僕たちの先生はダンシングクィーン!
真奈・りさ
第1話 予期していなかった質問
小説 「僕たちの先生はダンシングクィーン!」
アメリカで見つけたセカンドライフ
真奈・りさ
「唐突ですが、最近ミシガンでは家族連れの日本人駐在員の数が急上昇したため、日本人補習校の教師が不足して大変困っているのですよ。沙織・トンプソンさんは日本の教職免許をお持ちですか?」
よっぽど困っていたのだろう。日本人補習校の校長は沙織が何か言う前に向こうの方から先に立ち入った質問を投げつけてきた。
沙織は、若い頃教員になることを考慮した時期もあったため、日本で短大に通っていた頃教職免許を一応取ってはいたが、そもそも、その日補習校を訪れたのは、夫のクリスと小学校に上がる前の年齢だった娘のジュリーの家族三人で大阪に一年住んだ後アメリカに戻ったばかりで、日本語、それも大阪弁がペラペラになっていたジュリーを補習校に入れることをお願いすることだけが目的だった。
だから、頭の中はそのことで一杯で、自分がそこで教師になることなど夢にも思っていなかったのだ。日本やアメリカで大人を相手に英語を教えることには慣れていた沙織だったが、相手が小学生となると話はまた別だ。
そんなわけで、
「はい、免許は持ってはいますが、ここで教師をする気があるかどうかに関しては・・・ちょっと・・・。少しお時間をくださいませんか?」
と回答したその瞬間、テーブルの下で隣に座っていたクリスが沙織の足を軽く蹴るのを感じた。なぜ足を蹴られるのか、鈍感な彼女はすぐには理解できず、夫の方に目をやった。彼は信じられないというように目の玉を大きくして沙織を直視していた。
帰り道、彼らの車は左右に激しく揺れていた。まるでクリスの苛立ちがエネルギーとなって車を揺らしていたようだった。
クリスは言った。
「先週日本から戻ったばかりで職なしの我々は、今すぐにでも仕事が必要なんだよ。なんと、そんなとき、あの校長は君に仕事をあの場で提供してくれていたんだよ!つまり、仕事のチャンスが『どうぞ』と、手を差し伸べて向こうからやって来ていたんだよ。しかも、仕事をするのは土曜一日だけなら、週の残りは別にフルタイムの仕事も取れるという理想極まる話ではないか!それを君は悠々と、『時間を下さい』などと言って、僕は信じられなかったよ。君はジュリーを日本人補習校に入れることだけを考えているようだけれど、二人とも仕事が見つからなかったら、そこの授業料だって、どうやって払うというのだよ?」
この時夫が指摘したことは意を得ていたため、沙織は家に着くや否や、すぐさま補習校校長に電話を入れていた。
「先ほどのお話、受けさせていただくことにしました!」
To be continued...
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