第14話 ホテル

 フィエルさんとモカに両腕を胸に挟まれて、俺はされるがままに連行される。

 路地を歩いてやってきたのは、なんともピンク色な街並みだった。

 そこいら一帯には、なにやらピンク色の煙が立ち込め、ピンク色の街灯が並んでいた。

 おそらく魔法によるものだろう。

 不思議と、歩いているだけでいかがわしい気持ちになってくる。


「さあ、入りましょう」

「あ、ああ……」


 やってきたのは、その一帯でもひときわ高級感のあるホテルだった。

 俺は二人の美女に挟まれて、ホテルの中に吸い込まれる。

 周りの男たちの羨ましそうな視線が突き刺さる。


 ホテルの部屋に入ると、そこはとても高級感のある室内だった。

 ベッドは5人くらい同時に乗れるのではないかというほどの、巨大なベッド。

 そして広々とした室内には、ハーブの甘い香りが充満していた。

 

 俺たちは三人で倒れるようにして、ベッドにダイブした。


 フィエルさんが右耳にふぅ……っと息を吹きかけてくる。


「ひぃ……!?」

「トウヤさん、緊張されてます……?」

「は、はい……」


 そこに女神がいらん茶々を入れてくる。

 

『まあ、童貞だもんね』

『うるせえ、マジで今だけはでてくるな!萎える』

『し、失礼な!』


 マジで今だけは女神を脳内から追い出したい。

 まあいいや、女神に見られてると思うと、逆に興奮するから。

 よし、女神に見せつける方向でいこう。

 女神も欲求不満だろうからな。


『うう……なんか開き直られるとこっちも見てるのが恥ずかしいわね……』

『よっしゃ。ほな見るな』


 よし、なんとか女神を追い払うことには成功したな。

 これで二人に集中できる。


「トウヤさん……。私、トウヤさんのこと……好きになっちゃいました」


 フィエルさんが俺のことを見つめる。


「お、俺も……フィエルさんは素敵だと思います……」


 自分で言ってて、顔が赤くなる。

 だが俺もこういうしかなかった。


「トウヤさん……。しゅき……」


 フィエルさんはとろんとした目で、おれを見つめ、そして唇を重ねてきた。

 あったかい……。

 左からは、モカが吐息を首筋に当ててくる。

 

「トウヤさん……私も、好きです。ほんとに好きです……。初めてあった時から……。私、こんな思いは初めてなんです。トウヤさん……」

「モカ……。俺も、好きだよ……」


 俺はモカとも唇を重ねた。

 フィエルさんとは少し感覚が違い、モカの肉厚な唇が俺を放さない。本当に気持ちいい。


 ていうか、そもそもこういうのってありなのか……?

 異世界だから、もしかしたら、一夫一妻制とかなのかもしれないけど……?

 モカもフィエルさんも、なにも言ってこないし、いいのかな……?

 このままハーレム展開しちゃっていいのかな……?


『異世界なんだから、細かいこと気にしない気にしない! 男でしょ! 据え膳食わぬは男の恥! ここはいっぺんに、男らしくいただいちゃいなさい!』

『お、そうだな……。女神の言う通りだ……。たまにはいいこと言うじゃねえか。よし、女神。お前もいつか頂いてやるからな……!』

『ふん、童貞のくせに……! わ、私はそんな安い女じゃないからね!』

『残念でしたー! 俺は今から童貞じゃなくなりますー!』

『っく……そうだった……もう童貞煽りできない……』


 よし、女神からも許可を得たことだし……。

 俺は、がばっと起き上がり、フィエルさんとモカをベッドに押し倒した。


「きゃん……!」

「や…………♡」

 

 二人とも、顔が真っ赤に火照っていて、とてもつやっぽい表情だ。


「モカ……フィエル……俺は今から、二人にえっちなことをする。いいな……?」

「はい……めちゃくちゃにしてください……」

「壊してください……」


「よし……」


 俺は上半身の服を脱ぎ捨てて、二人に襲い掛かった。


「二人とも……俺が幸せにする……!」

 

 

 ◆



「や……♡ トウヤさん、男らしくて素敵です……♡」

「トウヤさん……! トウヤさん……! もっと、突いて!」


 うおおおおおおおおお!!!!

 俺たちの激しい運動は、明け方まで続いた。

 こんな幸せな夜は初めてだった。

 ていうか、昨日まで童貞だったのに、いきなり3Pとかこれありなのか……!?

 なんだか俺も、男として一皮むけた気がするな。

 なんというか、すごく自信がついた。


 今までは割と女の人と話すのとか苦手だったけど、今後はかなり大丈夫そうだ。

 これも女神のおかげだなぁ……。

 そういえば、女神、俺の行為中はさすがになにも言ってこなかったけど、なにしてるんだろうか……?

 ずっと見てたってわけでもないだろうし……。


『おい……女神? 女神……? おーい』

『あん……! あ……♡ イクぅうううううううう……!!!!』

『ファ……!?』


 女神に話しかけたら、なんか女神さんお取込み中でした……!?


『な、なにしてんだお前……!?』

『へ……!? きゃ!? な、なに!? トウヤ!? い、今のきかれた……!? ええ……!? 通話拒否状態にしてたのに、そんなぁ……!』

『てめぇ。人のナニ見て興奮して一人でナニしてんじゃねえよ!』

『だ、だってぇ……。天界ってそういうえっちな本とか映像がないのよぉ……! 仕方ないじゃないのぉ……!』

『おいやっぱこの女神変態だわ……』

『うぇええええん恥ずかしいところ聞かれたあああああ!』

『今更だろ……ていうか、そんなに混ざりたいんなら、お前も次会ったときに抱いてやるよ』

『うう……昨日まで童貞だったくせにぃ……』


 まあ、変態女神は放っておいて。

 美しい女神2人におはようのキスだ。

 俺はまだ疲れて寝ているフィエルとモカに軽くキスをした。

 二人のためにコーヒーも入れておこう。


「むにゃむにゃ……トウヤさん……? おはようございます。昨日は疲れちゃいました……。トウヤさん激しいんですもん……」

「わ……! 私たちのためにコーヒー淹れてくれたんですね……。ありがとうございます。さすがトウヤさん……できる男ですね……」


 目覚めた二人を抱き寄せて、三人でくっついてコーヒーを飲む。

 本当に幸せな朝だ。

 こんな時間が、ずっと続けばいいのにな……。

 そのときだった。


 ――ドシーン!!!!


 外から、なにやら地鳴りが響いてきた。

 建物が大きく揺れる。

 そして、街路から「逃げろおおおお!!!!」という怒鳴り声。

 いったい、なにが起きているのだろうか……!?

 

 俺たちは急いで服を着て、外へ出た。

 

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