの接触を受け、半ば強制的に犯人探しに加わることになる。

「張り紙」を貼った人物を捜す男達は「ジョナ」という女に目を付けているというが、渡された写真に写る「ジョナ」はアスミだった。

「四倉このみ」にも写真の女がアスミであることを確認。

またアスミと共に写真に写る「四倉このみ」に「張り紙」について聞くと「牛鬼をよぶ方法」との返答があった。

「張り紙」もアスミそれから「牛鬼」に関わるものと断定する。

その他の「牛鬼」の手がかりとして「牛鬼様」という降霊術ゲームの存在がある。

肝が降霊術という点とルールにおいて参加人数を伝えること、また禁忌が存在する点が怨霊トンネルの噂と結びつくが、それは偶然だろうか?


「線香の煙と他の煙を混ぜてはいけない」という「牛鬼様」の禁忌とアスミそれから放火少女が煙草を起因としてパニックを呈したという仮説の下、「牛鬼様」の必須物である「線香」「米」「花」の内「線香」が「煙草」「米」が「現金」を意味すると推察する。

「花」については調査中であり、これが「張り紙」とも関係する「牛鬼」の正体への手がかりになると考える。

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