第17話 戦意喪失

「わ、私をお嫁さんにしてくれるのか……?」


 女性冒険者は潤んだ目で俺を見てくる。

 う……そんな目で見られると、断れないじゃないか……。

 それに、見た目もかなり可愛いし俺好みだ。

 俺だって、まんざらじゃない。


「と、とりあえず……今はそれどころじゃないだろ……! オークを倒そう……!」

「そ、そうだな……。わ、私はリリシュだ」

「よろしく、リリシュ」


 リリシュは起き上がると、再び剣をとった。

 そうこうしているうちにも、オーガは再びこちらへ迫ってくる。

 なにせオーガは500体もいるのだから、15体くらい倒したくらいでは、勢いは収まらない。


 そのときだった――。


 ズシーン!

 ズシーン!


 巨大な足音と共にやってきたのは、通常のオーガの5倍くらいある大きなオーガだった。

 オーガはただでさえ3メートルほどある巨人だ。



============

巨大オーガ Lv9999

============



 だが、これは……ちょっと想定外だ……!

 まるで山が歩いてやってきたというような、巨大なオーガが迫ってきた。

 オーガが立ち止まり、巨大な影ができる。

 あまりにもデカいオーガに、みんなそれを見上げて、唖然としている。


 先ほどまで勇敢に戦っていた冒険者たちも、みんな戦意喪失している。

 中には剣を落として逃げ出すものもいた。


「だめだ……もう無理だ……あんな怪物……終わりだ……!」


 だが、リリシュだけは違っていた。

 誰よりも勇敢に、彼女は立ち向かっていく。

 剣を抜き、真っ先に巨大オーガへと斬りかかる。


「うおおおおおおお!!!!」


 だがしかし――。


「オガアアアアアア!!!!」


 オーガの一振りで、リリシュは吹き飛ばされてしまう。

 リリシュの剣は、巨大オーガに傷一つつけることはなかった。


「きゃああああ……!!!!」


 吹き飛ばされたリリシュは壁に打ち付けられる。


「リリシュ……!」


 地面に倒れたリリシュの元へ、追い打ちをかけるように迫るオーガ。

 オーガはその巨大な足をあげて、今にもリリシュを踏みつぶそうとした。

 リリシュの頭上に、オーガの巨大な足の影が迫る。


「あ……ああ……終わりだわ……私、ここで死ぬのね……」


 リリシュは先ほどまでの勇敢な姿とは打って変わって、戦慄の表情を浮かべていた。

 アリと人間ほどの戦力差のある巨大オーガにおののいて、戦意喪失してしまっている。

 恐怖のあまり顔をゆがめ、震えるリリシュ。

 よく見ると、リリシュは再び失禁していた。


『漏らし癖がある子なのかしらね……? なんかちょっとえっちだわ』

『黙れ』


 俺はとっさに、リリシュを助けるべく、前に出た。

 リリシュの前に立ちはだかる。


「トウヤ……! あぶない! 逃げて……!」

「リリシュ、ここは俺に任せろ……!」


 俺は、スキルを発動させる――!


 女神から授かった暴食スキルによって、モンスターから奪ったスキルだ。


「巨大化――!!!!」


 スライムキングから奪った巨大化スキルを発動……!

 すると、俺の肉体は瞬時に巨大オーガと並ぶくらいの巨体になった。

 まるでウルト〇マンだぜ!


「と、トウヤ……!?」


 そして俺は、オーガの持ちあがった右足をつかむと……そのまま……。


「とりゃあああああ!!!!」


 オーガをぶん投げた……!!!!


 ――ズドーン……!!!!

 ――ドシーン!!!!


 オーガは地面に倒れて、その場に大きなくぼみを作り出した。

 だが、オーガもさすがにあの巨体だから、かなりタフなようだ。

 巨大オーガはゆっくりと立ち上がると、俺の前に立ちはだかった。


「まだやるっていうのか……」

「オガァ…………」


 俺は足元にいるモカに声をかけた。


「モカ……! リリシュを頼む……! リリシュと安全なところにいてくれ!」

「はい……! トウヤさん……! おっきくなってもかっこいいです……♡」


 リリシュは完全に戦意喪失してしまっているから、このまま戦場にいると危険だ。

 モカにリリシュを頼んで、二人には物陰に隠れておいてもらおう。

 さぁて、これで心置きなくオーガをボコれるな……!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る