第12話 物的証拠
俺には策があった。
俺はとりあえず、ヘクセとカマセーヌを連れて、ギルドの前へ。
ギルドの中だと、ちょっと窮屈だからな。
またギルドを破壊したりしたら、今度こそシャレにならん。
「へっへっへ、決闘だ! 死ぬまでやろう」
そう言って俺にまた突っかかってくるヘクセ。
しかし、俺は決闘をするためにギルドの表に出たのではない。
「まあ待て、俺が今から証拠を見せよう。だから、これで勘弁してくれないか? もう俺に突っかかるのはやめてほしい」
「はぁ……? なにを見せられても、お前がインチキ野郎だってことに変わりはねえ!」
「そうか。これでもか……?」
「あん……?」
俺はアイテムボックスから、リヴァイアサンの死体を取り出し、道の真ん中にドーンと置いた。
巨大なリヴァイアサンの死体を取り出すのに、ギルドの中だと窮屈だったからな。こうして表に出た。
道にはリヴァイアサンの生臭い臭いが立ち上る。
「な、なななななんだこれはあああああ……!?」
目を丸くして驚くヘクセとカマセーヌ。
俺は淡々と告げる。
「これは俺がさっきのクエストで討伐したリヴァイアサンの死骸だ。本来いるはずのないエリアにいる強敵だったのでな。ギルドに調査してもらおうとこうしてもってきたんだ。この死体を見ても、俺がインチキの雑魚だっていうのか?」
「ふ、ふん……こんなもの……これもどこかで拾ってきたに決まってる!」
「おいおい……こんなの拾えないだろ……」
さすがに、リヴァイアサンの死体なんかどこにも落ちていないと思うぞ?
自分でも言ってておかしいと思うのか、ヘクセは冷や汗をかいている。
「こ、こいつを本当にお前が倒したというのか……!?」
「ああ、そうだが」
「っく……う、嘘に決まっている……!」
そう言いながらもヘクセの足は震えていた。
どうやら俺の実力が正しく伝わったようでうれしい。
さすがにリヴァイアサンを倒すような俺との決闘はごめんなのだろう。
俺たちがそうこうしていると、受付嬢のフィエルさんが俺に声をかけてきた。
「こ、これリヴァイアサンですよ……!? トウヤさん、本当にこれを倒したっていうんですか……!?」
まさかフィエルさんにも疑われるとは心外だな。
というより、フィエルさんの場合は単純に驚いているだけのようだったが。
「リヴァイアサンですけど、こいつそんなに強いんですか?」
「強いどころか……伝説級の魔物ですよ。この素材があれば、修繕費どころか……すごい利益になりますよ!?」
「ほう……」
それはけっこうなことだ。
これでカマセーヌのほうも納得してくれるかな。
そう思うが、カマセーヌは俺をにらみつけ。
「こんなのはなにかの間違いだ! 貴様のようなウスノロが、こんなリヴァイアサンを倒したり、上級薬草をとってきたりなど、できるわけがない! お前は我々をペテンにかけようというのだな!」
と、一点張りだ。
それに乗じて、ヘクセも。
「そうだそうだ! カマセーヌさんの言う通りだ!」
とつけあがる。
はぁ……こいつらにはもう何を言っても無駄か……。
そう思っていると。
俺たちを取り囲んでいた群衆が、ざわざわとざわつき始める。
そして、人ごみの中から初老の男性が現れた。
「なんの騒ぎだ」
髭を蓄えたその男性に、カマセーヌははっと気づき、頭を下げる。
「ギルド長!」
男性をそう呼んだのは、フィエルさんだ。
この人が、ギルド長……?
「出張から帰ってこられたのですね……!」
「ああ、留守の間、変わりはなかったかい?」
「実は……」
フィエルさんがギルド長に、今現在の事情をかいつまんで話す。
すると、ギルド長は驚いた顔をして俺のほうを見た。
「ほう……君がこれを……?」
「はい……」
「それはすばらしい……。そして……カマセーヌ……!」
ギルド長はカマセーヌのほうを見ると、にらみつけて、大きな声で怒鳴った。
「貴様! こちらの冒険者さんになんということをしたのだ!」
「で、ですがギルド長……! こやつはギルドを破壊したうえに、我々を騙そうと……!」
「ええい! このリヴァイアサンの死体を見てもまだいうか! 貴様は! 自分の間違いを認めるのだ!」
「ひいいいい……!」
カマセーヌはギルド長から大目玉を喰らった。
これで俺はなんとか無罪放免か?
ちょうどいいタイミングでギルド長が帰ってきてくれて、ほんとうによかった。
「カマセーヌ、貴様は今日でギルドを首だ!」
「ひえええそんなぁあああ!」
「当然だ。ギルドに今後膨大な利益をもたらしてくれるかもしれない新人冒険者のトウヤ殿をあなどった罪、それは重いぞ!」
あらら……。
「それから……そこの貴様! Aランク冒険者のヘクセとかいったか! 貴様もギルドを追放だ!」
「そんなぁあ……! 俺もですか……!?」
「当然じゃ! 貴様の所業もすべてフィエルから聴いておる!」
ということで、一件落着。
俺にいじわるしてきた二人は、ギルドを追放という形になった。
まあ、あんなことしてたら当然だわな。
そしてギルド長は俺に向き直ると、言った。
「君は本当にすばらしい逸材だ。あやうく君のような有能な人材を逃すところだった……。ふがいない部下をもって申し訳ない。君には、ちゃんと実績に合った待遇を用意しよう」
「待遇ですか……?」
「そうだ。君は今日から特別に、SSSランクを名乗りなさい!」
「えぇ……!? Sランクが最上位じゃないんですか?」
「正直、神秘草をもってきたり、リヴァイアサンを持ってきたりと、君のような存在はうちでも規格外だ。だから特別に、Sランクの上のランクを作った。それほど、君は規格外なことをしたのだよ」
「そ、そうなんですか……」
さっきまでのカマセーヌの対応とは大違いだな。
さすがはギルド長だ。
それにしてもさっきまでのカマセーヌはなんだったんだ。
するとフィエルさんが俺のもとへ駆け寄ってきた。
「すみませんトウヤさん。カマセーヌさんはギルド長がいないのをいいことに、自分に都合のいい利権を固めたギルドを作ろうとしていたみたいなんですよね……。それでギルドを乗っ取ろうと……」
「そうだったのか……」
「でも、今回の件でカマセーヌさんの悪事がギルド長の知るところとなったので、ほんとうによかったです。私もどうしたものかと頭を悩ませていました……。トウヤさんには、ほんとうに感謝ですね!」
「そっか。俺も、それならよかったです」
ちなみに、今回の神秘草とリヴァイアサンなどの報酬で、ギルドの修繕費は楽々支払えた。
それだけでなく、ギルドにも多大な利益を出すことができたのだ。
リヴァイアサンの死体は研究価値も高く、素材としても一級品らしい。
俺も、報酬としてかなりの金額をもらった。
ちなみに、俺というSSSランクの冒険者を見出したとして、フィエルさんは昇給したらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます