第4話:兄妹ですし、間違いは起きませんよね?

 ――年頃の男女が添い寝しても、決して間違いは起こらない。


 だって俺たちは、兄妹なんだから――



 来週から、期末試験が行われる。


 今は、その追い込み期間だった。


 今日は寝る前の残り一時間のつもりが、だんだん乗ってきてしまって、キリの良い所までを続けた結果、ついには日をまたいでしまった。


 明日も学校だし、さすがに寝ないとマズい。


『寝ないと』と思うほど、眠れない。


 暗い部屋のなか、もう何度、寝返りを打ったかわからない。


 寝たいのに、寝れないほどつらいことはない。


 いっそのこと、寝ることを諦めようか。


 そう思い、部屋のリモコンを手に取ると、一筋の光が差し込んだ。



「こんばんは~」


 ノックもなしに、妹が入ってきた。


 逆光で姿こそ見えなかったが、声音からなにかのイタズラなのだとは思う。


 普段使いのスリッパは脱いで、裸足なのだろう。


 ペタ、ペタ……と、息を殺したような近付いてくる。


 少なくとも、俺が部屋にいる間、無断で妹が入ってくるなんてことは、ここ数年はなかった。


 この場合、そもそも、起きていることを伝えたほうがいいのか。


 伝えなかった場合、いったい何をされてしまうのだろう。


 怖さと興味がせめぎ合うなか、薄目で観察してみることにした。



 妹はベッド横で立ち止まると、


「おじゃましま~す」


 布団に入ってきた。


 ベッドがきしみ、風呂上がりの香りがする。


 そのまま、すり寄って密着した。


「兄さん、起きていますよね」


「……うん」


 尻目に視線を感じる。


 呼吸すら感じられる距離だ。


 暗闇とはいえ、こうも凝視されたら、狸寝入りがバレるのは時間の問題だった。


「どうしてわかったんだ……」


「兄さんの妹ですから」


 兄妹なら、何でも分かるなんてことはないだろう。


 実際、兄は妹の考えを読めないのだから。


 ◇◇


 妹と同じ布団に入るのは、いつぶりだろう。


 少なくとも、小学校高学年からはない。


 目と鼻の距離。


 こう近いと、どこを見ればいいのかわからなくなり、仰向けのままいると、ジーっと横からの圧を感じた。



 もぞもぞ動くと、シャンプーの香りがする。


 さすがに興奮はしないけれど、寝室で自分以外の匂いがするのは、なんだか落ち着かない。


 妹は朝までいるつもりだろうか。


 テスト期間だというのに、勘弁してほしい。


「何しに来たの。用ないなら自分の部屋で寝てよ……」


「寂しいこと言わないでください。それに、理由ならちゃんとあります。今日は添い寝しに来たんです」

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