第2話 モンスターハウス

『ごっめーん、最初の出現位置はランダムなの☆ ゆるちて♡』

『誰が許すかあああああああああ!!!!』


 なんと俺が転生したのは、ラストダンジョン並みの危険地帯。

 しかも、よく見るとダンジョンのフロア中にモンスターだらけのモンスターハウスじゃねえか!

 ど、どうすりゃいいんだ……!?

 幸いモンスターたちはまだ俺に気づいていないのか、襲ってはこないようだが……それも時間の問題だ。

 なるべく音を立てないようにする。あ、ちなみにさっきのツッコミも脳内でのものだから大丈夫だ。


 すると困惑する俺に、また脳内で女神アリステラが話かけてくる。


『落ち着いてトウヤ』

『いや落ち着けるか! お前のせいだろ!』

『それにしても運がいいわ。まだモンスターたちに気づかれてないわよ? よほど影が薄いのかしら……』

『うるせえよ! こっちは筋金入りの陰キャなんだよ! いやむしろこんな危険地帯に送られてる時点で運悪いだろ!? ……ってかそんなことより、この状況……どうすりゃいい!?』

『いいから、まずは状況確認よ。鑑定スキルを使ってみて!』

『……! そうか! 鑑定スキル!』


 忘れてた。そういえば、俺はこのポンコツ女神から様々なチートスキルをもらってたんだった。

 なにも俺はそこらの普通の冒険者ってわけじゃない。チート転生者なんだ!


『よし……! 《鑑定》発動――!!!!』


 ダンジョン内を闊歩するモンスターたちに、俺は鑑定スキルを使用する。



================

フェンリル Lv7983

バハムート Lv8961

べへモス Lv1729

リッチキング Lv3459

ヘカトンケイル Lv1872

ヒュドラ Lv3266

マンティコア Lv7890

オークキング Lv5495

メガ・ワーム Lv6641

オリハルコンゴーレム Lv9860

================



『な、なんか絶望的な名前と数字しか見えないんだが……』


 鑑定スキルを使ってモンスターの名前やレベルがわかったのはいいんだが。

 余計にピンチ感が増しただけな気がしないでもない。

 これマジで神獣級モンスターばっかのラスダン仕様じゃねえか!

 それを天界から見ていたのか、アリステラは。


『あちゃーこりゃだめだ……』

『おい! あちゃー、じゃねえよ!こっちもきこえてんだよ!!!!』

『うそうそ! 大丈夫よ、今のトウヤなら……!』

『ほ、ほんとかよ……』


 どうもこの女神の言うことは信用ができない。

 だが、俺にチート能力があるのも事実だ。


『とにかく弱そうなのを一体倒すのよ! そうすれば、あなたの《会得経験値500倍》スキルのおかげで一気にレベルアップよ!』

『倒すったってどうやって!?』

『もちろん魔法よ! そのためにチート能力を授けたんだから!』

『そうか……! 《魔法威力感度3000倍》だったっけか!』

『元のステータスも上げてあるから、一体くらいなら不意打ちで倒せるはずだわ!』

『よし……!』


 まずは女神から教わった通りに、魔法を使ってみることにする。

 だが一度魔法を使ってしまったらもう後戻りはできない。

 気づかれたら一気に囲まれて、それこそ絶対絶命だろう。

 なんとしても一撃で、何体か倒してレベルアップしておかないと、勝ち目はない。


『悪いがレベルの一番低そうなお前から殺らせてもらうぜ……!』


 俺は近くにいたモンスターの中で一番弱そうなやつに目をつける。

 そのモンスターというのは【スライムキング Lv998】だ。

 とにかくそいつに向かって、攻撃をしかける。


「うおおおおお! ファイア――!!!!」


 ――ゴオオオオ!!!!


「ぴぎぃ……!?」


 俺の手から放たれた炎が、目の前のスライムキングを瞬殺した。

 まじか……チート能力とはいっても、ここまで強いのか……俺!

 しかも今ので一気にレベルアップしたみたいだ。

 脳内にゲームみたいなポップアップが出る。


【茅場刀祢 Lv1 → Lv523】


 なんだかさっそく希望が湧いてきた。

 すると女神が。


『まじか……チート能力与えたとは言っても、ただのファイアでこの威力か……』

『いやまてお前が与えた能力だろ!? 今のトウヤなら大丈夫よ、とか言ってたのなんだったの!?』


 どこまで適当なんだこの女神……。

 だがそんなことを言っている場合ではなかった。

 今の攻撃で、さすがに周りのモンスターたちにも気づかれてしまった。

 てか今まで気づかれなかったのマジで俺影薄いな……!?


「グオオオオオオオオオオオオ!!!!」

「ブモオオオオオオオオオオオ!!!!」

「キェェェェェエエエエエエエ!!!!」


 ラスダン級の高レベルモンスターたちに、一気に囲まれてしまう。

 いやもともと囲まれてはいたんだが、一斉に注目が俺に集まっている。

 動いたら……殺される……。


「こうなりゃ自棄やけだ……! うおおおおお!」


 とにかく俺は片っ端から倒していくことにした。

 身体能力がチート能力で向上しているおかげか、攻撃をよけることには苦労しない。

 あとは逃げ回って、魔法を撃ちまくる!

 幸い、さっきレベルアップしたことで、俺の魔法の威力はさらに途方もないくらいになっていた。

 戦闘中にもレベルアップしていくので、倒せば倒すほどに強くなる!


「ファイア――! アイス――! サンダ――! その他もろもろ、全部喰らええええええええええ!!!!」


 ――ズドーン!

 ――ズドーン!

 ――ズドーン!



【茅場刀祢 Lv523 → Lv9999】



「おいおいマジかよ……俺……強すぎ……?」


 なんとものの数分で、フロアにいた大量のモンスターたちを蹴散らしてしまった。

 しかも倒したのがどれも高レベルのモンスターばっかだったので、あっという間にレベル9999だ。

 おそらくレベルはこれがカンストなのかな……?

 魔法の威力も、初級魔法だけで十分なくらいインフレしてしまった。

 モンスターたちがいなくなったダンジョン内で一人立ち尽くす俺。

 ふと、再び女神アリステラの声がきこえる。


『うっそでしょ……まさかこれほどなんて……』

「お前今うっそとか言ったか……!?」

『言ってない言ってないw』

「自分でチート授けておいてその強さ把握してないとか……大丈夫なのか?」

『いや……うーん、ここまで強くするつもりなかったのよ、ほんと。これはトウヤのもともとの魔法の才能がすさまじいってことね!』

「いや褒めてる風だけど、それって俺に才能がなかった場合この場で死んでたんだが……!?」


 まったく、二度もこいつのせいで死ぬとか勘弁願いたい。

 幸い、こうして生きてるからいいものの……。


「ていうかマジでこのダンジョンなんなんだ? RPGだったらラスダンか隠しダンジョンってとこだぞ?」

『そこは本当にランダムだから、私もよくわかんないのよねー。ま、トウヤの運が悪かったということで!』

「やっぱ運悪いんじゃねえか! てかそんなの最初に説明しやがれ!」


 とにかくいつまでもここでこうしていても、埒が明かない。

 せっかく異世界に来たのだから、もっといろいろと旅をしたい。

 異世界の美少女たちにも会いたいしな。


「よし、まずはこのダンジョンを抜けるか!」

『そうね、それじゃ頑張ってね! 私はポテチでも食いながら見てるから』

「うぜぇ……」


 この脳内の女神消せないかな……。いっそ天界ごと消えてくれ。


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