第19話 表彰
そこからはいろいろ大変だった。
とりあえず俺は、モカとリリシュを連れて、心配なのでフィエルさんの元へ。
俺たちは冒険者ギルドへやってきた。
「あ、トウヤさん……!」
俺を見つけて、笑顔でフィエルさんが手を振ってくれる。
「どうしたんですか……?」
「え……? どうしたもこうしたも……。オーガを倒して、心配だからフィエルさんの様子を見に来たんだけど……」
「え…………? も、もうオーガを倒してしまったんですか!?」
「はい……」
「さ、さすがはトウヤさんです……まったく規格外ですね……。今、ちょうどギルドで、どうやってオーガを討伐しようかと作戦会議していたところだったんですよ……。それを、この一瞬で……素晴らしいです……」
とりあえず、フィエルさんは無事なようでなによりだ。
すると、俺とフィエルさんの話をきいていたようで、ギルド長が話に入ってきた。
「ま、まさか……あのオーガすべてを君一人で倒したというのか……?」
「は、はいそうですけど……」
「す、すばらしい……! さすがは我がギルドは認めた唯一のSSS級冒険者だ! ほこりに思うよ、トウヤくん」
「はあ、どうも」
ギルド長も、大喜びだ。
というのも、
「いやしかし、危ないところだったよ。この街の防衛は、冒険者を束ねる冒険者ギルドの長であるこの私に任されている。もし街が壊滅でもしていたら、その責任は私がかぶるところだった……。だが、トウヤくんのおかげで事なきを得た。ほんとうに、感謝してもしきれないよ」
「いえいえ、俺は当然のことをしたまでですから」
そうか、そりゃあ、大変だな。
ギルド長の首までかかってたのか……。
それは気が気じゃなかっただろうな……。
すると、そこにもう一人、初老の偉そうな男性がやってきた。
ギルド長がへりくだって、その人物に頭を下げて挨拶する。
どうやらギルド長よりも偉い人のようだぞ……。ってことは……。
「話はきかせてもらった。私はこの街の市長のドンソンだ」
「どうも……」
俺は握手をもとめられ、それに応じる。
「どうやら君が我が町を救ってくれた勇者のようだね」
「トウヤといいます」
「トウヤ殿……本当に、ありがとう。私の街を救ってくれて。私からお礼を言おう」
「いえいえ……俺も、この街にはすごくお世話になりましたから……」
「そこでだ。君にはこの街から表彰状を送ろうと思う」
「えぇ……!? いいんですか……!?」
「もちろんだよ。それだけじゃない。君のことは街全体を上げて称えよう。まずは広場に復興のシンボルとして、トウヤ像をたてようじゃないか」
「そ、それはちょっと恥ずかしいかも……」
「それと、今回のオーガ討伐は、市長の私から、冒険者ギルドへ緊急クエストとして依頼をしてあってだね。それの報酬金である1千万Gも受けとってくれないか?」
「そ、そんな……そこまで……俺はそんなつもりじゃ……」
「いや、いいんだ。君の働きはそれに値する」
「そ、そういうことなら……」
俺は市長さんから、1千万Gもの大金をもらうことになった。
しかも後日表彰され、記念の像まで創られる予定だ。
それって、とんでもないことじゃないか……!
だけど、俺にはまだ気がかりなことがあった。
俺はギルド長と市長に提言する。
「あの……!」
「どうしたトウヤ殿。なんでも言ってくれたまえ。君の望みなら、我々がなんでもかなえよう」
「その……今回の事件で、怪我をした冒険者がたくさんいるんです……!」
「そうだな……。それは、ギルドとしても把握している……」
フィエルさんからきいた話によると、基本的に冒険者ってのは、個人事業主のようなものだそうなのだ。
だから、保険のようなものはなくて、怪我をしたりしたら、基本的には自分で、自腹で治療費を払ったり、自分たちで治したりする必要があるらしい。
高価な薬草をもっていたり、回復術師のいる上級パーティならいざしらず、金のない冒険者は、怪我をしたら冒険者生活はそこでおしまいなのだという。
今回、冒険者たちは、みんな街を守るために、自分たちの命をなげうって、オーガに向かっていった。
だけど、彼らにはなんの保証もない。
それって、かなり理不尽じゃないか……?
「我々も……なんとかしたいとは思うのだが……」
市長とギルド長も気まずそうな顔をする。
冒険者ギルドも、市も、予算や人員は限られている。
すべての冒険者を拾ってきて、怪我をみてやるということはできないのだ。
そこで、俺は考えた。
「あの……ギルド長! この前、俺がもってきた薬草、上級薬草、神秘草。ありますよね? あれ、まだありますか?」
「あ、ああ……もちろんだが……」
「それ、全部この1千万で買い取れませんか!?」
「なに……!?」
俺は市長から提案された1千万を提示した。
「そ、それならたしかに可能だが……いいのか……?」
「俺はいいんです。それよりも、この薬草を使って、怪我をした冒険者たち、それから市民を助けてください」
「わ、わかった。君のすばらしい行い、気持ちはこのギルド長グディアスが受け取った! 冒険者ギルドをあげて、けが人の治療につとめよう」
「ありがとうございます!」
俺は市長から受け取った1千万を、そのままギルド長に手渡した。
これで、ギルド主導で、けが人の治療が行われるはずだ。
街の人たちが一人でも救われればいいなと、俺は思った。
「すばらしいです、トウヤさん。自分の利益よりも、街の人たちを優先するなんて……なかなかできることじゃありません! さすがです! ますます好きになります! ちゅ……♡」
フィエルさんが俺にキスしてくる。
まったく、みんなの前で照れてしまうな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます