第24話 商人
盗賊団にわかれを告げて、俺たちは再び馬車に乗り込んだ。
森を抜けると、また草原に出る。
しばらく草原を走っていると、よこからとんでもない勢いで通り過ぎる馬車に出くわした。
馬車はなにかに追いかけられているようで、
――ドドドドドドドドド。
猛スピードで草原を駆け巡る。
やばい、このままだとどこかにぶつかってしまうぞ。
馬車は、猛突進するイノシシモンスター――ブタサンダーに襲われているようだった。
ブタサンダーの群れは、まるで稲妻のような勢いで、馬車をおいかけている。
「トウヤさん……! 大変です……!」
「よし、助けよう……!」
道行く人を助けるのも、旅の醍醐味だ。
俺はブタサンダーに向けて、さっそく覚えたばかりのスキル【催淫】を使った。
すると、ブタサンダーたちはメロメロとろとろとした顔になって、ふらふらと足取りを重くした。
ブタサンダーたちはそのままこちらへ寄ってくる。
なので、俺はブタサンダーの顔面めがけて――
「火炎放射……!!!!」
――ゴオオオオオ、
これで豚の丸焼きの完成だ。
ブタサンダーが追ってこなくなって、馬車も動きを止めたようだ。
先ほどの馬車は、ゆっくりとこちらに近づいてきた。
そして、馬車が止まると、仲から小太りの初老の男性が降りてきた。
男性は会釈し、俺に握手を求めてきた。
「いやぁ……どうもどうも、旅の冒険者さん。助けていただいたみたいで」
「いや、別にかまわないですよ。俺たちも、ちょうど今晩の夕食にありつけたところだし」
「はっはっは。おもしろいお方ですな。おっと、自己紹介がまだでしたな。私は商人のデカードと申します。この先の街――ポトムでしがない商会を運営しております」
「俺は冒険者のトウヤです」
どうやら、商人さんの目的地も俺たちと同じようだ。
「俺も、そのポトムという街を目指していたんです」
「おお……! そうでしたか。でしたら道中ご一緒しましょう」
「ええ、ぜひ」
ということで、俺たちは馬車を連れだって、ポトムまでいくことになった。
ポトムの詳しい位置がわかっていなかったので、俺たちとしてもかなり助かる。
ちなみに、焼いたブタサンダーはすべて俺のアイテムボックスにしまっておいた。
あとで食べよう。
デカードさんの案内で、ポトムまではすぐにつきそうだ。
道中、商売の話などをいろいろと、興味深くきかせてもらった。
「街についたら、街を案内しましょう」
「おお、それは助かります」
「いえいえ、ほんのお礼のつもりです」
しばらく馬車を走らせると、大都市ポトムへとついた。
デカードさんの知り合いということで、特に制限なく街へ入ることができた。
身分証明書として、冒険者カードもあるから、ほとんどの街には入れる。
「それで、トウヤさん。宿などは決まっていますかな……?」
「いえ……」
「それでしたら、ぜひうちにお泊りになってください。うちでお礼をさせてくださいな。歓迎しますよ」
「いいんですか……!? それならぜひ、お言葉に甘えさせてください」
「ええもちろん」
ということで、俺たちはそのまま、デカードさんの家に招かれることになった。
「……って、でかああああああああ……!?」
「ほんと、おっきいです……」
デカードさんの家は、豪邸……っていうか、もうほぼ城だった。
しがない商会とかっていってたから、まあ屋敷くらいには住んでいるんだろうと思ったけど……。
これは……大金持ちっていうか、大富豪じゃねえか!
ただの商人っていうか、大商人だな……。
どうやら、これはあとからわかった話だが、デカードさんはこの街……いや、この国を代表するほどの有名な大商人だったようだ。
俺は運よく、そんな人を助けてしまったらしい。
でも、デカードさんがいい人で本当によかった。
「それでは、みなさんはこちらの部屋をお使いください」
「あ、ありがとうございます……」
デカードさんに案内されたのは、ホテルのスウィートルームとも見まがうほどの、大きなベッドのある部屋だった。
ていうか、俺たち三人で一室なんだな。
やっぱり、俺たちはそういう関係に見えるのだろうか。
「もちろん、どのような使い方をされても、私はかまいませんよ? ぞんぶんにお楽しみください」
などと、デカードさんはにやついた顔で言ってくる。
「いやさすがに人様の家でまぐわいませんって……!」
ほんとだ。断じて、そんなことはしない。
『ほんとかにゃぁ……? 誘惑しちゃおうかな……?』
『黙れ。誰がお前の誘惑で発情するか!』
女神がそれから卑猥な言葉を連呼してきたが、下品なだけで全然えっちじゃない。
それから、荷物を降ろして、ゆっくりとくつろいだ。
夕飯の時間になって、みんなでテーブルを囲む。
デカードさんの家のダイニングテーブルは、王族が使うものかってほど、大きかった。
夕食には、さっき倒したブタサンダーの丸焼きが出された。
俺があらかじめ、コックに渡しておいたのだ。
異世界に来てから、まだまだこっちの飯には慣れていない。
ブタサンダーは初めて食べる。
まあ、普通の豚肉とたいして変わらないんだろうなと思っていたが……。
一口たべると、舌にぴりりと電流が走ったような感じになる。
なるほど、たしかにブタサンダーっていう感じだ……。
ベースの味は豚肉なのだが、そのぴりりとした舌触りがいいアクセントになってて刺激的な味だった。
俺たちは談笑しながら、夕食を堪能した。
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