第15話 大軍!

 外に出てみると、街は大変な大騒ぎだった。


「逃げろおおおおおお!!!!」


 俺たちの前を、着の身着のままで逃げていく民衆たち。

 冒険者らしき恰好をしている連中は、それとは反対方向に走っていく。


「いったいなにがあったんでしょう……」


 モカが心配そうな目で俺を見つめる。

 俺は大丈夫だ、とモカを抱き寄せた。

 

「ちょっと、きいてみよう」


 俺は大通りに出ると、冒険者らしき恰好の男に声をかけた。


「なあ、なにがあったんだ。事情を知っているなら、教えてくれないか……?」

「ああ……あんたも冒険者か。それなら今すぐ一緒に来てくれ。事情は歩きながら説明する」

「わ、わかった……」


 とりあえず、街は大変なことになっているみたいだった。

 フィエルさんは、状況を把握し、冒険者に適切な指示を出すためにも、冒険者ギルドへ向かうのだという。

 こういった有事の際にも仕事があるのが冒険者ギルドの受付の仕事だった。

 俺とモカはフィエルさんに気を付けてと言い、男と共に歩き出す。


「あれを見てくれ」

「あれは……」


 高台までやってきて、男が指さしたのは、街の外れだった。

 そしてそこからは真っ黒な煙が上がっている。

 その上にいるのは、巨大なモンスターだった。


「あれは……オーガか……?」


 街を襲っていたのは、巨大なオーガの群れだった。

 オーガはオークのでかい版のような、ムキムキの赤色の怪物だ。

 遠くから鑑定してみたところ、レベルはみんな250くらいってところか。

 だがそれが大軍ともなると……。街はひとたまりもない。


「ああ、オーガの大群だ。しかも、500体ほどはいる」

「そんなに……」

「今朝から多くの冒険者が討伐に向かっているんだが、みんな返り討ちにあっているんだ。話によると、Aランク冒険者でさえも殺されたときく……」

「そんな……!」


 Aランクであれば、オーガに負けることはないはずだ……。しかし、大群から、しかも街を守りながらとなると、かなり難易度が上がる。

 Aランク冒険者が負けてしまうのも、無理のない話だ。


「今、街のB区画までオーガが入ってきている。このままだと、A区画まで突破されるのは時間の問題だ……。なんとか他の街から強い冒険者を集められればいいんだが……。このままだと、この街はおしまいだ……!」


 男は絶望の表情で、頭を抱えていた。


「くそぅ……俺にも守らなきゃならない妻と子供がいるんだ……! B区画には買ったばかりの新築の家があったっていうのに……ちくしょう……!」


 そうだよな……みんなそれぞれ、守りたいものがある。

 この街は、俺に居場所をくれた。

 この街は、俺に素敵な女性と出会わせてくれた。

 俺だって、この街を守りたい。


「よし、俺に任せておいてくれ」

「任せてくれっておい……あんた……いったい何者だ……? あんた一人でどうこうなるもんでもないだろ……!?」

「まあ、あんたはここで見ててくれ。すぐに片付けるから……」

「な、なにを言って……?」


 困惑する男に、モカが得意げに説明する。


「トウヤさんは、この街で唯一のSSS級冒険者なんですよ?」

「SSS級冒険者……!? じゃ、じゃあ……あのリヴァイアサンを倒したっていう噂の新人冒険者は……!? あ、あんたのことなのか……!?」


 どうやら俺の噂は、末端の冒険者にまで伝わっているようだ。


「そういうことだ。よし、モカ。すこし揺れるが、俺につかまっていろよ」

「きゃ……トウヤさん……!」


 俺はモカをお姫様抱っこした。

 そして、全速力で、猛ダッシュ……!!!!

 遠くに見えるオーガの大群めがけて、俺は走り出した……!

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