第5話 冒険者ギルド

「あの……助けていただいて、ありがとうございます」


 綺麗な女の子だった。

 さすが異世界、レベルが高い……。

 まるでアニメの中からそのまま出てきたような、美しいピンク髪の美少女。

 スタイルもモデルのような頭身に、グラビアアイドルのようなスリーサイズ、そして女優のように整った顔。

 当然、俺としては格好よくスマートな返事をしたかったのだが――。


「い、いや……だ、大丈夫……か……? 大丈夫なら……その……よかった……です」


 くっそ挙動不審な感じで応えてしまった。

 それを見ていた女神からまた茶々が入る。


『あらぁ……陰キャ丸出しね……せっかく綺麗な子に話しかけられたのに』

『うるせえこっちは30年童貞引きニートやってたんだよ! 仕方ないだろ!』

『私とは普通に話せてたのに?』

『クソ女神だからな。胸はデカいが異性としての緊張はない』

『クソ女神いうな!』


 だが、目の前の女の子は、そんな俺の不審な挙動を見ても、まったく気にしない様子で。

 笑顔を向けて、握手を求めてくれる。


「あの、私モカっていいます。D級冒険者で……」

「お、俺はトウヤ。よ、よろしく」


 やばい、すごくいい子だ。

 どうしよう、いきなり好きになりそうだ。


「トウヤさん、お強いのに新米冒険者なんですか?」

「ああ、そうだな……。田舎から出てきたばっかりで、正直右も左もわからないんだ」


 ここは無難に嘘をつく。さすがに異世界から来ましたとは言えんしな。


「そうなんですね! だったら、お礼に私が案内しますね!」

「お、おお……ありがとう。助かる」


 めちゃくちゃいい子じゃねえか……。見た目だけじゃなくて中身まで素敵な子だ。

 モカは俺の手を引いて、ギルドカウンターまで連れて行ってくれる。

 受付嬢さんにモカが事情を説明してくれて、とりあえず壁を壊したこともお咎めなし。


 スムーズに冒険者登録までさせてもらえることになった。マジでありがたい。

 てか受付嬢さんもめちゃくちゃ美人だ。

 美しい茶髪に黄色のギルドの制服がよく似合っている。豊満な胸のせいでベストのボタンがとれかかっているくらいだ。

 こっちの女の子はマジでレベル高いな……異世界万歳。


「では、お名前を書いていただけますか?」

「あ、はい」


 受付嬢さんに言われて、俺はシートに名前を記入する。

 女神にもらった言語理解スキルのおかげで、異世界の文字も難なく読み書きできる。


「トウヤ・カヤバさんですね。家名があるということは、貴族の方だったんですね! これは失礼いたしました」

「あ、いや……そんな大したものでは」


 そっか、モカもモカとしか名乗らなかったな。

 さっきのヘクセとかいうチンピラも、門番のラークもそうだ。

 受付嬢さんのネームプレートにも、フィエルとしか書かれていない。

 こっちでは家名を名乗ると貴族扱いされるのか。

 スッと、受付のフィエルさんは襟を正して居直った。


「では次に、トウヤさんの能力値を測定いたします。こちらの水晶にお手を」

「あ、はい」


 フィエルさんが机の下から水晶玉を出して机の上に置く。

 俺は言われるがまま、その水晶に手をかざした。


「魔力を込めてみてください。少しだけでいいので」

「わかりました」


 できうる限りの加減をして、水晶玉に魔力を流し込む。

 すると――。

 水晶の上に俺のステータスらしきものが一瞬で浮かび上がる。

 それを見たフィエルさんが驚きの声を上げ――。


「レベル9999……!?!?!?!?」


 ――しかしその直後。

 水晶玉が俺の魔力に耐えきれなかったらしく。

 ブルブルと震え、しまいには――。


 ――ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 ――キュィイイイイイン!!!!

 ――ドシャアアン!!!!


 いきなり水晶玉から魔力の光線が飛び出たかと思うと、それは上へと向かって発射されて。

 なんとギルドの天井に大きな大きな穴をあけて、空中へと飛び出していってしまった。

 あとには放心状態のフィエルさんと、冷や汗を流して固まるだけの俺が残される。


「あーーーー、……俺、またなんかやっちゃいました……?」


『はぁ……バカ……』

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