第5話:JCリフレ。義務教育の味ですよ、兄さん

「添い寝……?」


 耳馴染みのないワードに、つい聞き返してしまう。


「添い寝リフレって聞いたことありません?」


「聞いたことはあるけど……」


 裏通りなどで、よく看板を見かける。


 時間と値段が書かれていて、普通の男子学生には風俗との違いがよく分からない。


 妹はまだ中学生なのに、やたらわかりやすくレクチャーしてくれた。


 リフレとは主に、女性が男性を癒すサービスを提供するお店を総称して指すらしい。


「兄さんは未成年ですし、興味があってもそういうお店は行けないでしょう? なので、私が癒します。最近、試験勉強でお疲れのようでしたので」


 疲れたら整骨院とかマッサージに行くのが普通だと思うけれど……。


 妹に常識は通用しないのだ。


「どうせ兄さんのことですし、寝る直前まで勉強されてて、頭が興奮してしまって寝つけないのでしょう? なので、JCリフレで癒されてください。兄さんは特別、お触りOKですよ。義務教育を味わってください」


「なにそれ、余計眠れなくなりそう……」


 あと、響きが危ない。


 たしかに、妹の言う通り、寝つき悪かったのは本当だけど……。


「言ったではありませんか。兄さんの初めては、すべて私がもらいますって。ところで……まさかとは思いますが、兄さん、女の子に添い寝してもらった経験はありませんよね」


 真顔で詰め寄ってくる。


 そこは譲れないらしい。


「ないけど……」


「よかった、綺麗な兄さんで安心しました。あやうく、かっちゅう縛りにして泉に突き落とすところでしたよ」


「兄さんはオノじゃないからね」


 ◇◇


 乗せられて、余計に頭が興奮してきた。


 もはや、寝るどころじゃなくなってしまった。


 一応、目をつぶっているだけでも、寝ないよりはマシだろう。


「とにかく。そろそろ寝ないと、明日も学校だし。どうせ出て行ってって言っても聞かないんだろう?」


「もちろん」


「そうだと思った……」


 妹は一度言い出すと、意外と頑固だ。


 早く寝たいし、この際、添い寝への抵抗は諦めた。


 それに、本当に寝るだけなら、大して問題ではないだろう。


 ともかく、妹には先に眠ってもらいたい。


 そうでないと、安心して眠れない。


 目をつぶっていると、腕を揺すられた。

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