第9話 薬草採取
思わぬ災難に見舞われたが、ようやくクエストの本分開始だ。
クエストの目標は薬草50個の採取。
だが俺はこっちの世界に来たばっかで、どれが使える薬草なのかもさっぱりだった。
『だから、スマホつかえばいいでしょ』
『ああ、そうだった』
女神からもらったなんでもスマホを取り出す。
たしかこれを使えば、地図だけじゃなくて、そこにあるアイテムなんかもハイライト表示できるんだっけか。
俺はハイライトする項目を【採取可能なアイテム】にして絞り込む。
こうすることで、採取して利用可能なアイテムだけを、地図上に赤く表示させることができるのだ。
森のマップの中に、いくつか赤いドットが表示される。
「よし、これを採っていけばいいんだな……!」
「あの、私もお手伝いします!」
モカがスマホを不思議そうにのぞき込みながら、そう話す。
「ああうん、モカはどれが薬草かとかってわかるのか?」
「もちろんです。詳しくはわからないですけど、普通の薬草くらいなら見分けがつきます」
「おお、さすがは冒険者として先輩だな。じゃあ、あっちのエリアは任せるよ」
「はい! 任せておいてください!」
俺たちは川を挟んで、森の中を手分けして採取することにした。
50個も薬草をとろうと思ったら、けっこうな手間だろうからな。
さっそく地図上にハイライトされている地点に行ってみると、そこにはたくさんの多種多様な草が生えていた。どれも地球上じゃみたことのないような、不思議な植物ばかりだ。
中にはうっすらと光っていたり、あきらかになにか効能がありそうなものもある。
たくさん草が生えている地点ということもあって、森の茂みを分け入った、かなり入り組んだところに来てしまったようだ。
これはもしかしたら、穴場スポットとかいうやつなのか!?
「うーん、薬草以外にもいろいろ採っておくか」
『そうね、そのほうがいいかもね』
おそらくこれが普通の薬草だろう、というものはわかったが、他にも使えそうな珍しい草がたくさんだ。せっかく見つけたんだから、ついでに採っていこう。
もしかしたら、これも追加の素材としてギルドが買い取ってくれるかもしれない。そうしたら、修繕費の足しにもなるし、冒険者ランクもはやめに上げてくれるかもしれないからな。
「それにしても、こんなにお宝みたいにいろんな植物アイテムが生えてるのに、誰にも採られてないなんてな……ラッキーだ」
『普通の人はもっと探さないといけないからじゃない?』
「あ、そっか」
まあ、俺以外の人間は地図から薬草の生えてる場所とかを探し当てたりはできないわけだしな……。
ある意味これもチートってわけだ。
森の中をやみくもに薬草だけを探してたんじゃ、なかなかこんなたくさんは見つけられないのだろう。
俺は地図の中でも、赤い点が密集しているところを採集ポイントに選んだからな。楽にたくさんの薬草を集められるというわけだ。
「よし! けっこう集めたぞ! これだけあれば、かなりの収入になるんじゃないか?」
腰は多少痛くなったが、身体能力向上のチートのおかげか、サクサク薬草を引っこ抜くことができた。
前に草むしりのバイトをしたときは、こうはいかなかったものだ。嫌になってその日のうちにやめてやった記憶がよみがえる。
『おいクソ女神、お前はどれがなんの草なのかとか知らないのか?』
『あたりまえよ。自分の管理してる世界の草の種類まで把握できないわよ』
『まあ、そうか……さすがにな』
『というか、そんなに気になるんなら鑑定スキルつかってみれば?』
『えー、これ全部にかよ……面倒だぞそれは……』
なにせ草は15種類くらいあって、それらをいちいち鑑定する気にはなれない。
とりあえず、試しに一個だけ鑑定してみることにするか。残りのやつはギルドにもっていけば勝手に向こうで仕分けしてくれるだろう。
「えい、鑑定……!」
俺は普通の薬草だと思われる、比較的なんの変哲もない緑の草に、鑑定スキルをつかってみた。
普通の草とはいっても、そこらの雑草とは明らかに違う感じではあるんだが。なにせ、魔力を帯びているせいかうっすらと光っている。
それで、鑑定結果がこれだ。
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◆上級薬草
HP回復 1500
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「おお……!? これ上級薬草なのか……!」
なんだかそう言われてみると、たしかに薬草というには異常なほどに光り輝いている。なんだか高級感のなる感じだ。値段を聞くととたんにいいものに見えてしまうみたいなアレだ。
だとすると、ふつうの薬草ってのはもっと地味な感じなのかな?
俺は薬草が生えまくってるエリアに来てしまったせいで、普通の薬草を見落としたのかな。もっとその辺に生えてるのかもしれない。
まあ、上級薬草のほうがギルドはよろこぶだろうけど……あくまでクエストのノルマは達成しなくちゃな。
「とりあえず、道のある方に戻るか」
俺はさっき来た道をもどって、見晴らしのいい小道に出る。
またスマホの地図を確認すると、こんどは道沿いにいくつか点々とハイライトされているのを見つけた。
「お、もしかしてこれか……?」
ハイライトされた赤点の部分に行ってみると、そこにはさっきの上級薬草によく似た、もっとしょぼいバージョンの草が生えていた。
おそらくこれが普通の薬草で間違いないだろう。
「ビンゴ!」
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◆薬草
HP回復 150
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とりあえずどれが薬草かわかったので、俺は猛スピードで森の小道を駆け回る。
こんどは走るスピードの加減がわかってきたので、急に止まれなくなったりはしない。
しばらく走り回って、40個ほどの薬草を回収できた。
「よし、いったんモカと合流するか。なにか危険な目にあってないか心配だしな」
『あら、めずらしく優しいじゃない』
『うるせ、俺は誰にでも優しいんだよ』
『うえーん、女神にも優しくしてよー』
『じゃあそのウザいキャラやめろ……』
川を軽くジャンプで飛び越えて、向こう岸のモカと合流する。
モカは俺を見つけると、笑顔で微笑んでくれた。うれしい。
「トウヤさん、薬草はみつかりましたか?」
「ああ、もちろん」
俺は先ほど手に入れた40個の薬草を見せた。
するとモカは口に手を当てて、大げさなほどに驚いた。
「ええ!? もう40個も集めたんですか!?」
「ああ、うん。おかしかったか?」
「私はまだ15個しか集めてないですよ……さすがです」
「お、じゃあこれで50個にはなったな。ありがとう」
俺はモカの頭を撫でた。
「えへへ……トウヤさんにはかないませんが、お役に立てたならうれしいです」
「ああ、モカのおかげだよ。ところで……」
俺はアイテムボックスから、さっき手に入れた上級薬草も取り出してみせた。
するとモカは、またまたさっきよりさらに大げさに、今度は大声を出して驚いた。
「えええええ!?!!? これって、上級薬草じゃないですか!」
「ああ、まあな。たまたま薬草だと思って拾ったら、上級薬草だったんだ」
「す、すごいですよ!? 上級薬草がこんなにも……」
「そんなにいいものなのか?」
「上級薬草は天然で生えてるのは珍しくて、そこそこな値段で取引されています。天然の上級薬草じゃないと作れないポーションとかもあるみたいで……」
「ほへー……」
ってことは、上級薬草以外の草もすごいやつだったりするのかな……?
まあこれ以上モカを驚かせてもアレだし、残りはギルドに帰ってからだな!
俺はモカを連れて、転移スキルを使った。
一度行ったことのある場所だから、冒険者ギルドには転移スキルですぐに戻ることができる。
今から受付嬢のフィエルさんの驚く顔が楽しみだ!
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