第21話 賛辞
「戦闘データが取れたのは望外の展開だね。役立たずのガラクタだと思ってくれてやったけど、そうかお前なら使いこなせるか」
いつものようにセルが報告書をまとめて、それを一緒に執務室に提出に向かうと、その内容に目を通した総督から、そんな賛辞のような言葉をかけられた。
「メタノイドを押さえ付けて目を撃ち抜けるなんて、生身のファルじゃ無理でしょうね。ネクロマンサー計画の成果といって良いかと」
セルが得意気な顔で言うと、それに叔母は「そうだね」と相槌を打つ。無礼な言い方ではあるが、ファルも同意せざるを得ない。連邦の同年代女子の平均を下回る彼女では、対メタノイドの近接戦闘術を実践するにも限界がある。理論も型も習得しているし、対人戦でならよほどの体格差がなければ相応に戦えるが、メタノイド相手になるとどうしても馬力で負けるし、それどころか相手が軍人になると人間相手でも苦戦は必至だ。
その点、カイトの体格は理想的だ。連邦男子の平均を上回る一七六センチの身長に、軍人顔負けの引き締まった肉体。運動不足でないことは、実際に動かしてみた時のキレで明らかだった。
あれならメタノイドにも負けることはない。ファルは自信を持って断言できる。
「参謀総局の偉いさんも喜ぶだろうね。お前の手柄だよ、ファル」
総督として、初めてまともに褒めてくれた。そう思うと、ファルは嬉しさに頬を紅潮させた。
「ありがとうございます、総督!」
「これで本命のベヒモス破壊ができれば、私もお前の期待に応えやすいからね」
待ち望んだ展開に、ファルは胸を高鳴らせた。
「必ず期待に応えます!」
「うん。じゃ、二人とも下がって良いよ。街に行くんでしょ? 九時の便に遅れないようにね」
「はい!」
セルと一緒に敬礼をして、ファルは執務室を後にした。
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