第3話 邂逅

 俺はダンジョンの出口を探してさまよい歩いていた。

 さっき倒したモンスターたちから、スキルを奪取していたようで、今や俺のステータスはとんでもないことになっている。



==================

◆茅場刀祢のスキル一覧


巨大化(スライムキングから取得)

嗅覚Lv99(フェンリルから取得)

火炎放射Lv99(バハムートから取得)

自動回復(べへモスから取得)

蘇生術・暗闇(リッチキングから取得)

百の手(ヘカトンケイルから取得)

自動再生(ヒュドラから取得)

突進Lv99(マンティコアから取得)

咆哮Lv99(オークキングから取得)

粘液Lv99(メガ・ワームから取得)

硬化(オリハルコンゴーレムから取得)

==================



「おお……なんかすげえな……」


 そういえば、最初に女神にもらったスキルの中に、暴食スキル奪取とかいうのがあったな。

 これはそれのおかげで、スキルを倒した敵から奪取したということか。

 これがあれば、俺は敵を倒せば倒すほど、スキルを得て強くなれるってわけか? 最強だな。


「これなら、楽勝にこのダンジョンを抜けられるな!」


 そう安心したのもつかの間――。

 しばらくダンジョンを進んでいくと、なにやら巨大な扉にぶちあたった。


「これって、ボス部屋とかってやつなのかな……?」

『さあね、私は知らないけど……』

「ずいぶん適当な返しだな……」


 もしかしてこの女神、テレビでも見てさぼってるんじゃないのか?


『ギク……』

「いまギクって言ったか……?」

『い、イってない……! まだイってないから!』

「マジでナニしてたんだよオイ……!??!?!」


 気を取り直して。

 巨大な扉は、今にも向こう側から開いてきそうなほど、まがまがしい威圧感に包まれている。

 中から邪悪なオーラが漏れ出してきていそうだ。

 向こうには相当、凶悪なモンスターがいるに違いなかった。

 今の俺なら勝てる……とは思うが……なかなか入るのに勇気がいるな……。


「ええい、ままよ!」


 俺は意を決して、中に入る。

 すると、そこには鎖につながれた美女がいた。


「は…………?」


 ぼいんだった。とっても。

 あの駄女神よりもよっぽど揉み心地のよさそうなおっぱいだ。


『黙れ』


 鎖につながれた女は、ひどく疲れているようで、下を向いてうなだれていた。

 しかし俺に気づくと、ゆっくりと顔を上げ。


「どなたですか……?」

「いや、それはこっちのセリフだがな……」


 すると美女は自分の状況を説明し始めた。


「私は魔王ベルブルム……」

「はぁ……!? 魔王……!?」


 なんだかラスダンぽい強さのダンジョンだと思っていたが……まさか本当にラスダンだったのか!?


「じゃあなんで鎖なんかにつながれているんだ?」

「いえ……違います。私は魔王ベルムルムではありません……」


 震えた声で、美女はそう言った。


「は……?」


 これまたわけのわからない。

 結局どっちなんだ。

 いや、最後まで話をきかない俺が悪いのか?

 とにかく、話をきいてみよう。


「もう一度言います。私は……魔王ベルムルム……を倒しにきた……勇者なのです……」

「勇者……!? そっちか……」

「はい……。ですが、魔王に敗れ……こうして封印されてしまいました……」

「えぇ……」


 それは気の毒な話だ。


「じゃあ、魔王は?」

「魔王は、私に成り代わり、地上で勇者として生きています」

「そんな……それってかなりヤバいんじゃないのか……?」

「ええ……誰かがとめなければ……ですが、ちょうどいい……」

「まさか……」


 まさかこの人、俺に魔王討伐を依頼するんじゃないだろうな。

 せっかくのんびりした異世界生活が待っていると思ったのに、クソ女神のせいでとんだスタートダッシュだよ……。


『おいきこえてんぞ!』


「私に代わって……魔王を倒してほしいのです……!」

「マジかぁ……」


 まあこんな弱ってる美人さんに頼まれたら、俺も無視はできない。


「でも、あんたが自分でやればいいんじゃないのか? 勇者なんだろう? その鎖、外せるのなら俺が助けるけど……?」

「それが……無理なのです。この封印はかなり強力なものです。私はもう長くはありません……」

「そんな……」


 目の前でこんな美人さんが吊るされているのに、俺は助けることができないなんて……。


『なあ、なんとかならないのか?』


 俺は脳内で、女神に話しかける。


『無理ね……あれはもう……残念だけど……』

『そっか……』

『死んでからこっちで転生させたりはできるけどね。今の状況で、あなたにできることはなにひとつないわ』

『くそ……』


 そう思っていると、勇者のお姉さんからある提案があった。


「代わりといってはなんですが、私のすべてを、あなたにおゆずりします」

「え……? ちょ……そんないきなり……」

「いえ、あなたの想像とは違います。私のステータスをあなたにあげるということです」

「そんなことが……?」

「可能です。最期に、私が死ぬ前に、あなたに出会えてよかった……。この力を受け取ってください……。そして、どうか魔王ベルムルムを倒してください……」


 勇者がそう言うと、彼女はまばゆい光に包まれた。


「うわ……!」


 そして、まるで俺の中に吸い込まれるようにして消えていった。


「なんだったんだ……」



================

茅場刀祢Lv9999


攻撃 99999→199998

防御 99999→199998

魔法 99999→199998

俊敏 99999→199998

================



 レベル9999になってカンストしていたはずの俺のステータスだったが……。

 勇者さんのステータスが吸収され、なんと199998になっていた……。

 恐ろしい……。

 力を全部託すって、こういうことだったのか……!?


「しっかし……大変なこと頼まれちゃったなぁ……」

『いいじゃないの、力だけもらっておいて、後は無視すれば』

「お前最低だな……!?」


 まったく、この女神はどこまでゴミなんだ……。

 あきれながら、俺は再びダンジョンの出口を目指すのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る